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ミギィ側も、後始末開始

「俺を自慢したかった!? 誰に!? 何で!?」


 サラの言葉にドキッとし、驚きを隠せないヒダリィ。

『わーっ!』と叫びながら、ヒダリィの後ろで。

 顔を両手で隠して、しゃがみ込むサフィ。

『恥ずかしがらなくても良いのに』との、サラの追い打ちで。

 叫び声が増して行くサフィ。

 その顔は、炎の様に真っ赤。

 ユキマリが、サラに尋ねる。


「ヒダリィがびっくりするのは当然よ。どう言う事?」


『それはね。ミギィの側に居る仲間達が、良ーく知ってる筈だよ。そっちに聞きなよ。』




 サラに名指しされた、ミギィ側。

 ジョーエンの町中まちなかは、怪物の暴れ回った痕跡が色濃く残り。

 シジュウカラ科の連続爆破も相まって、建物や道がボロボロだった。

 幸いにも、〔煌めきの湯〕自体には。

 大きな損傷は無かった。

 温泉も破壊される事無く、湯を淡々とたたえている。

 しかし番台や脱衣所、そして外側の通路は。

 修理が必要な破損が、かなり有った。

 こんな事態に、ジョーエンの住民はへこむと思いきや。

 逆に、『もっと良い街に変えてやろう』と意気込んでいた。

 そう、ここは元々何も無かったのだ。

 何だかんだでここまで大きくなったが、使い勝手が良いとは言えなかった。

 資材置き場と、所々に湧き上がった温泉を起点として。

 建物が立ち並んで行ったので。

 観光地として、魅力が有るとまでは言い切れない。

 だったらこれを契機に、新たな魅力を付け加えよう。

 住民は至って、前向きだった。

 だからこそ、ここまで発展したのかも知れない。




 こちらで攻撃を仕掛けていたシジュウカラ科は、竜人達の手によって全員捕らえられた。

 連中の処置を話し合う為、ミギィ達は。

 コミュ〔ケッセラ〕のあるじが居る、倉庫街へと出向いた。

 竜人達も、それに同行。

 プライドが高く、滅多に他を認めない竜人達だったが。

 ミギィに対しては、畏敬の念を抱いていた。

 それもそうだ、あれだけ強力で派手な範囲攻撃を。

 目の前で、まざまざと見せつけられては。

 おそれないのが無理だろう。

 それ程、ミギィの繰り出した〔裁きのいかづち〕は。

 見ている者を圧倒した。

 その中でも、リュードは。

 以前ミギィに対して働いた行為を、反省すると共に。

 道理でかなわない訳だ……。

 ミギィの力に、輝かしい物を見出し。

 不遜ふそんにも、『自分も手に入れたい』と考え始めていた。




 ミギィ達とシジュウカラ科との戦いが始まって。

 ミギィとラピスが、ジーノのこしらえた橋を渡った後。

 残党が煌めきの湯内に居ない事を確認したアーシェが、直ぐに警備兵を率いて。

 アンビーが案内する観光客等を、しっかりと警護していた。

 辺りの気配を探りながら、客達を連れて。

 アンビーは、安全な場所へと向かったのだが。

『一番安全だ』と判断したのが、意外にも倉庫街だった。

 アンビーと客達を、倉庫街へと届けた後。

 アーシェはジーノを伴って、警備兵達と爆発現場へと急行。

 土の精霊と会話しながら、ジーノが正確な場所を把握し。

 アーシェに伝え、警備兵達に指示する。

 連携の取れた行動は、町への被害を最小限に食い止めた。

 それでも、怪物の暴れた辺りはどうしようも無かったが。

 と言う訳で、煌めきの湯は当分休業。

 戦いの後。

 倉庫街へ避難していた観光客は、泊まっていた温泉宿へと戻り。

 ジーノとアーシェは、〔客達の避難誘導〕の任を解かれたアンビーと合流した後。

 ミギィとラピスの下へと走った。

 3人は、胸騒ぎがしていた。

 あのミギィの状態は、人外じみている。

 何か、恐ろしい事になっているのではないか?

 そう危惧したのだ。

 傍へ辿り着いた時、ウルオートとその部下が既に来ていた。

『うーん』と少し苦しい声を上げているが、ラピスも無事。

 ミギィと言えば、空に浮かんでいたあのギラギラした光景とは全くかけ離れていて。

 至って穏やかな顔、身体も旅立った時と変わらない姿。

 ホッとする一方、『あれは何だったのか?』と思わざるを得なかった。

 しかし仲間は、問いただす事は無い。

 彼自身の口から語られるまで待とう、それが仲間だから。

 そう考えていた。




 こうして、ミギィとアーシェ達が再開した後。

 一団となって、倉庫街へと向かっていたのだ。

 アーシェの話では、『倉庫街にコミュの主が居る』と言う事だったので。

 状況の報告も兼ねて。

 ジョーエン開発の経緯を辿れば、倉庫街が行政の中心なのは一目りょう然。

 物流の中心で指図をするのが、ここを治めるのに一番適切だから。

 元々は資材置き場を取り仕切る立場だったのが、コミュの仕切りまで発展拡大した。

 ただそれだけの事。

 だから主は、商人の顔も持っている。

 アーシェから、そう告げられたミギィ。

 となると、相手は相当したたかだな。

 心を引き締めて接しないと。

 決意を新たにするミギィは、ジーノからするととても頼もしかった。

『流石兄貴、付いて行き甲斐が有るぜ!』と大喜び。

 一方アンビーも、ミギィを頼りにしていた。

 主が商人なら、有力者との直接交渉と同義。

 あたしが有利になる様な売買契約を結んで、待っている部下達に良い報告をしたい。

 商売っ気丸出しだった。

 意外とアンビーは、こちらの方が向いているのかも知れない。

 ネコ族は、気紛きまぐれだが。

 獲物を見付けたらしつこく食い下がる気概も、持ち合わせていたから。




「賢者様ー!」

「ありがとうございます!」


 すれ違う人達が、歓声を上げながらミギィに手を振る。

 恐縮しながら、手を振り返すミギィ。

『そうした方が良いよ』と、アンビーから忠告されていたから。

 あの出来事で、すっかり皆は。

 ミギィを『賢者だ』と信じ込んだらしい。

 あんな芸当、普通の者には出来ない。

 賢者ならでは、そう考えるのも無理は無い。

 そんな意識から、早く解放されたい。

 こう言ったミギィの願いも虚しく、当分はこんな扱いが続きそうだった。




「あんたが、偉そうに胸を張ってどうすんの?」


「良いじゃんかよー。少し位。」


「呆れたっ。あれはミギィがやったのよ。あんたは土いじりだけでしょ?」


「土弄り言うな!すっごく役に立っただろ!」


「そうかしら。薄暗い空間にずーーーーっと居た気がするけど。」


「何をーーーっ!」


 ジーノとアンビーが言い争っている。

 それを、『いい加減にしないか、彼が困っているぞ』といさめるアーシェ。

 ミギィはジーノに言う。


「実際、かなり助けられてるのは事実だからさ。ですよね、ラピスさん?」


「え、ええ。」


 急に話を振られて、そう答えるしか無いラピス。

『えへへー』と照れるジーノ、『調子に乗らないの!』と怒るアンビー。

 こんな穏やかなやり取りを見ていると、さっきまでの荒々しさが嘘の様。

 ラピスは考える。

 悪魔のもとを植え付けられ、乗っ取られまいと格闘しながらも。

 ミギィがあの力を発動した時、しっかとその目で見ていた。

 あれが、〔過ぎたる力〕。

 師匠が普段から、口が酸っぱくなる程言っていた……。

 魔法の技を磨くだけでは、やっぱり駄目なんだなあ。

 使い手としての心構えも鍛えないと。

 そう思わせる、あの時と今のミギィのギャップ。

 彼は自分の力を恐れている、だからこそ無暗むやみに行使したりしない。

 彼を通じて、私に教えたかったのかも知れない。

 今となれば、これも師匠が与えた試練なのかも。

 そこまで考えてしまう、ラピスだった。




 畳んでいた出店でみせも、再び開かれる。

 商魂たくましいとは、この事。

 出店が立ち並ぶ道を通り抜け、倉庫街へと出る。

 ここは全く、被害が出なかったらしい。

 いつも通り、活気に満ちあふれている。

 寧ろ、いつも以上にも感じる。

 町の再建の為に、沢山の物資が必要で。

 運び込んだ傍から、飛ぶ様に売れるだろうから。

 その中を歩く一団は、やはり異質。

 特に、グターッとなってグルグル巻きにされているシジュウカラ科は。

 人々から罵声が飛んで来ても、おかしくは無かったが。

 関心が無いのか、それとも目の前の商売が優先なのか。

 罵詈ばり雑言ぞうごんたぐいは、ほとんど無かった。

 竜人達は、警備兵の指示で。

 倉庫街の端に在る、警備兵の屯所とんしょへと向かう。

 ここに在る牢屋は、かなり頑丈で。

 一度放り込まれると、脱走は不可。

 泥棒を取り逃がさない様、強固な造りとなっているのだ。

 だからここへ収容すれば、一安心。

 後は、仲間が助けに来ない様見張りを強化するだけ。

『ここは任せる』と部下へ命じ、ウルオートはミギィ達に同行する。

 その後に、フォウルも続く。

 ちゃっかりと、リュードも付いて来ていた。

 追い返す道理は無い、何よりも以前とは違った目付きをしている。

 ミギィの姿を追わせれば、良い方向へ転がるだろう。

 ウルオートはそう考え、リュードの帯同を敢えて許していた。




 ミギィ達4人とウルオート達3人、そしてラピスは。

 警備兵のトップに案内され、とある屋敷まで来た。

 アーシェは警備兵を動かす為、許可を貰いに一度訪れていた。

 他の者は、初めてなので。

 その造りに驚嘆する。

 外見は派手では無い、セキュリティ重視の頑強さ。

 木製の柱が、固い土製の基礎に乗り。

 基礎の上に赤レンガが、柱同士の隙間を埋める様に積み上げられている。

 権力者が住まう屋敷にしては、かなりゴツい印象を受ける。

 しかし窓からチラリを見える、内部の装飾は。

 相当豪華らしい。

 キラリと光る物が、幾つも見えた。

 商人としての権勢を誇り、上の立場で相手と契約を進める為の仕掛けに思える。

 かなりの商売上手と見受けられた。

 交渉事も巧みだろう、それならお手並み拝見だ。

 ミギィの胸は、場にそぐわない程高まっていた。

 軽やかな話術を、目の前で披露して貰い。

 自分も会得しようと、無意識に考えていたのだろう。

 そんなに上手く行くとは、到底思えないが。




 そんなこんなで、屋敷を取り囲む金属製の柵に沿って。

 周囲をグルリと回り込み、門の前へと到着。

 門番に、警備兵のトップが話し掛け。

 門の扉が開かれる。

 ここからは、アーシェが先頭となり。

 堂々と、敷地内へと進んで行く。

 こんな場所への訪問は、手慣れたものだ。

『流石、貴族』と言う他無い。

 そして玄関の前まで来た、ミギィ達。

 中には、どんな人物が待っているのだろうか?

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