0-0 Sランク冒険者、勇者パーティーから追放される
物語が始まる前日譚を書きました。
どのような経緯でリンネが追放されたのか、お楽しみください。
それは、突然起きた出来事だった。
「――リンネ。悪いが、お前にはパーティーを抜けてもらう」
パーティーのリーダーである勇者――アランに到底信じられないことを言われたのだ。
私は、何を言われたのか理解できずに、ただ彼の顔を呆然と見つめることしかできなかった。
「聞こえなかったのか? 何度も言わせるな、役立たず」
やめて! そんなことを言わないで!
……そんな、冷め切った目で、私を見ないでよ。
「さっさと消えてくれるー? あんたは、私たち――勇者パーティーには必要ないの」
パーティーのメンバーであるイザベラが、容赦なく、言葉のナイフを突き立ててくる。
彼女とは同じ魔法使いということもあって、前々から、嫌われていた。
それに、彼女はアランのことが好き。
同じパーティーに女がいるのが気に入らないのだろう。
「……でも、私だって頑張ってきたわ! 確かに私には攻撃手段がない。だから、それを帳消しできるように『補助魔法』で支えてきた。それでも、あなたたちは私が必要ないって言うの……?」
「リンネ、お前は馬鹿じゃない。だから、わかっているはずだ。俺たちは魔王を倒さなければならない。攻撃魔法が使えないお前じゃ、この先邪魔にしかならない」
「それにー、『補助魔法』って言ってもー? 私の方がリンネより強化倍率高いんだよ? それ、知ってる?」
二人の言ってることは正しいのだろう。
このまま勇者パーティーに居座ったとしても、使いものにならない。
そう理解できていても……、私は諦めることはできなかった。
彼なら、説得してくれるはずだと、もう一人のパーティーメンバーに視線を向けた。
「悪いな、リンネの味方はできない。何としてでも、俺は魔王を倒したい。だから、抜けてくれ」
ああ……そうか。ここに居場所はないのか。
彼らのことを、私は仲間だと思っていたのに。
それは、私だけだったみたい。
……本当に、馬鹿みたいだわ、私。
「カイルもそう言ってるんだから、さっさと消えてくれるー? 目障りなんですけどー」
もう、反論する気力もない。
彼らの望むように、私は背を向けた。
「装備も金も、全て置いていけ。俺たちの物だ」
パーティーで手に入れたものは、パーティーの共通財産とする。確か、そんなルールがあった気がする。
パーティーを組むにあたって、不必要ないざこざを起こさないために必要なことだけど、それがここまで残酷なことだとは思わなかった。
改めて思い知らされる。
私はもう、パーティーメンバーではないのだと。
私は大人しく、身につけている装備を全て外した。
イザベラがクスクス笑っている。
私の格好がおかしくて、堪らないのだろう。
本当、嫌味な人。
「そんな痴女みたいな格好、アランの前でやめてくれる? あたしは優しいから、こうなると思って、ちゃんと服を用意しておいてあげたわよ」
そう言って、麻の服を投げ渡してきた。
どれだけ私を馬鹿にすれば気が済むのか。
だけど、今は素直に受け取った。
下着姿のままじゃ、どこにもいけないから。
「感謝はないのかしらー? ま、いいけど。生意気なあんたには弱体魔法をかけてあげるわ」
「え、それは――」
「じゃあねー、『白の大賢者』」
無詠唱で紡がれた弱体魔法。
私に対抗する手段はない。
ただ、私は受け入れることしかできなかった。
そして、それは、私――『白の大賢者』の死を意味していた。
その後、どう彼らと別れたか、覚えていない。
次、意識がはっきりしたのは、とても優しい少年の前だった。
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