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シナリオは崩壊しました。自由に生きてもいいですよね?  作者: 雪結び
日常です〔五歳〜〕
6/68

訓練、始めます!

「ステラ、今日からは体術を学びます」


朝、目が覚めて、母様から放たれた一言だった。おはよう、より先なの?


「体術ですか?」


まあ、とにかくその話に乗る。


「ええ

天使というだけでも希少なのに、さらにエルフの血も混じっているとなると、何処ぞのお馬鹿さん達に目をつけられるかもしれないからね」


ああ、なるほど。人(?)拐い対策か。


「分かりました

何方が先生なのですか?」


「私よ」


「……………はい?」


「私よ」


カアサマ ガ タイジュツ ノ センセイ?


「え、あ、なるほど」


動揺したけど、少し考えて納得した。


 だって母様、武力国家の王だもんね。


「よろしくお願いします!」


挨拶は基本。元気よく伝える。


「うふふ、いい返事ね

じゃあ、朝食を終えたら着替えて競技場にいらっしゃい

 リラに話は通してあるから」


母様はにっこりと笑って言う。

 競技場?と思うかもしれないけど、家にあるんです。王位入れ替えの時とかに使われるんだって。ちなみに、王に勝てなかったら、例え実娘であろうと王にはなれない。王が死んでしまった場合は、歳など関係なく、全国民で決闘する。


「じゃあ、まずは朝食にしましょう?

皆きっと待ってるわ」


「はい」


広間に行くと、父様とアデラはもう座っていた。


「おはよう」


「おはようございます

…………もう、姉様!遅いですよ!」


アデラはそう言うけれど、心から怒っているわけではないだろう。


「ごめんね

…………おはよう、アデラ

父様も、おはようございます」


「おはよう」


皆で挨拶して、私と母様は席につく。


「エド、今日からステラに体術を教えるわ」


「ああ、もうそんな時期か

…………頑張れよ、ステラ」


あれ?今の父様の目が本気だった様に見えたのは私だけでしょうか?


「母様、私は?」


アデラが母様に聞く。


「アデラはまず、上手に飛べる様にならないとね

 来年、五歳になったら教えるわ」


あ、言い忘れていたけど、飛ぶ練習は、普通五歳から三年ほどかけてする。家が異常なんです。

 私の時は二歳から練習して、一年で制御までできる様になった。神様の基礎能力上げ効果かな。

 アデラは、母様が私の時の失敗を学んで、三歳から始めた。それでも早いよ。



 いつも通りお祈りして、朝食を食べた後、私は自室へ向かう。

 母様の言っていた通り、リラが服を準備してく

れていた。

 白いブラウスに黒のベスト。それから茶色のショートパンツ。靴は革で出来たブーツと、この世界に来てから初めての身軽な服装だ。

 でも——————。


「どうしてベストが防弾着なの!?」


そう。ベストは前世での所謂防弾着で、しかも肘にはプロテクターまで付けるらしい。どんな体術を習うと言うのですか。


「姫様、競技場へ行きますよ」


私が着替え終わると、リラが先導して競技場へ向かう。

 競技場は存在さえ知っている物の、実際に行くのは初めてだ。

 —————あれ?そういえば私、この城から出たの、神界が初めて?他の天使との交流もないし大体の物はここにある。


「リラ、私、ここから出た覚えがないのだけれど何か理由があるの?」


思い立ってリラに聞いてみると、リラは笑って言う。


「ああ、『姫』だからですよ

 それに、外には何もありませんよ?」


「—————え?」


 外に何も、ない?


「どういう事?」


私が眉を顰めると、幼女の顰めっ面が面白かったのか、リラは肩を震わせながら説明した。


「この城が、作られた空間だという事はご存知ですよね?

 他の家や施設などもそうなんです

 だから外、天界には、一つの教会を除いて何もありません」


天界———界、と呼ばれているのに、何もない?全ては別の空間にある?じゃあ————


「天界って、何?」


天使が住まう世界というのは可笑しい。だって別の空間に住んでいるのだから。


「天界というのは、天使の住まう空間から、また神々の存在する神界から、最も近しいところ、です」


私が愕然としているのに、気付いてか、気付かずか。リラは言葉を続けた。


「そして、浄化された、けれど体のない、美しい魂の待機所でもあります」


魂の、待機所?


「魂は、廻り、廻って行くのですよ

……………もしかしたら、姫様の魂も、何処か違う場所から来たのかもしれませんね」


あ、はい。当たりです。バッチリ前世の記憶もあります。

 でも、そうなのか。天界は、天使達が消えた後には美しい魂のみが入れる神聖な場所になり、それらの安らぎとでもなったのだろうか。あ、でも何もないのに安らげるかな?

 と、まあ。妄想はここまでにして。

 しばらく歩いているうちに、競技場についたみたいだ。

 競技場への扉は、私の部屋と同じ階の端っこにあった。灯台もと暮らし?

 リラについて競技場に入って、私は既視感を覚えた。


「あ〜〜〜〜っ、もうっ!!!

何で皆様、またお揃いなのですかっ!?」


そう。また客席に皆が揃っていた。


「ほら、だって、のう?

アメリアの娘は、我らの孫みたいなものじゃ

 孫の成長は気になるのじゃ」


いやいや、リンネ神。貴方創造神ですよね?

お仕事どうしたんですか?


「母様は了承しているのですか?」


「うむ

アメリアは基本、我らのする事に口出しせん」


「…………はい?

母様、甘やかしすぎではありませんか?」


私がじと目で見ると、母様は慌て出す。


「だって、だって!

私の母様が、『リンネ神を怒らせたら世界は終わったと思え』って!」


母様の母様————私のお祖母様、物騒な事言わないで下さいよ。


「リンネ神、せめて、次から来る方を数名に減らして下さい。後、ペースも減らして下さい」


〔({『「なっ!?」』})〕


いや、そんなに驚く事でもないでしょうに。

 ————あ〜っ!やりたくなかったけど、ここは奥の手だ。


「尊敬する皆様の前では、恥をかきたくないんですよっ!

 孫の自尊心を尊重して下さらないのですか?」


そう。名付けてお祖母様大好きっ子作戦!結構大げさにやったけど、これでいい。


〔({『「うぐわっ!」』})〕


皆様に大ダメージ、やったね☆


「う、む。分かった。数は減らそう

だが、ペースを減らすのだけは………」


「…………ルカと二人でゆっくり話す時間をくれたらいいです」


「分かった!約束しよう!」


よし!友達がいない私は、アデラや両親、メイドさん達としか遊べない。趣味が合わない事もあるからね〜。暇なんです。

 その点、ルカは年が近い(外見年齢)し、話も合うんだけど、あまり会えなくて残念だった。


「……じゃあステラ、そろそろ始めましょうか」


「はい、母様!」


そうだ。本題を忘れていた。


「体術の他に、武器を使った練習もするから、ステラはまず武器を選んでちょうだい

 大剣、十字剣、細剣、短剣、弓、槍、斧、ハンマー、鎌、盾————」


「母様。盾は武器なんですか?」


いや、確か、盾は身を守るための物のはずだ。


「武器よ」


あれ?可笑しいな〜。


「それで、どれにするの?」


母様は手を横に振って、それらの武器を出した。


「———母様、その武器が全て、ノクティスに合うのは気のせいですか?」


「気のせいじゃないわ

神衣を着ている時に狙われる事もあるから、合わせてるのよ」


まじか。あのフリフリドレスで戦うとかどんな修行なの?


「私は十字剣よ

 ちなみに、魔法でしまっておけるから大きさは気にしなくていいわよ

 重さも調節できるから」


おう、チートですね?


(う〜ん………

弓と盾はないかな?弓は遠距離用だし、盾は攻撃に向いてないし……

 槍、斧、、ハンマー、鎌もちょっと………。絵面的にね?ギャップ萌え〜、じゃないんだよっ!

 後は剣になるけど…………

 重さを調節できるのなら短剣はなしかな?攻撃力弱そうだし………

 ビジュアル的には、十字剣か細剣かな

う〜ん…………

—————よしっ!)


「十字剣にします」


「分かったわ」


『ブヴォン!!!』


「————じゃあ、それを持って、見た目と重さをイメージしてみて」


母様は先ほど出した十字剣アを私に投げた。

 ………あれ?「ブヴォン」って、剣が出す音だっけ?怖いです…………。

 地面に突き刺さった十字剣を抜いて、持ってみる。すると————


「重っ!?」


重かった。こんなに重いの!?


「………」


(えっと、重さは———幼女が持てるくらい。具体的には————傘くらい、かな?

 見た目は————刀身は黒。鍔、っていうのかな?そこは銀色にして、私の瞳と同じ碧い石を嵌め込む。それから、刀身で持ち手に近いところ—

———日本刀なら銘が彫られる様なところに、銀の十字架を入れる。ガタガタはしない様に。持ち手は握りやすい様に少し曲げて…………)


 そんな風に心の中でイメージし終わると、剣が銀色に光った。

 しばらく、光に包まれた後、私のイメージ通り——否、イメージ以上に素晴らしいレイピアが出来ていた。


「名前は…………クルクス」


クルクス——十字架だ。魔を払う意味も込めて。


「………ほう?

ステラ、ちと、それを貸してくれんか」


リンネ神の言葉に頷き、魔法で届ける。

 ノクティスを作った日から、私は父様に頼んで魔法の勉強を始めた。結論。父様はスパルタだが、実力は確かである。

 父様に教えてもらって一週間で、私は基本属性の赤魔法と白魔法はプロ(?)並に、それから特殊の無魔法も少し使える様になった。

 魔法は色で説明されていて、基本属性が赤青白茶。特殊が黄紫緑無。効果は、前から火水風土、光闇植物その他。

 氷は水———つまり青魔法の派生系。回復や空間転移などは特殊の「無魔法」になる。

 で、浮遊と風を組み合わせて、こんな芸当が出来る様になった。


「…………うむ

目覚ましいのう

 魔力の量はエドワードにも劣らぬやもしれん

————アメリア、御主の娘は相当な変異じゃな

 血も関係しておるのか……?」


リンネ神、変異って褒め言葉じゃないと思うのは私だけですか?

 ていうか、父様の魔力ってエルフ界(?)でも一番だったって聞きましたが!?それと同じくらい!?


「というか、剣に魔力が宿るんですか?」

魔法剣、ってやつ?本当にあるんだ?


「うむ

全ての物には、二つの物が宿っておる」


「二つ?」


一つじゃないんだ。


 私が聞き返すと、リンネ神が答える。


「一つ目は魔力。魔力の宿っていない物はないのじゃ。それは生物も同じで、魔法回路に問題があったり、量が少なかったりして魔法が使えない事はあるものの、必ず宿っておる

 そして二つ目。魂じゃ」


「魂…………」


リンネ神の言葉を噛み締める。


「そういえば、以前母様が『万物には命が宿っている』、と」


ノクティスと名付ける時、母様は確かにそう言った。


「そうじゃ

 ステラ、全ての物を大切に扱え

ふむ、そうじゃのう…………。早くて三年後かの?

 面白い物が見れるかもしれんぞ?」


リンネ神の意味深気な笑いに首を傾げていると、母様が珍しく大きな声を出した。


「ステラ〜

そろそろ訓練を始めるわよ〜!」


「あっ、はい!

よろしくお願いします!」


 私は、話が脱線しない様に心がけよう、と多分きっと恐らく忘れないであろう様に心に誓い、母様の元へ駆け出した。

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