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シナリオは崩壊しました。自由に生きてもいいですよね?  作者: 雪結び
邪神やら聖女様やら〔六歳〜〕
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精霊様と神様と

 一件落着、なんだけど。

 アデラから聞いたトワの話に、聞き逃せない事が。


「ラリマーのお姉さん!?」


「はい

 人間がやった、っていう事になってましたけど、邪神を浄化するために………」


 アデラは眉を顰めながら言う。

 これ、ラリマーには言わない方がいいのかな……。


『呼んだ?』


 そこで、ラリマー登場。

 会いに行く、会いに行く、って言いながら全然いけてなかった。

 ごめんえ、ラリマー。


「ううん、何でもないよ

 最近遊んであげられなくてごめんね」


『ううん

 邪神?の事、調べてたんでしょ?』


…………。


「知ってたの?」


『全部、知ってるよ

 あの子が邪神、なのも、知ってた』


「え………いつから?」


『初めて、会った時に、お姉ちゃんの気配がしたの

 ジェードに、調べてもらって、全部知った』


「ラリマーは、大丈夫なの?」


『うん

 知れて、良かった

 お姉ちゃんは、私のヒーロー

 世界を救うために、消滅、するなんて、格好いいでしょ?』


 ラリマーは、強いんだ。

 誇らしげに笑う姿は、ずっと大人びて見えた。


 トワとラリマーもまた、この事件の被害者で。

 心と体の時間を止めてしまった。

 二人は似たもの同志なのかもしれない。


「ラリマー、お墓参りに行かない?」


『お墓?ないよ?』


「うん、だから、魂だけでも弔いに」


『っ…………い、く』


 トワは、また今度連れて行こう。

 邪神との衝突は何処で起きたんだ?


「何処か知ってる?」


『お花の、お姉ちゃん、か、精霊王様、なら』


 お花のお姉ちゃん………あの精霊様だよね?

 そんなに上位の精霊様だったのか………。


「じゃあ、明後日くらいに行こうか

 里帰りも兼ねて

 アデラはどうする?」


「行きます!

 あ、母様達の許可を取ってきますね!」


 本当は収穫祭が終わって夏に行くつもりだったんだけどね。

 善は急げ!だよ。

 すると、アデラが出て行ってすぐ、扉が開いた。


「母様、と、父様!?」


 母様が神出鬼没なのはいつもの事だけど、父様もとは珍しい。

 いつも仕事が忙しくて、ご飯以外の時はあんまり会えない。

 まあ、私たちも最近は自由な時間が減ってるんだけどね?主に執務という名の無茶振りのせいで。


「ステラとアデラは、全てを聞いたのね」


 母様は少し悲しげに笑う。

 私だって、何も思わなかったわけない。


 いきなり召喚された衣奈へは、尊敬と同情、そして、もし自分がその立場だったらという事への恐怖。

 虐められ、挙げ句の果てには邪神に体を乗っ取られたルカへは、哀れみと周囲への憤り。それから差別の事実への悲しさ。

 親を殺され、その一因を救わなければいけなかったトワや、姉を失ったラリマーへは、不憫で気の毒。ってね。


 私からしたら、どれだけ感情移入しても他人事。

 当の本人達は、「可哀想」と言われたくて話をしたわけじゃない。

 私がするべきは、慰めでも、同情でもない。それらの原因を排除し、未来に辛い思いをする人が減る様にする事だ。そして、私はそれをしなければいけない立場にある。

 幸い、私にはいい環境と、助けてくれる人たちがいる。

 だから、これを糧にして頑張らないと。


 拳を握る私たちを見て、母様と父様は、私たちを抱きしめた。


「ごめんなさい

 こんな立場だと、貴女達は子供ではいられないの

 だから、私たちの前では、まだ、子供でいていいのよ」


 母様、何でそんな言葉かけるかなぁ。

 私の頬を温かいものが伝う。喉から、嗚咽が溢れる。


「私っ、は!泣いちゃ、駄目、だからっ!

 私は、何もっ、辛く、ないのにっ

 泣くべき、は、私じゃ、ない、からぁあああ!!

 うわああああああ!!!!!」


 涙が溢れる。

 私が泣いても、何も変わらないのに。

 私は言葉で聞いた事情しか知らないのに。

 本当に辛いのは、それを経験した本人だけなのに。


 何で、何で、私が泣くの?

 可哀想って思うから?同情してるの?

 そんなの、勝手すぎるよ。

 何も知らないのに。痛くも辛くもないのに。


 何で泣くのかなぁ。


「二人は、よくやった

 人の心に触れるのは、難しくて、とても辛い事だろう

 その重みを知って、それを解って、一緒に悲しんで


 それができるのは、本当に優しい人だけなんだ」


 でも、駄目でしょう?

 人の上に立つものでいる為には、強くないと。

 時には、自分の感情だって押し殺さないと駄目なのに。


「誰だって、人に関わる限り、心はあるんだよ

 ステラやアデラが前世で大人だったとしても、ここではまだ子供なんだ

 無理に大人にならなくてもいい

 辛い事は、大人が背負うものなんだよ」


 私が、子供?

 一度十七歳まで生きてても、今は、六歳の「ステラ」になってもいいのかなぁ。


「泣きなさい

 子供は泣いて、食べて、寝て、健やかに育つのが仕事だよ」


 父様、ありがとう。

 ちょっとだけ、心が軽くなった気がする。

 でも、目蓋が重いよ………。


「おやすみ、ステラ」


「おやすみ、アデラ」


 私の意識は、闇の中に消えていった。



『何、此処?』


 眠ったと思っていたのに、眩しさに目を開けると、雲が漂う不思議な空間にいた。

 私は立っているけれど、感覚がない。


『………夢かぁ』


 明晰夢、ってやつ?

 初めて見たよ。


 少し歩いていると、人影が見えた。

 そこに近づいて行くと、そこにいたのは———。


『……誰?』


 見た目はラリマーとトワだけど、違う。

 言い表せない様な「違和感」がある。


『流石じゃなぁ

 我らの違いを見抜くとは』


 その口調は、トワのものじゃない。


『………リンネ神、でしょうか』


 トワの様な誰かは、黙って笑う。

 それは肯定だろう。


『では、貴女がラリマーのお姉さんですか?』


 ラリマーにそっくりなその子も、笑って頷いた。


『ラリマー、だった、よね?

 あの子に、素敵な名前をありがとう

 寂しがり屋で、泣き虫なの、あの子

 仲良くしてくれて、ありがとう』


 そっくりな声で笑う少女は、ラリマーよりも少し大人びていて、少し明るかった。

 ラリマーは月の様だけど、この子は温かい、春の日差しの様だ。


『初めまして

 エステラと言います


 どうしてここへ?

 お二人は、生きているのですか?』


 私の質問に、二人とも首を横に振る。

 リンネ神は少し寂しげに笑って、言葉を紡ぐ。


『爾に、幾つか伝えたい事があったのじゃ


 まず、一つ目

 少年——ルーカス、じゃったか?

 彼を救ってくれて、有り難う

 トワにもよろしく伝えてくれ


 二つ目

 澪莉、じゃったか

 彼女には申し訳ない事をしてしまった

 しかし、生涯を終える時に謝罪をしたら、礼を言われてしまったのじゃ

 知り合いであったのじゃろう?

 幸せだとは伝えておこう


 三つ目

 星が破壊される、なんていう心配はもうない

 厳密に言うと、ルーカスが爾と会った時からその可能性は薄れていた

 安心するのじゃ


 四つ目

 各界の王達に、謝罪と感謝を述べたい

 但し、我らは実態を持たぬ

 伝言、もしくは手紙を頼もう


 五つ目

 爾とアデリナは『シナリオ』だの、『強制力』だの、『ゲーム』に引きずられている様じゃが、この世界と酷似している世界、というだけで、その様な決まりはない

 自由に、それこそ勝手に生きて幸せになってくれ

 …………まあ、数ある未来の中に、それがないとは言い切れんがな

 爾次第じゃ


 六つ目

 邪神は復活したりなどしない

 我らと共に、完全に消滅した

 まあ、我らにかけられた呪いは肉体だけを消し去り、意識は残っているんじゃが……

 とにかく、戦争などがない限り、平和な未来だと思うぞ?


 七つ目

 ラリマーに、此奴は幸せじゃと伝えておいてくれ

 結構な勝手をしているぞ?

 変わりない


 八つ目……これが最後じゃ

 トワや、ルーカス、ラリマーにヨモギ、じゃったか

 たくさんの者の心を救ってくれて感謝する

 一応、これでも人の親なのじゃ

 自分の事を後回しにして、幸せを知らないトワの事は心配しておった

 神としてではなく、一人の親としても、礼を言わせて欲しい』


『私も、ラリマーが、心を壊したのを見ていられなかった

 でも、何もすることが、できない

 本当に、ありがとう』


 私は、お礼を言われる事なんて何一つやってない。

 ルカを救ったのは、無意識。それに自己満足。私の友達が不幸なのは嫌なだけ。

 トワを救ったのは、アデラじゃないかな。あの子の言葉は、何だか胸に突き刺さるから。

 ラリマーは、魔力を吸い取って、暴走を止めただけ。たまに構い倒しもしたけど、全部自分の為。

 ヨモギは、友達を作ってあげただけ。衣奈からの頼みもあったし、一人の寂しさは元ぼっちとしてよく知ってる。


『お礼を言われるべきは、他の皆ですよ

 リンネ神も、ラリマーのお姉さんも、邪神を食い止めて世界を救ってくれました

 ラリマーが誇らしげにしてましたよ?自慢のお姉ちゃんだ、って

 トワは、心から尊敬するお母さんの言葉を思い出して、ルカを保護したそうです


 私も少し、関わったかも知れませんけど、初めを作ったのはお二人です

 それをトワが、衣奈が繋いで、私たちのところまで来ました


 私だって、救われた一人なんです

 この世界に転生して

 可愛い妹と素敵な家族ができて

 仲良しで私の事を思ってくれる友達ができて

 私の事を好きでいてくれる人もいて


 あのまま人生が終わって、輪廻の輪に戻っていたら、こんな事は経験できなかったかもしれません

 本当に、ありがとうございました』


 未練が、なかったわけじゃないけど。

 それ以上に、この世界で生きたいと思えるんだ。

 その機会を作ってくれたのはトワだけど、元を辿ればリンネ神で、邪神で、ルカで。

 輪廻の輪じゃないけど、全部繋がってるんだよ。


 私は、リンネ神は。

 幸せを繋ぐ神様だと思ってるよ。


『そんな事、初めて言われたよ

 こう言う時は………うん

 どういたしまして』


 ラリマーのお姉さんは少しだけ照れた様に笑って、私の頭を撫でてくれた。

 不思議な体験だったけど、とっても素敵で、長い一日だった。

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