たとえ星になっても、君を……。
こんにちは飽那です。まだまだ拙い文章かとも思いますが、読んでいただけると幸いです。
目線が変わるときは☆です。
(ねえ、ナオちゃん、ボクは大丈夫だから)
小さい頃から一緒にいた、ナオちゃん。
ボクたちはいつも一緒に、遊んでかけっこして。
ボクは生まれて間もないころ、ナオちゃんの家に来た。
ナオちゃんはその時2歳だったよね。
大きさは、ボクより少し大きいくらい。
ほとんど変わらなかった。
そんなナオちゃんも、もう高校生になったんだよね。
昔はあんなに小さくて、ボクと同じくらいだったのに。
今ではボクを抱きかかえられるまで、大きくなったね。
ボクは、君に抱えられることが多くなった最初の頃、なんだかむずがゆくて嫌がってたなぁ。
ナオちゃんの成長が、嬉しい。
でももうすぐ、ボクはナオちゃんといられなくなるの。
だから、ナオちゃんの成長が、悲しい。
もっと一緒に居たかった。
でも、ボクの寿命はナオちゃんに遠く及ばない。
ナオちゃんが泣いてくれるの、とっても嬉しい。
それだけ、ボクを大切に思っててくれてるってことでしょ?
離れるの、寂しくて悲しい。
でも、だから、ね?
「わ、ん……わん」
ナオちゃんにはこの言葉、聞こえないけど、どうか泣き止んで?
ボクはずっと、きっと、お星さまになっても、ナオちゃんを見てる。
ボクはナオちゃんに会えたから、幸せだったよ。
ナオちゃん、ほんとに大好き。
遊んでもらったこと、泣いてもやったことも、ボクはずっと忘れない。
明日も、明後日も、来世も、ずっと、ずぅーっと、忘れない。
ボクは、静かに目を閉じて、思う。
大好きだよ、ナオちゃん。
ありがとう、またいつか──
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「ナーチ、死んじゃヤダよ! 逝かないで!」
私の愛犬、ナーチ。
私が2歳の頃にやってきた。
毎日のように遊んで、かけっこして。
昔はナーチのことを抱きかかえられなかったけど、今は軽々と抱きかかえられる。
私のことを、ずっとずっと見守ってくれていた。
その15年間一緒にいたナーチは、寿命を迎えようとしている。
涙が、溢れてくる。
悲しい、寂しい。
ナーチが死んでしまうのは、ひとりになるのは、嫌だ。
逝かないでって、私はそう願う。
ナーチは弱弱しい優しい目して、私のことを見ている。
そんな最後みたいな、悲しい目をしないでよ、もっと悲しくなっちゃうよ。
私の目には涙が溢れて、ナーチの姿もぼやけてしまう。
一緒にかけっこした日、一緒に散歩した日、どれもなにものにも代えがたい、大切な思い出。
私は、ナーチのことが、大好きだ。
犬の寿命は、私から見たら恐ろしいほどに短い。
いつかこんな日が来るのは、分かってたはずだったのに……。
本当にその時が来たら、やっぱり悲しくなってしまう。
もうナーチと一緒に居られないと思うと、寂しい。
まだ感じる、ナーチのぬくもり。
それが、消えようとしているのが分かる。
ぽたぽたと零れ落ちる、ナーチへの思い。
この涙は、大切なナーチへの思いそのもの。
今の私の顔は、涙でぐしょぐしょ、ぐしゃぐしゃ。
最後に見る私の顔がこんなの、嫌かなぁ。
そう思っても、涙を止めることはできない。
その時──
「わ、ん……わん」
ナーチの声が、聞こえた。
泣かないでって、言ってる気がした。
そう、だよね。
こんな顔ばっかり見せてたら、ナーチに笑われちゃうよね。
私、ナーチのこと好きだから、お願い聞いてあげなくちゃ。
私、ナーチのこと好きだから、笑顔で弔ってあげなくちゃ。
ナーチのこと、明日も、明後日も、来世も、ずっと、ずぅーっと、覚えてる。
私、ナーチのこと、ずっと、ずぅーっと、忘れないよ。
だから、ね?
私は、精一杯の笑顔をつくって、心の中で唱える。
大好きだよ、ナーチ。
ありがとう、またいつか──
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
少し前、ボクは犬だった。
ボクは飼い主のナオちゃんのそばで、その息を引き取った。
そしてまたボクは、犬として新しい生を受けていた。
でも、飼い主はナオちゃんじゃない。ナオちゃんじゃないと、嫌だ。
今の飼い主さんの言うことなんて聞きたくなくて、反抗ばかりしていたら、捨てられてしまった。
これで、ナオちゃんを探しに行ける!
ナオちゃんにまた会いたい。
その一心で、見覚えのある街を走り回る。
走ってた時に気付いたんだ。
ここが、ボクが15年間過ごした街だったってことに。
ナオちゃんの家までひとっ走り。
そしたら、ナオちゃんが出てきた。ナオちゃん!
走っていくと、ナオちゃんがボクに気付いてくれる。
「ナーチ?」
泣きそうな、嬉しそうな、そんな声でナオちゃんは言う。
ボクだって気づいてくれたことが嬉しくて、ついついしっぽを振って、鳴き声をあげた。
「わん! わんわん!」
「ほんとに、ナーチだ。ほん、とに……」
ナオちゃんは本格的に泣き出してしまう。
「わんわん?」
そういったとたん、ナオちゃんに抱きしめられる。
ちょ、苦しいって、こちょがしいって! でも、とっても嬉しいな!
また会いたかったから。
ずっと会いたかったから。
ほんとに、来世もナオちゃんと一緒になれた!
嬉しい以外の言葉が見つからない。
ボクは、幸せ者だなぁ。こんなに幸せでもいいのかなぁ。
「会いたかった。会いたかったよぉ。ナーチ……」
ボクにも涙があればいいのになぁ。
泣いているナオちゃんを見ながら、そんなことを思う。
「また一緒に居ようね?」
「わん!」
そしてボクは、ナーチとしてまたナオちゃんの家の一員になれたんだ。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
夜、私は空を見上げる。満天の、星空を。
あの星の中に、ナーチがいるのかな。
つい、そんなことを考える。
あの日から、私の心は空っぽだ。
二年ほど前に、私の愛犬ナーチはこの世を去った。
その時高校生だった私は、今では大学生だ。
ナーチと、また会いたいな。
寂しくてどうにかなってしまいそう。
ある日、なんだかナーチに会えるような気分になって、家の外に出てみた。
少し、辺りを見渡す。
いるなんて、そんなわけないか。
自嘲したくなるほど、馬鹿な考えをしたと思う。
死者はもう戻ってこないんだから。
そうやって、家に入ろうとしたとき、どこからか子犬が飛び出してきた。
「ナーチ?」
それは、何か私の心に懐かしいという思いが込み上げてきたからの言葉だった。
泣きそうな、嬉しそうな、そんな声で私はナーチに訊く。
そう言うと子犬は嬉しそうに、ついついしっぽを振って、鳴き声をあげた。
「わん! わんわん!」
その鳴き声で、ナーチだって確信した。
「ほんとに、ナーチだ。ほん、とに……」
私は本格的に泣き出してしまう。
もう一生会えないと思っていたナーチが、今目の前にいるのだから、それは仕方のないこと。
「わんわん?」
心配そうに、ナーチは私が触れられるほどの距離まで来る。
私は感極まって、おもわずナーチを抱きしめる。
また会いたかったから。
ずっと会いたかったから。
ほんとに、またナーチと一緒になれたんだ。
嬉しい以外の言葉が見つからない。
私は、幸せ者だなぁ。こんなに幸せでもいいのかなぁ。
「会いたかった。会いたかったよぉ。ナーチ……」
嬉しすぎて、幸せすぎて、それ以外の言葉が見当たらない。
やっと会えたんだから、またナーチと一緒にいれるか、訊いてみなくちゃ。
「また一緒に居ようね?」
「わん!」
ナーチが嬉しそうに私に飛びつく。
また、一緒に居られる。
そしてナーチは、また私の家の一員になったんだ。
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「ほら、ナーチ! パス!」
「わん!」
あの再開した日から一か月ほどが過ぎた。
休日は毎回のようにナーチと遊んでいる。
私たち二人とも、再会がとても嬉しいのだ。
きっと私たちは、何度離れ離れになっても、また再開するのだと思う。
そう思わせてくれるほど、大好き。
――…私は、ボクは、いつまでも二人でいたい。
ここまでお読みいただきありがとうございました。誤字脱字があったら教えていただけると嬉しいです。アドバイスや感想も送って下さったら幸いです。