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シナリオは崩壊しました。自由に生きてもいいですよね?  作者: 雪結び
日常です〔五歳〜〕
31/68

デビューです!2

 その後にもたくさんの方と挨拶をして、後一組だ。表情筋が辛い。


「ご来場いただきありがとうございます」


 と、店員紛いの事を引きつり気味の笑顔で言い、顔を見ると、信じられない人がいた。

 母様に次ぐ、神出鬼没の称号を送ってもいいくらいだ。


「お久しぶりです、リンネ神、ルカ」


 まあ、予想外ではない。

 昨日の夜にアデラと、


『明日、神様も来ちゃったりして』


『あはは、まさかぁ

…………ないよね?』


とかフラグ立てちゃったしなぁ。


「あら、リンネ神

 スキュリバ神に怒られますわよ?」


母様も流石に苦笑だ。

 リンネ神はそんなことは気にもせず、いつも通りに笑う。


「大丈夫じゃ

 今回はちゃんと許可をとってきたからのう」


 ちょっとドヤ顔だけど、それは普通だと思うんだ。


「ルカ、お疲れ様」


 思えばルカが付き合わされるのも、私がルカを連れてきて、って行ったせいだよね。

………私、迷惑すぎる?


「僕は僕の意思で来てるから、不安そうな顔しなくて大丈夫だよ」


 ………ルカはたまにエスパーなんだよ。

 いや、ルカだけじゃないな。私の周りの人は大体察するのが上手い。私は苦手なんだけどね。

 アデラも混じってルカと話していると、音楽が流れ始めた。

 そう、ここは舞踏場だからね。デビューの子達も踊るんだよ。

 といっても、もちろん二人ペアのちゃんとしたダンス。だから、ほとんどの場合はエスコートが決まってるんだけど———。


「母様、聞いてませんよ?」


 迂闊だった。

 知識的には知ってたけど、母様達に何も言われないから忘れてた。


「あら、ステラにはルーカス様がいるでしょう?」


 えっ、ルカは母様公認なの?


「アデラは?」


「私はジェード様と踊ります!」


 あぁ、なるほど。

 ジェードが正装姿で出てきた。新鮮。

 しかも、アデラとの身長差も考えて、少年になっている。

 一応、礼儀もバッチリだし、ダンスも上手くフォローしてくれるのは間違いない。


「ステラ

頑張ろうね?」


「………はい」


 一応王女として一回は踊らないと不味いしね。

 ファーストダンスは母様と父様。その次に王族が踊って、次に自由になる。

 相手が変わって回っていくのもあるけど、それは連携しないと難しいから、あくまでペアダンスだけだ。

 ちなみに、デビューする人が一回以上さえ踊れば、他の人は踊らなくてもいいし、二回以上踊る必要もない。そういう人は料理を楽しんだり、話を楽しむみたいだ。

 それから、デビューする人のためのパーティだから、母様と父様は踊らなくてもいい。けど、まあ、ね。母様が踊りたかったんだって。見本を見せる、という建前で。


 父様と母様は息ぴったりで、時々何かを話しながら笑い合っている。

 その二人の様子に見惚れている人も少なくない。

 楽しそうだから余計にそう思えるのかもね。


 そして、最初の曲が終わり、母様と父様が礼をする。

 湧き上がる拍手の中、私はルカにエスコートされながら中央へ歩いていく。

 母様達はもう一曲踊る様だ。アデラ達も歩いてきた。


 私達で三角形を描く様に移動すると、曲が始まった。

 礼をしてからマナーを思い出し、背筋を伸ばしてルカと踊る。


「ルカ、踊りも踊れるんだね」


「うん、そうだね

 人並みには大体の事はできると思うよ

 スキュリバ神に教えてもらったから」


なるほど。出来る女。


「「…………」」


 無言。

 話す事が思いつかない、っていうのもあるけど、ダンスだと無駄に近いんだよ!

 ほぼゼロ距離。

 意識すると心臓がバクバクする。ドキドキじゃない。バクバク。

 相手は六歳児なのに!いや、私も肉体年齢は六歳だけどさ。


「ふふっ、緊張してる?」


「してるよ

 後、ルカが近い」


本音をぶっちゃけ。顔が熱いのは照明の熱さと動いたせいだけじゃないと思う。

 ルカ、なんでそんなに嬉しそうなの?甘い目で見ないで!

 俯いていると、ルカの声がかかる。


「下を見るのはマナー違反じゃない?」


ううっ、そうでした。

 だけど、ルカは見過ぎです!視線が痛い!


 なんとか耐えていると、漸く曲が終わった。

 凄い長かったよ。

 礼をして下がると、拍手がもらえた。ちょっと達成感。

 そして、何組かの子息令嬢が中央に集まってくる。身分的に上位貴族からかな。

 アレクシス様や、ミラとリアン君もいる。公爵家かな?


「ステラ、このまま踊る?」


「結構です………」


 顔の熱が取れない。

 私が手扇をして、ルカが笑っていると、アデラが近づいてきた。


「姉様、交代しない?」


「ルカは、いい?」


「いいよ」


 少し瞬きをして理解した。

 パートナーを、って事かな。

 曲が始まる前に、場所を動いて踊りの準備をする。


「ジェード、よろしくね?」


「ああ、振り回そうか?」


「なんでそうなったの?」


 ジェード、中からガーネットが出てきたりしない?

 お茶目さに拍車が………。


「ん?ああ

 ラリマーに少しガーネットを見習えと言われてな

 自由にしてみると、これはこれで楽しいものだ」


ふ〜ん。まあ、ジェードが楽しいならいいや。

 ミニサイズな事もあって、悪戯を考える少年の様な顔をしていた。

 踊っていると、ルカの優しいフォローとは違って引っ張っていかれる感じがする。これはこれで踊りやすいかも。


「どうして、ジェードがアデラのパートナーだったの?」


「下手に他の貴族を選ぶと、噂が立ったりするだろ?」


「なるほど」


確かに、ジェードは適任だなぁ。

 見知らぬ少年だし。踊り上手いし。

 ……あれ?見知らぬ少年、って、逆に大丈夫かな?

 いや、ルカもそうなんだけど。


「ふっ、精霊をパートナーにしているやつも何人かいるぞ」


 ねえ、私、顔に出てるの?

 皆が察するの上手いだけだよね?


「そうなんだ

 精霊様と天使の距離は、意外と近いのかもね」


「ああ、そうだな

 特に最近は友好的だ」


「ああ、あの『精霊当番』っていうのとか?」


「代表的なものはそれだな

 他にも————」


 そんな風に精霊様の事について話していると、あっという間に一曲が終わった。

 やっぱり、ルカとは違う。ジェードは何処まで行っても「お兄ちゃん」だ。


「じゃあ、交代だ」


 ジェードはそう言うと、私の手を握って歩き出した。

 え、せめて何処に行くのか言ってくれない?

 結局行った先にいたのはルカとアデラだったけど。

 アデラ、なんでニヤニヤしてるの?ルカ、何か言ったでしょ?


「あ、そうでした

 一通り挨拶も終わったし、夜会を楽しんできて、だそうです」


「母様?」


「はい」


 いつの間に連絡を………。あ、魔法使えば普通に出来るなぁ。

 多分、母様→アデラ→私ってところかな?イアリングを使えば魔力も少量でいいけど、私達に取っての少量は少量じゃないらしい。それに、パーティーでは魔法はあまり使わない方がいいみたい。問題が起こっても困るしね。


「姫様、お手をどうぞ」


 ルカが手を差し出してそんな風に言うので、私も思わず笑って手を重ねた。


「ありがとう」


「っ…………!」


「ルカ?」


 ルカは何故か少し俯き、何かを呟いている。


「具合悪い?

 大丈夫?」


「…………うん、大丈夫

 ステラの笑顔が、可愛すぎた」


「なっ!?」


 褒められ慣れていない。顔が真っ赤になったのが分かった。

 ルカは吹っ切れたのか、告白された日から、恥ずかしい事もそのまま言う様になった。

 おかげで、私の心臓は持たない。


「ル、カ

 もうちょっと、そういうのは抑えてくれない?」


 頭の中はずっとパニックだし、爆発しそう。

 ルカを見ると、少し不満気な顔になった。


「いやだよ

 こうでもしないとステラは意識してくれないでしょ?」


「うっ」


図星だし、前科があるから反論できない。


「そろそろ動こうか

 アメリア様の言葉は?」


「覚えてるよ」


 話を逸らされた気がなくはないけど、確かにずっとこのままでも意味がない。

 ルカの手を握っている手に少し力を込めて、二人で歩く。


「何か食べたいものはある?」


「大丈夫だよ

…………あ、チョコ、食べない?」


「ステラ

 確かに美味しいけど、僕はチョコレートばっかり食べてるわけじゃないんだよ?」


 あ、そういえば。

 でもルカの好きな物ってチョコしか知らない………。


「ルカの好きな食べ物って何がある?」


「そうだね………甘い物は好きだよ

 後は、苦い物以外なら………」


 そうなんだ。

 脳内メモ。


「じゃあ、甘い物食べる?」


「うん

 まあ、少しにしておこうね?」


「は〜い」


 というわけで、お菓子の机に移動。

 お皿に取って、立ったまま食べるバイキング形式。まあ椅子もあるんだけど、全員分は流石にない。


「うぅ、美味しそうで悩む」


「どれで悩んでる?」


「このチョコケーキと、こっちのマカロンは決まったんだけど、後一個をミルフィーユかチーズケーキで悩んでる」


「ん、じゃあ、僕もチーズケーキ食べるから、半分こする?」


「する!」


 持つべきものは理解のある友達。

 じゃあ私もミルフィーユを半分あげよう。………パイ生地がなかなか切れない。

 あ、ちなみに、全部一口か二口サイズ。だから、食べ過ぎではない。はず………。


「ルカ、これ半分食べて」


「えっ?」


「チーズケーキの半分の代わりに

 はい」


フォークで突き刺したままルカの口元に持っていく。お行儀は悪いけど、半分この時点でいいとは言えないでしょ?

 それに、ルカは今お皿とトング(でいいのかな?)で両手が塞がってるから、しょうがない。


「えっと、じゃあ

いただきます」


 困惑してるけど、半分食べてくれた。

 ん、ルカ、熱い?顔が赤いよ?


「はい、どうぞ」


 ルカもチーズケーキを半分くれた。

 美味しい!なんていうか、この、生地の滑らかさというか……!

 もちろん、チョコケーキとマカロンも美味しかった。今度シュークリームを作ってもらおう。………リラに。私は作り方知らないけど、大分前に作ってくれたし、美味しかったから。ただ、たまにクリームがつくから夜会向けではないかもね。拭いたらお化粧落ちちゃうし。


「美味しかった〜」


『ステラ、アデラ

 そろそろ戻っていらっしゃい』


 母様の通信だ。

 流石に何処にいるのか分からないから両方に言ったのかな?

 まあいいや。


「ルカ、母様が戻ってきてだって」


 ルカが頷いたのを見て、もう一度ルカの手を握って歩き出す。

 戻ると、母様がこちらを見て口を開いた。


「ステラ、どうだったかしら?」


「とても有意義な時間でした」


「……そう

 ルーカス様、ありがとうございました」


「いえ、僕がやりたくてやった事ですから」


ルカが微笑む。


「では、僕も戻りますね」


 ルカは一礼して私の手をとり、手の甲に口付けた。


「!?」


「ステラ、また今度」


 何何何!?

 え、手の甲に、口付け?ふええええ!!??

 そろそろキャパオーバーなんだけど。

 ちょっと落ち着くために座って、深呼吸。

 ふぅ、頭が冷えてきた。

 ……ルカ、ああいう事を恥ずかしげもなくやれるのは凄いと思うけど、私は卒倒しそうだよ?

 いや、これから社交辞令なんかでやられるかもだけど、意味が違うよね!


「あらあら」


 母様はにこにこしている。

 しっかり目撃されてるし!

 アデラも何か知ってそうだったしなぁ。家族にも要注意。気づいたら外堀埋められてそう。

 アデラが戻ってきて、暫く話していると、鐘がなった。


「皆様、残念ながら、お開きの時間です

 本日はお集まりいただき、ありがとうございました」


 ああ、終わりかぁ。

 社交は最初の挨拶しかできなかったけど、楽しかったかな。

 少しずつ帰っていく人達を見ながら、今日を思い出して微笑んだ。

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