初めてのお友達3
え〜。やって参りました、神々の国、神界!わ〜、パチパチ。
私の周囲には、神!神!神!
どうしてこうなった!?
遡る事、約二十分。
リンネ神に会うという事で、張り切ってました。————母様が。
服が神衣と決まっていて良かった。多分、いや絶対着せ替え人形になってたから。
「さあ、そろそろ行きましょう!」
母様が私に声をかける。
ちなみに、母様も神衣です。金が基調になっていて、神々しいです。確かにThe、天使だね。
「どうやって行くのですか?」
私はそもそも神界が何処にあるのかも知らない。
「こっちよ〜」
母様が私を連れて向かった先は————。
「え?広間?」
そう。いつも食事をしている広間だった。
私が驚いている間に、母様は翼を広げて飛ぶ。あ、私も飛べますよ?二歳の時から猛練習させられましたから。此処は天界のはずなのに、あの時ばかりは地獄かと……。
そして、母様は天井の魔法陣?みたいな絵に突っ込んだ。
「えっ!?母様?」
すると、母様の姿はなくなっていた。
「ほら、ステラもおいで」
あ、魔法陣から手だけ出て来た。ホラーだよ。
「はーい」
気を取り直して、私も魔法陣に激突した。………制御は難しいんです。
そして、通り抜けると、何処かデジタル感のする、近未来的な空間にいた。
「わ、綺麗………」
歩いていると、足下で半透明の何かが弾けた。ファンタジー。
「ステラ、こっちよ」
前に向き直ると、母様が手招きしていた。
「今行きます!」
しばらく母様について行くと、神殿があった。そこにある像は、リンネ神がモデルになっていた。流石、創造神。ただ、身長が伸ばされてるのは見栄?見栄なの?
通り抜けるのかと思ったら、母様はリンネ神の像が持っている謎のキューブに触れた。
すると、神殿が揺れた。大地震レベルで。しばらく柱につかまっていたが、飛べる事を思い出して翼を使う。
揺れが収まると、リンネ神の像がスライドし、地下(?)へ続く階段が現れた。お〜、凄い。
「さあ、行くわよ」
「はい」
母様について行くと、その先には—————。
「何で神々が勢揃いなんですかっ!?」
神様大集合だった。お祭りか、と疑うくらい。
「あら、皆様、お久しぶりです〜」
母様は、いつもと変わらずのんびりモードだ。
え、皆と面識あるんですか?
「お、来たか
久しぶりじゃのう、朔———んん゛、ステラ」
そこに現れたリンネ神。朔夜って呼ぼうとしましたよね?
「お久しぶりです、リンネ神」
「うむ」
会話を入れたら昨日ぶりなんだけど、細かい事は気にしない。
「あの、どうして皆様お揃いで?」
まずは疑問を解消する。
「ああ、前に行った通り、アメリアは皆と関わり深くてのう
そのアメリアの娘じゃ。皆会いたいと押しかけて来たんじゃよ」
え、プレッシャーが。
「まあ、少し付き合ってくれ」
リンネ神のその言葉を皮切りに、神々が押し寄せて来た。
「きゃー、可愛い!」
「小さ〜い、可愛〜い!」
「天使でエルフで人とは………
興味深い」
ここで冒頭に戻る。
「皆様、初めまして
アメリア・ウーヌスの娘、エステラ・ウーヌスです。母様がお世話になっています」
母様天然だからな〜。あ、もちろん最上級の笑顔
を向けて言う。愛想は大事ですよ〜。
「「「「可愛いっっ!!!」」」」
ありがとうございます。
「ほれ、御主ら、そろそろ退け
我の用件が済んでおらぬ」
ここでリンネ神の救済。
「頼み、とは何なのでしょう?」
「うむ……………」
私の質問に、リンネ神は目を伏せる。
「「?」」
私と母様が首を傾げていると、リンネ神の背後から子供が現れた。
「その方は?」
私が尋ねると、やっと目を開いてリンネ神が言う。
「この子は最近生まれた子神なのじゃが、無口で年の近い者とは合わんようで……
そこで、御主に話し相手になってもらいたいのじゃ」
「はい、もちろんです」
「いいのか?」
私が即答すると、リンネ神は目を見開く。
え、だって無口なんだよね?暴力を振るう問題
児とかじゃないなら全然いいよ。それに…………
(私、友達いないんだよね)
「はい」
尚私が頷くと、リンネ神は安心した様に笑う。
「では、暫し二人で遊んで来るのじゃ
我らはする事があるのでのう」
そう言ってリンネ神が手を叩くと、私とその子だけが別の知らない場所にいた。
「えっと、私はエステラ
貴方の名前は?」
私が聞くと、その子はこちらを見て言う。
「…………ルーカス」
わあ、予想以上の無口。
その子———ルーカスは、白髪金眼の美少年。綺麗な顔立ちだし、色素も薄めなのに、俯いているせいか暗い雰囲気がある。
「ルーカス、って呼んでもいい?」
私が尋ねると、コクンと頷いた。聞かれた事に答えてくれるだけ問題児よりましだよ。……目は合わせてくれないけど………
「ルーカスは、普段何をしているの?」
「…………本を読んでる」
「本って、どのくらいの厚さの本?」
ルーカスの大人びた雰囲気に、まさかと思いながら聞くと、予想通り……いや、予想以上だった。
「このくらい」
そう言って、ルーカスは指で示す。
その厚さは五センチくらいはあって、それが絵本なわけもなく。見た目五歳児の少年が読むような本じゃない事は確かだった。————私は例外だからね?精神年齢二十歳くらいだし。
「すごいね!
そんなに厚い本読めるなんて!
どんな本?」
話題を欠かさない様、話を振る。あ、質問責めになってるけど…………無言よりはいいよね!?
「……最近読んだのは、『フリーディア物語』と『天文学辞典』と『ルチェア・ステラ』かな」
それを聞いて、私はピンと来た。
「ルーカス、もしかして、星好き?」
「っ!?」
私がそう聞くと、今まで無表情だったルーカスが動揺し出した。
「何で、そう思ったの?」
ルーカス、それは肯定ととるよ?
「天文学辞典はその名の通りだし、フリーディア物語は星が擬人化された話でしょ?ルチェア・ステラは星を旅する少年のお話だし」
さて、私が何故これを知っているのかと言うと。まず、フリーディア物語、前世での七夕物語と殆ど同じなんだよね。他にもかぐや姫もどきとか色々あったよ。で、ルチェア・ステラはラテン語で「輝く星」。私の名前に似てるから読んだんだけどね。
「っ!
読んだ事、あるの?」
「うん」
あ、なるほど。皆お子さ———コホン、まだ体を動かすのとかが好きで話が合わなかったのかな?まあ、人間と神は違うしまた別の事情があるかもしれないけど。
「ねえ、じゃあ、『銀河奇譚』は?」
お、饒舌になり始めた。
「読んだよ〜
四話のヤツボシ様の正体とかびっくりした!」
「そうそう!
後、九話の真実分かった?
僕は一話で消えたフタボシ様かと————」
食いつきがいい。同士が欲しかったのかな。
あ、私がこんなに星関連の本を読んでいる理由は、父様の影響。前に言った通り、父様は研究家気質で、星の研究もしてたんだ。で、書庫にあったのが面白そうだったから大体読んだってわけ。
「—————あ、そろそろ戻らないと」
しばらく本について話し合っていたら、ルーカスが言う。どうして時間が分かるんだろう。
「じゃあ、行こう」
そう言って、ルーカスが私に手を差し伸べる。
「ありがと………ねえ、ルーカス
私の事、ステラって呼んで?」
私が笑って言うと、ルーカスは少し目を見開いた後、頷いた。
「じゃあ、僕の事もルカって呼んで?」
「うん!」
初めて友達が出来た気がする。やった〜!
少し歩くと、綺麗な植物のアーチがあった。そういえば、少し前から植物が育ててある。
「これを潜ったら戻れるよ」
そう言って、ルーカス———ルカは私の手を引く。そういえば、ずっと手を繋いだままだけど、
歩きにくくないのかな?
「行くよ」
ルカがそう言うと、私の視界は光に覆われた。
少しして元に戻ると、そこは先ほどまでいた広場だった。
「お帰り、ステラ」
母様がこちらに気づいて、笑顔で手を振る。
私も母様に手を振り返していると、ルカが私に耳打ちしてくる。
「今度、また話そうね?」
「うん、お勧めの本持ってくるね」
そう言って笑い合うと、ルカは私の手を話した。
「じゃあ、またね、ステラ」
「バイバイ、ルカ」
私はルカとも手を振り合うと、母様の元に戻った。
「あら、ステラ
ルーカス神と随分仲良くなったのね」
あ、そういえば、ルカ神様だった。
「母様、ルカに敬称忘れてました………」
私が真っ青になって答えると、母様は朗らかに笑った。
「大丈夫よ
ルーカス神に許可は取ったのでしょう?
彼も楽しそうだったし、いいんじゃないかしら」
良かったああああっ!転生して、神の怒りを買って、死亡、とか最悪だからね!
「ふふ
何の話をしていたの?」
「本の話です!
ルカは無口って言われてましたけど、周りに合う子がいなかっただけで、本の事になると饒舌でしたよ」
私が笑って答えると、母様は少し首を傾げる。
「あら?でも確か…………」
「母様?」
「…………何でもないわ」
そう言った母様の笑顔は、にっこり、よりもにやり、といった方が合う様な笑みだった。え、何?
「うふふ
そのうち分かるわよ」
そしていつもの母様に戻って、私に手を差し出した。
「さあ、帰りましょう?」
「はい!」