表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『ファンタジーだから!』なんて言葉で、俺が納得すると思うか?  作者: まにぃ
8-1 ショートショート? ストーリーズ
374/1285

だからこそ、『守りたい』と思う

 〔負の泉〕を消し去り、〔袋小路の森〕を後にして。

 フキの屋敷へ戻ってから、数日間。

 ヒィは、あれこれと悩んでいた。

 自分には、荷が重過ぎる。

 だからと言って、ここまで来た以上。

 人任せにする訳にも行かない。

 いずれはここを離れ、こちらから打って出る必要も有るだろう。

 その時は。

 ネロウやブレア、そしてこの町の人達とも。

 お別れする事になるかも知れない。

 散々世話になっておいて、恩返しも出来ないまま去るのは。

 若干の心苦しさを覚える。

 一体、どうすれば……。

 悩んでいる所へ、ジーノが帰って来た。

 小難しい顔をしているヒィへ、陽気に話し掛ける。


「よう、兄貴。何か辛気しんき臭い顔をしてんな。」


「まあな。」


 自分への反応が薄い、そう感じたジーノは。

 ヒィの正面へ回り込み、サフィが時々る様に。

 その顔を両手で挟み込み、グニグニとり回す。


「にゃ、にゃにを……。」


 相手がジーノなので、それ程抵抗は見せないが。

 嫌がる素振りのヒィ。

 その時ジーノから発せられた、『一人で抱え込む癖、直そうぜ!』との言葉で。

 ヒィはハッとする。

 そうだ、俺には仲間が居るじゃないか。

 俺独りで何もかも背負い込む事は無い、それは仲間を信頼していないのと同義だから。

 苦しい時も、嬉しい時も。

 分かち合う、それこそが仲間。

 ジーノがそれを思い出させてくれた。

 ああ、何てあったかいんだ……。

 ヒィは心の底から、そう思う。

 するとジーノは、びっくりして手を引っ込める。


「兄貴!?」


「え……?」


 気付かない内に、ヒィの目からは。

 しずくがポロポロ。


「い、痛かったのかい!?済まねえ!」


 謝るジーノ、対してヒィは『違う、違うんだ』と答える。

 これはきっと、ホッとした涙。

 こんなにも俺を気遣ってくれる人達が居る事への、安心と感謝の。

 そう思うと、ヒィの涙は止まらなかった。

 顔は、笑顔で満ちあふれていたが。

 そうとは気付かず、ただオロオロするジーノ。

 そこへ、ユキマリも帰って来た。

 ヒィの様子を見るなり、『こらっ!ジーノ!何やってんの!』と。

 両手を振り上げ、バタバタとジーノを追い回す。

『オラは悪くねえーっ!』と、ドテドテと逃げ回るジーノ。

 その滑稽さに、ヒィは。

 心が救われた気がしたのだった。




 それからヒィは、のんびりとした日々を過ごしていた。

 アーシェは、報告書関連で。

 〔コライダム〕から、しばらくは戻らない。

 サフィは、そんなアーシェの下へ。

『差し入れして来るー』と言いながら、ちょっかいを掛けに行っているらしい。

 お陰で屋敷内は、静かなものだ。

 アンビーとジーノは、仕事が順調で忙しい様だ。

 リディは遊びに、リュードは鍛錬を積みに。

 それぞれ、町の人達の下へ足を運んでいる。

 竜人にとって、人間など。

 取るに足りない存在だろうが。

 たまに、予想を上回る力を発揮するので。

『人間も案外、あなどれない存在だ』と考える様になっていたリュードは。

 その秘密を探っているらしい。

 ユキマリは、居酒屋で欠かせない存在と成り。

 ヘンメルも、屋敷内で一通り家事をこなしては。

 商店街へ買い出しに出掛ける。

 店の主人達とは、すっかりと打ち解けていた。

 愛想の悪いエルフは、人間と仲良くするには不向きな性格だが。

 ヘンメルはそうでは無い、ヒィを通して学んだから。

 〔繋がり〕・〔絆〕、そう言った物は。

 必ず、自分自身を助ける事になる。

 人間のコミュニケーションの高さが、それを証明している。

 リュードとは違った形で、人間の強さを認めているのだ。




 ヒィは、ネロウ・ブレアと町を見回りながら。

 ポツリと呟く。


「やっぱり、平和が一番だな。」


「おっ、いっちょ前な事を言う様になったねぇ。」


 揶揄からかう様に、ヒィへ言うネロウ。

 ブレアはネロウに、『あんたは逆に子供みたいね、そんな事を言うなんて』と呆れ顔。

 こんな軽口を叩ける程、穏やかな時が流れる町。

 うん、平和だ。

 つくづくそう思うヒィ。

 改めて、『この世界を守りたい』と強く願う。

 その為に、自分が出来る事。

 それが何か、見えている様で見えていない気がする。

 事有るごとに、見つめ直しているつもりだった。

 それがやはり、甘いのだろうか?

 深い所まで、思いを巡らせていないんじゃないか?

 頭の中を、色々な感情がぎるも。

 ネロウに向けられた、ブレアの一言で。

『今は考えるべき内容じゃない』と、ヒィは思った。

 その言葉とは。


「自警団員としての自覚が有るの?さっきから、〔心ここに在らず〕みたいな感じに見えるけど。」




 大規模上奏会が終わり、アーシェがヒィの屋敷へと帰還。

 その時から加わった、天使の〔ゼル〕。

 特に用事の無い時は、ポコッと姿を現している。

 ただ、フワフワ浮いていると怪しまれるので。

 アーシェから、『子供の格好をする様に』とのお達しが出た。

 要するに。

 人前では、ゼルの事を〔リディと同じ、子供扱いにしよう〕と言うのだ。

 ここで天使としてのプライドが炸裂するかと思ったら、ゼルは喜んでそれに応じる。

『子供として振る舞ってみたい』と、常々思っていたらしい。

 人間達のリアクションが面白いから、一度やってみ?

 別の天使から、そう吹き込まれていた様だ。

 何故、面白い事になるのか?

 それは、アーシェが悩んでいる事からも明らかだった。

 アーシェがヒィに、その点に付いて相談している。


「なあ。ゼルは、何方どちらにしておいた方が良いと思う?」


「『何方』って?」


 不思議そうなヒィ。

 アーシェが続ける。


「〔性別〕だ。天使は、性別が無いだろう?それで困っているんだ。」


「あー、なるほど。」


 リディは女の子だから、そのまま行ける。

 ドワーフは皆、パッと見は男なので。

 ドワーフの女性には悪いが。

 ジーノも、性別の区別を明確にしなくて済む。

 しかしゼルは、男とも女とも取れる姿をしている。

 そこでアーシェは、困っているのだ。

 傍に置くからには、人の目に晒される事を考慮しなければならない。

 アーシェとゼルとの関係性を問う人も、出て来るだろう。

 その時の対応として、適切なのは?

 そこを悩んでいるらしい。

 ヒィはアーシェに、こうアドバイスする。


「アーシェは、どっちが都合が良いんだ?それにると思うよ。」


「それは、まあ……。」


 そこまで言って、再びアーシェが悩み出す。

 どうせ、説明する際には。

 〔弟〕か〔妹〕にする他無い。

 ぶっちゃけアーシェも、どっちでも良いのだ。

 自分で決められないから、誰かに背中を押して欲しかっただけ。

 考えに考えた挙句、アーシェは決めた。

 早速、ゼルを呼び出す。

『なぁにぃ?』と、ふよふよ飛んで来たゼルへ。

 アーシェは命ずる。


「人様に説明する時は、〔妹〕って事にするから。」


「何で?」


 一応尋ねるゼル、余り興味は無かったらしい。

 アーシェは言う。


「同性にしておいた方が、同じ部屋で寝泊まり出来易くなるだろう?それともお前だけ、別の部屋で寝るか?」


「それは嫌っ!」


 即答するゼル。

 折角美人付きとなったのに、それが堪能出来ないのは。

 〔楽しみが減る〕と言う事。

 それは我慢ならない、だからゼルは。

 アーシェの言う通り、妹として振る舞う事にした。

 そこでやっと、ゼルは。

『リアクションが面白いから』の意味が、分かった気がした。

 もし旅に出る事が有ったら、ちょっと悪戯いたずらしてやろう。

 男扱いされたら、女として。

 女扱いされたら、男として。

 それぞれ、対応してやろう。

 それはそれで面白い、楽しみだなあ。

 ゼルの考えが、アーシェには丸分かりだったらしい。

 こんな言葉で、おきゅうえられた。


「迷惑を掛ける様なら。サフィに言って、別の天使に替えて貰うからな?良いな?」


「はーい。」


 生返事のゼル、その頭をゴツンと叩くアーシェ。

 ゼルの顔を、ギロッとにらみながら。


「わ・か・っ・た・か?」


「はいーーーっ!」


 目付きが怖かったのか、ピューッと逃げる様にその場を去るゼル。

 ヒィがアーシェに言う。


「自ら苦労をしょい込む格好になったな。」


「それは言わんでくれ……。」


『サフィへの抑止力となる』と思っていたのに、自分が振り回される事になろうとは。

 頭を抱える、アーシェなのだった。




 こうして、平和な時が。

 短い時間ながら、ヒィ達の下へ訪れた。

 しかし世界は、ヒィの事を放って置く筈も無く。

 この後……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ