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『ファンタジーだから!』なんて言葉で、俺が納得すると思うか?  作者: まにぃ
3-2 戯 (たわむ) れも、ほどほどに
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今回はまず、探索と話し合いを

「なあ。」


「ん?」


 或る日の夕方。

 昼間は皆忙しいので、バラバラに食事を取っているが。

 夕食はなるべく、一緒に取る様にしていた。

 それぞれの1日の出来事を、皆で共有する為に。

 ユキマリは居酒屋で、フキ内部の状況を。

 アンビーはフキとシャーオを行き交う商人から、街道沿いの情報を。

 ヒィとアーシェからは、不審人物が居ないかなど。

 ジーノは、鍛冶屋へ武器・防具の依頼が急に増えていないか等。

 ああだこうだと言いながら、夕食を取る。

 客間の席順も、随分と変わった。

 3人しか居なかった頃は。

 入り口から奥、屋敷の主人である席にヒィが。

 ヒィへ向かって右側にサフィ、左側にジーノが。

 それぞれ座っていた。

 今は、入り口側へジーノが1つずれ。

 代わりにリディが、子供用の椅子に座っている。

 サフィの隣には順に、アーシェ・ユキマリ・アンビー。

 ユキマリとアンビーは、席順で揉めたが。

 商売絡みで突然駆り出される事の多いアンビーが、仕方無く入り口側へ。

 客人用の席を除くと、空いている椅子は。

 サフィ側に1つ、ジーノ側に3つ。

 この調子だと、これ等も直ぐに埋まるかも。

 ヒィはリディが来てから、そう思う様になっていた。

 それはさておき、冒頭部分の会話は。

 ヒィがサフィに投げ掛けたもの。

 内容は、ゲートに関する事だった。




 これまでヒィが復旧させたゲートは、3つ。

 ソイレン。

 テトロン近くの清めの池に在る、滝の裏。

 そして、フラスタ近郊の元宝物殿。

 どれもフキからは遠い。

 かと言って、毎回方舟を使う訳にも行かない。

 特別な結界を張ってある発着場所が無ければ、降りようが無いから。

 この世界、〔ゼアズ・ワールド〕には。

 人間に都合良く、それ等が配置されている訳では無い。

 あくまで神々が利用する物なので、人間が到達しにくい場所にも当然有る。

 その逆も然りで、人間達が暮らし易い所には滅多に無い。

 神々はなるべく、人間の目を避けている様だ。

 警戒すべき種族として、人間族が認知されていたのかも知れない。

 その危惧きぐの通り、今やあちこちに進出している人間族。

 他の勢力を取り込みつつ、上手くやっている。

 統一通貨の〔マール〕も、その一例。

 魔法を使う素質の有る者は、精霊の気配を感じるので。

 その延長線上で、神々を崇拝する者も居るが。

 大抵は精霊の存在に気付かず、神に対しても『あー、有り難いなあ』位にしか捉えていない。

 畏怖の対象は、現実問題として。

 妖精だったり、獣人だったり。

 神の代わりに降臨する天使に付いては、神だと思い込んでいる内はあがたてまつるが。

 本心では、〔こちらの社会を害する存在〕として見ているのかも。

 相互不可侵、これが一番良いのかも知れない。

 色々と述べたが、つまりは。

 これからもあちこちに行かされるであろう、ヒィにとって。

『フキ近くにゲートは無いものか』、そう考えるのは当然。

 有れば便利だし、何より大勢での移動が可能になる。

 方舟の定員は4名、これは今や少な過ぎる。

 どうせユキマリもアンビーも、そしてリディも。

『付いて行く』と言って聞かない時期が、来る筈だから。

 だから何と無くの形で、聞いてみたのだ。

 この後は、ゲートに付いての。

 ヒィとサフィとの会話。




「お前はここを拠点にして、あちこちウロチョロしてるだろ?」


「ただ飛び回ってる訳じゃ無いわよ。」


「分かってるよ。それで思ったんだよな。何で〔フキを中心にして動いているか〕って。」


「ふーん。それで?」


「何か重要な施設が、この近くに在るんじゃないか?例えば【特別なゲート】とか。」


「何よ、それ。」


「ゲートって、あそこを経由するだろ?〔ヘヴンズ〕だっけ。」


「そうね。」


「ヘヴンズを通らなくても、〔任意のゲートと直結出来る物〕。そんな物が有っても、おかしく無いんじゃないか?サフィの今までの話だとさ。」


「どの辺で、そう思ったの?」


「神様はズボラなんだろ?『移動が面倒臭い』とか何とか。その過程でこしらえられた物が、理由は分からないけど眠っている。違うか?」


「変な所で鋭いわね、あんたって。」


「じゃあ、指摘通りの物が有るのか?」


 そこでサフィは真顔になり、ヒィへ告げる。




「在るわよ。確かに。」




「じゃあ、それを使えば……。」


 身を乗り出して、ヒィは言い掛けるが。

 サフィがそれを制する。


「そこまで考えるなら、〔その先〕も考えなさいよ。馬鹿なの?」


 確かに、ヘヴンズの機能は回復させた。

 しかしそこに建っていたゲートで、そのまま使用出来る物はわずかで。

 ヘヴンズに在るゲートの内、ほとんど朽ち果てている物は。

 下の世界に設置されている側からしか直せない。

 下から開通させないと、使えないのだ。

 そして今使用出来るゲートは、一桁程。

 だからフキ近郊のそれを元に戻した所で、使い物にならないのは明白。

 何十ものゲートを復旧させて、初めて効果が生まれるのだ。

 そこまでサフィに語られると、ぐうの音も出ない。

 がっかりするヒィ。

 その姿を見て、少し満足したのか。

 こうも告げるサフィ。


「〔単なるゲート〕としてなら、使用可能よ。但し……。」


「但し?」


 意味深な物言いに、気になるヒィ。

 サフィは言う。


「【彼女達】が認めてくれたら、ね。」




「ああ。その話は、結構耳にするぜ。」


「本当か?」


 サフィの言った事が信じられなかったので、その翌日ネロウに聞いてみた。

 フキの町の南東方向に、【エルフのたわむれ】と呼ばれる場所が在り。

 エルフ達が遊び場所として使っているので、人間達は近付けないとか。

 幻惑を見せられて、気付かない内に追い出されるのだそうだ。

 余程、邪魔されたくないらしい。

『そうか……』と言った後、ヒィは考え込む。

 一緒に見回りをしているブレアが、『大丈夫?』と顔を覗き込むが。

 ヒィの真剣な顔付きは変わらない。

 あれこれと考えた後、ヒィは決めた様だ。

 一度きちんと会って、話がしたい。

 これからの為に、きっと必要だ。

 考えが纏まった途端、引き締まった表情になったので。

 また何処かに行っちゃうんだ……。

 寂しく思う、ブレア。

 そんな気持ちに気付いたネロウは、【或る事】を思い付いた。

 それは……。




「サフィ。明日、俺に付いて来てくれないか?エルフと話がしたいんだ。」


「ふが?」


 屋敷に戻ると早速、客間で菓子を食べているサフィの下へ歩み寄り。

 お願いするヒィ。

 こいつが居れば、向こうの警戒心も下がるだろう。

 そう思っての事。

 サフィは今食べている分を慌てて飲み込み、ヒィへ言う。


「あんたがあたしに頼み事なんて、珍しいわね。」


「駄目か?」


「別に良いけどねえ……。」


 そうは答えたものの。

『なーに焦ってんのよ、柄にも無く』、そう思ったサフィ。

 慣れて来たのか、リディはジーノが相手をしている。

 少し位は、リディから離れても大丈夫だろう。

 それにエルフとドワーフは、それ程仲が良く無いので。

 ジーノは同行しない。

 代わりに、『リディと留守番する』と言ってくれた。

 だったら……。

『今が絶好の機会』、ヒィにはそう思えた。

 アーシェは、『一度本国に戻れ』と命が有ったので。

 その支度をしている。

 アンビーは書き入れ時なのか、忙しくてここから動けない。

 対して、嬉しそうにユキマリが言う。


「私が居るから大丈夫!えっへん!」


 武闘会の時、人脈を強化する為。

 エルフにも知り合いを作って置いた。

 それが役に立つ、そう思っているらしい。

 サフィも、【或る者】に用が有ったので。

『仕方無いわねー』と言いながら、立ち上がる。

『いやあ、助かるよー』とヒィは珍しく、サフィの手を取りブンブンと握手する。

『私もー!』と、ユキマリも加わる。

 こうして急きょ、〔エルフの戯れ〕探索が決まったのだった。




 翌朝。

 屋敷から出て来る、ヒィ達3人。

『私もこの後つよ』と、アーシェも玄関へ。

 玄関前で見送る、ジーノとリディ。

 リディは、少ししょんぼりしていたが。

『良い子にしててね』と、ヒィに優しく声を掛けられ。

 泣くのを我慢。

『早く帰って来るんだぞー』と悔しそうに言う、アンビーも残して。

 ヒィ達は、屋敷の門をくぐった。

 フキの南西部に在る屋敷から、南東部へと向かう。

 エルフが寄せ付けないからか、そこへ向かう道は細く。

 所々に草も見える。

 そして意外な事に、フキから道への出口には。

 ネロウとブレアが立っていた。


「何で、ここに?」


「あ、ああ。」


 ヒィに話し掛けられて、何と言おうか迷っているネロウ。

 意を決して、ブレアの背中を押しズイッと前へ出す。

 そしてヒィに言う。


「ブレアを連れて行ってやってくれ。これでも、道案内位は出来るぜ。」


「一言余計でしょ!」


 むきになるブレア。

 ヒィは、そんなブレアに尋ねる。


「ほ、本当か?」


 ジッとブレアの顔を見ると、彼女は黙ってコクンと頷く。

 今まで置いてきぼりを食らってたんだ、たまには良いだろ?

 ネロウなりに、気を遣ったのだ。

 ヒィは、サフィとユキマリに尋ねる。


「どうだろう?有り難い提案だけど。」


「あたしは良いわよ。どうせ結果は変わらないもの。」


 どんな意図なのか分からない反応だが、サフィはOKらしい。

 ユキマリも、不服では有るが。


「……良いよ。」


 そう答えるしか無い雰囲気。


「決まりっ!ヒィ、ブレアを頼んだよ。」


「ああ。」


 握手を交わす、ネロウとヒィ。

 その一方で。

 ユキマリとブレアの間には、バチバチとした目線が交錯する。

『自分の方が役に立つ』と主張する様に。

 そんな事を気にする素振りも見せない、マイペースのサフィ。

 1男3女の構成となった一団は、ネロウに見送られながら。

 問題の場所へと向かうのだった。

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