表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
74/1285

ヒィの交渉上手により、無事村内へ

 レギーはソリを降りて、ヒィの下へ。

 その時ヒィが、こう言った。


「これから何が有っても、表情を変えない様に。」


「え?そ、それはちょっと難しいなあ。」


 変な注文をされ、困惑するレギーに。

 ヒィが一言、アドバイスを。


「それじゃあ、こうしよう。君は最初から、困った顔付きで。これなら、脅かされたりしてもしのげるだろう?」


「分かりました。やってみます。」


 レギーは返事をし、『こうですか?』としかめっ面に成ってみる。

『上出来だよ』とヒィが言うと、レギーは嬉しそう。

『油断しない、崩れてるよ』と指摘され、慌てて戻す。

 取り敢えず、気持ちの準備は出来た。

 ヒィの左側にピタリと付きながら、レギーはモンシドの街道口へと向かった。




「ん?何だ、お前は?」


 街道口へ着いて直ぐ、屈強な傭兵らしき大男に絡まれるヒィ達。

 平然とした顔で、ヒィは告げる。


「〔セージさん〕と言う方に頼まれまして、宝物殿の怪物討伐へ参加しに来ました。宜しくお願いします。」


「セージ?誰だそりゃ?」


 勘繰る大男。

 身長は185センチ程だろうか、ヒィを見下す様な目付き。

『困りましたね』と呟いた後、ヒィは続ける。


「あなた方も、セージさんから依頼を受けたのでは無いのですか?てっきりお仲間だと……。」


「俺達は、あそこに居るお方に雇われたんだ。向こうに見えるだろ?場違いな格好をした人間が。」


 クイと村の中央付近を指差して、大男が言う。

 確かに、狩りの格好をしている連中の中に。

 豪華絢爛な衣装を身に纏った男が見える。

 年は30前だろうか、何処かの貴族の様な装い。

 装飾模様がキラキラと光って、鬱陶しい事この上ない。

 それは連中にあれこれ指示を出しているらしく、こちらが目に入っていない様だ。

 そこでヒィは、大男に願い出る。


「セージさんのお知り合いかも知れません。お取り次ぎ願いませんか?」


「知り合いねえ。俺達にはそんな事、どうでも良いけどよ。」


『関係無いと分かったら、とっとと帰れよ』とヒィ達に言いながら。

 大男は別の男を呼び、一応連絡してくれた。

 その間、ずっと大男に睨まれているレギー。

 子供がこんな所へ足を運ぶ事に、疑問を持ったのだろう。

 当然と言えば当然。

 おどおどした態度、しかめっ面を変えず。

 何とか耐え抜こうとするレギー。

 それが反って、信憑性を持たせ。

『ふん、臆病なガキが』と鼻であしらわれて、大男は村の方を見る。

 少しの間の後、伝令役の男が戻って来る。

 そして大男へ耳打ちすると、別の場所へ行ってしまった。

 大男の顔からは、少しだけ威圧の気配が収まっている。

 どうやら、ヒィの狙い通りだった様だ。

 大男が告げる。


「あのお方がお呼びだとよ。本当に関係者だったんだな、お前等。」


「お取り次ぎ、感謝します。共に頑張りましょう。」


 大男に一礼して、その横を抜けるヒィ。

 それに続くレギー。

 第1関門は、何とか突破。

 問題は、これから。

 気を引き締めて、ヒィとレギーは村の中を進んで行った。




「君達が、セージ殿から依頼を受けたと言う……。」


「はい。これをご覧下さい。」


 そう言ってヒィは、懐から契約書を取り出す。

 男はそれを受け取ると、サインの筆跡をじっくりと眺め。

 一度軽く頷くと、契約書をヒィへ返す。


「どうやら間違い無い様だ。歓迎するよ。」


「ありがとうございます。」


 ヒィは頭を下げる。

 レギーも合わせてお辞儀をする。

 男はレギーの顔を覗き込み、ポツリと。


「何処かで見た事が……ああ、エリメン卿の御子息では?」


「父を御存じで?」


 レギーが言葉を返す。

 男は言う。


「何度か伺って、多少面識が有る程度さ。君の姿もその時、屋敷で見かけたよ。」


「そ、そうですか……。」


 チラリと、ヒィの方に目線をやるレギー。

 それにウィンクで返すヒィ。

『困った顔をまだ続けろ』と言うサイン。

 なので顔を緩ませる事はせず、返事もそれだけで留めた。

 ヒィが男に言う。


「『目の前で討伐を見物したい』と聞かないものですから。ご容赦を。」


「構わないよ。これだけの戦力が居れば、大丈夫だろう。」


 何百人もの男達を、ぐるりと手で指しながら。

 男は言う。

 ヒィは続ける。


「仲間が村の外で待機しているのですが、村内に入れても構いませんでしょうか?」


「おお!それは心強い。セージ殿が直接見定めた者達だ、さぞ強いのだろう。」


「恐れ入ります。」


 ヒィがそう返答すると。

 男は周りの者へ、ソリを中へ導く様命ずる。

 そして改まって、男は自己紹介する。


「私は【ダイエン=メリド=グッサーラ】。【メリヤード国】の貴族で、ここの区長とは友好関係に有る者だ。私も頼まれて、宝物殿の怪物とやらを狩りに来たのだよ。」


「『ヒィ』と申します。宜しくお願いします。」


「相分かった。共に、存分に暴れようぞ。」


「はっ!」


 一礼して、ダイエンの下から下がるヒィ。

 ペコリとお辞儀をして、ヒィの後を追い駆けるレギー。

 その後ろ姿を見て、ダイエンは不敵な笑みを浮かべていた。




 ソリは丁度、街道口から右へと折れ。

 大きめの小屋へと進められた所だった。

『ここを使えとの事だ』と案内して来た男に言われ、ジーノ達は早速荷を下ろし始める。

 そこへヒィ達が戻って来る。

 案内人2人は、ソリとキムンカを別の場所へ輸送。

 その間に、残った人を集め。

 ヒィが告げる。


「ジーノとアーシェ、後ミカは。素性を隠す事。良いね?」


「何か面倒臭いなあ。でも兄貴がそう言うなら……。」


「承知した。ヒィに従おう。」


 ジーノとアーシェは、ヒィの言葉から何かを感じ取った様だ。

 対してミカは、『詰まんなーい』と繰り返すばかり。

 レギーとクリスを連れて、村内の見物に出かけた。

 肝っ玉が据わっていると言うか、怖い物無しと言うか。

 平然と歩き回るので、連中の方が困惑している。

『邪魔だ!退いてろ!』と怒鳴られても、一向に動じない。

 天使としてのプライドだろうか、人間如きにはひるまない。

 その後ろを歩きながら、クリスは必死に辺りを観察する。

『少しでも情報が欲しい』、そんな目つき。

 それが少し不思議だったレギーは、クリスとアーシェとのやり取りを知らない。

 あの時、クリスは何を思ったのだろうか?




 エドワーとヘレンは、再び荷降ろしへと戻った。

 ジーノも戻ろうとした時、ヒィに止められる。


「ジーノ、アーシェ。少し話が有る。」


 ヒィがそう言うので。

 何だ何だ?

 村の隅っこで3人が固まり、ひそひそ話を。

 これは、ダイエンとのやり取りから得られた情報を。

 3人で共有する為。

 これは、レギーやクリス達に知られてはならない事項。

 そして、ミカにも。

 まあ、サフィの使いであるミカは。

 こちらが隠しても、既に知っているだろうが。

 それでも敢えて告げない、そこで明確に線引きする。

 ミカはまだ、信用に足る者では無い。

 その意思表示として。

 アーシェとジーノは、ヒィの話を聞いて了承する。

 そしてこれから立ち位置を、もう一度確認する。

 誰が敵で、誰が味方か。

 明確に判別出来無いこの状況で、どう動くか。

 それを決め、3人は小屋へと戻るのだった。




 やっと村へ辿り着き、拠点も確保したヒィ達。

 どうやら村に集まった連中は明日、討伐へと動き出すらしい。

 その時には……。

 そこで考えるのを止め、ヒィ達一行は眠りに就くのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ