転生者発見!
短めです。
「今日はこのくらいにしましょうか」
お昼時。お腹も空いてきた頃に、母様の声が届く。今日は、ひたすら体力づくりだった。
「はい、ありがとうございました!」
「クルクスはペンダントにでもして、持ち歩くといいわ」
そんな事できるんだ。お、十字架のペンダントになった。
汗をかき、土のついた体と服を魔法で清め、広間に向かう。
「姉様、お疲れ様です!
あら…………随分と動きやすそうな格好ですね」
そういえば、アデラはこの格好初見だったか。
「ええ、運動してきたから
…………アデラ、来年、頑張ってね!」
私は数分前までの地獄を思い出し、アデラに精一杯の笑顔を作る。
「姉様、腹黒属性持ってたりします……?」
あ、震えちゃった。
後、小声で言ったからバレないと思ってるかもしれないけど、神様補正で五感もバッチリだよ?
—————アデラ、転生者だったりする?普通の四歳児が「腹黒」とか「属性」とか知らないよね?後で聞いてみよう。
「アデラ、ご飯を食べ終わったら、私の部屋で久しぶりにお話ししない?」
「はい、もちろんです!」
お、今回の笑顔は上手くいったらしい。
「さあ、今日も神々に感謝を………」
母様がいつも通り言い出したので、私たちは慌てて席に着き、祈りを捧げた。
*
「失礼します」
昼食後、約束通りアデラを部屋に連れてきた。
対談用に向かい合う様に置かれた一人掛けのソファにそれぞれ座り、何気ない世間話をする事数分。アデラが笑って口を開いた。
「それで、姉様
そろそろ本題をお話しいただいても?」
あ、はい。普通の幼女じゃない事は確定しました。
{アデラ、『転生』って知ってる?}
「………?
転生?それ、なんですか?」
ビンゴ、来た〜〜〜っ!!
あ、なんで分かったかって?
私、今、日本語で話したんですよ。それを聞き取れた、というか、理解出来たって事は、日本人で間違いないでしょ。
私がにまにましていたら、アデラも自分の失敗に気がついたのか、顔を青くした。
「姉様、こんなに性格悪いとは思ってませんでしたよ………」
「アデラ、私が善人なわけないじゃない」
とびっきりのエンジェルスマイルで答える。
「行動と言葉が矛盾してますよ
———はぁ、吐きますよ!全部白状します!」
そうそう、諦めは肝心ですよ〜。
「姉様の言う通り、私は転生者です
前世は日本のしがない女子高生でした
———死因は交通事故。バイクに乗ってて、車に跳ねられましたから、トラック転生じゃありませんよ?」
あ、私のテンプレセンサーが外れた。っていうか、何故に分かった、妹よ。
「姉様はわかりやすいんです
———で、私が転生者である事を隠そうとした理由ですが……姉様に疑われたくなかったんです」
「?疑う?」
アデラの言葉に首を傾げる。何を疑うんだ?
「——もしかして姉様、知らないんですか?」
え、何?
「………その様子だと知らなさそうですね
この世界は、私の知る、ゲームの世界に酷似しています」
「ゲーム!?」
予想外のテンプレ来た〜〜〜!
「はい
そのゲームは——題名は省きますね?——所謂、乙女ゲームです
その舞台が此処、天界で、ヒロイン役が私。そして、姉様は———」
アデラは此処で、苦しそうに顔を歪める。
「いいよ、言って」
「——はい
姉様は、ヒロインを虐める役——つまり、悪役令嬢です」
「なるほど」
「ですよね……。って、えええええ!!??」
「ど、どうしたの!?」
「いや、だって悪役ですよ!?
如何して動揺しないんですか!?」
「ああ、だって私、アデラを虐める気もないし、アデラだって私に冤罪を着せるつもりはないでしょう?」
そう。別に虐めなければいい話だし、ヒロインと協力体制を取れるなら、私が心配するべき事は何もない。
「う。まあ、そうですけど………」
「ねえ、そのゲームについて教えてくれない!?
アデラの推しも知りたいし、問題がある人がいても、知ってたら近づかないで済むし!」
「え、あ、はい」
私の勢いに、アデラはタジタジだ。
「そうと決まれば、今日は女子会だね!」
「え、如何してそうなりました!!??」
結局、私に押し切られて、プチ女子会(参加者二名)は開催される事になった。