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想い、交錯しながら

 竜人コミュ〔エンライ〕内に在る、〔クラウ〕の村。

 そこに帰還したウルオートは、早速輝竜帝に報告する。

 そして、意見を上奏する。


「私達にとっても、得の有る物だと考えますが。」


「我もそう思う。良きに計らえ。」


「承知しました。では。」


 ウルオートは、輝竜帝の前から下がる。

『ふう』とため息を付く輝竜帝、そこへ。

 〔玉間ぎょくま〕の天井から、声が。


 《元気が無いな。》


「気苦労が絶えませぬ故。」


 《お互いにな。》


「その様ですな。」


 《こちらもせい々、〔小娘〕の思惑に乗ってやろうぞ。》


「一体何者なのです?あなたが〔小娘〕とお呼びになる存在は?」


 《気にせずとも良い。と、以前なら言っただろうな。》


 そう告げた後、天井からの声は。

 輝竜帝に答える。


 《〔女神〕と名乗っているらしい。何ともおこがましい事よ。》


 まるで、『そうでは無い』と言いた気な口振りだったが。

 輝竜帝は、それ以上聞かなかった。

 踏み込んではいけない領域の様に、自分には感じられたから。




「ねえ。ヒィって、一体何処に向かってると思う?」


「何だ、急に?」


 風呂に浸かりながら、アーシェと話しているアンビー。

 ちょっとずつながら、近付いていると思ってたのに。

 また、引き離されそうになっている。

 どうやらアンビーは、そう思っているらしい。

 不安感を打ち消す様に、アーシェに心のうちを話しているのだ。


「分からんよ、私にも。」


「本人もその辺、分かんないっぽいもんねー。」


「それに気付いてやれる、それでも十分だと思うが?」


「嫌よ。あたしは、あんたの様にドライじゃ無いの。」


「割り切っているつもりは無いがなあ。」


「もっと近付きたいの。それって贅沢かな?」


「いや。もっともな感情ではないか?」


「そう……よね。」


 うんうん頷くアンビー。

 気が済んだらしい、スッキリした顔になっている。

 そこに悪戯いたずら心が湧いたのだろうか。

 アンビーは、アーシェにポツリと。


「ヒィの事、取っちゃうぞ?」


「な!なな!何を言い出すんだ!」


 ねっとり口調で、上目遣いに。

 アーシェへ言葉を投げ掛ける、アンビー。

 急な発言に、一瞬ひるむアーシェ。

『あたし達みたいに、素直になったら良いのにー』と、尚も突っ掛かる。

『私には、騎士としての役目がだなぁ!』と、つい大声になるアーシェ。

 2人に気を使って、カワセミ科は風呂場に居ないとは言え。

 変な事を叫んでしまった。

 誰も聞いていないだろうな?

 慎重に辺りをうかがい、その様子が無いと分かると。

 ホッとするアーシェ。

 オロオロする姿が面白いのか、ガバッと肩を組んで。

 顔をズイッと近付けると、ニカッと笑うアンビー。

『うっ!』と、迫り来る笑顔に気圧けおされるアーシェ。

『ん?ん?』とアンビーが、にじり寄って来るのを。

『くぬぅ』と両手で押して、何とかかわすと。

『先に上がってるからなー!』と、アーシェはスタコラと逃げてしまった。

 詰まんないのー。

 そう思いながらも。

 アーシェの心の隅に置き去りとなっている、小さな感情を。

 どうしようか考える、アンビーだった。




 今日も、昨日と同じく。

 ミギィ達は、4人1部屋で雑魚寝。

 昨日程の緊張は無いが、それでもドキドキしているアーシェ。

 この感情は、何処から湧いて来るのだろう。

 そう思いながらも、一方では。

 騎士として、監査人として。

 ミギィの補佐を、立派に務めなければ。

 毅然とした心構えで乗り越えようとする、アーシェ。

 アンビーは、スッキリした顔付きで。

 ぐっすりと寝ている。

 明日も楽しみだなあ、とでも思っているのだろうか。

 ジーノは、何も考えていない風。

 スヤスヤと就寝。

 ミギィは、寝付けないと思いきや。

 今回の目標が明確になったからか、逆に安心して。

 眠り込んでいるらしい。

 こうして四者よんしゃ四様よんよう、思いを抱えながら。

 明日へ備えるのだった。




 ラピスはジッと、横穴の入り口から。

 森の方を見つめていた。

 色々と思う所は有るのだろう。

 それでも、師匠の思いに応えたい。

 森を眺め、やぐらを眺め。

 遠くに広がるけい流を眺める。

 静かに時が過ぎる、こんな故郷が好き。

 だから私は、出来る事をしよう。

 そう、心に誓い。

 ラピスは眠りに就く為、横穴の奥へと引っ込んだ。




 翌日、昼頃。

 オイラスからの策を聞く為、再度ネフライの横穴へと集まる関係者達。

 ウルオートは、輝竜帝の〔賛成の意思〕を伝える。

 ネフライも、朝の内に長老達へ報告を済ませ。

 セセラ内はいつも通りに過ごす様、努める事となった。

 以上の状況を踏まえ。

 具体的な話をし出す、サラ。

 伝言ゲームの様に、オイラスの言葉を逐一伝える。

 これなら、いっその事オイラスがここへ来れば良いのに。

 二度手間に感じたアンビーは、そう思った。

 それでも、話は進む。

 それぞれの役割を、しかと自覚するミギィ達。

 一通り話し合いが終わると、ウルオートはエンライへと戻る。

 ミギィ達は、旅支度を整えに仮宿へ。

 ラピスは修行の為、森に向かう準備を。

 それぞれ散って、それぞれ万全の体制を。

 そこから、オイラスの策は始まった。




 昼を少し過ぎた頃。

 ラピスは、森近くの尾根へと飛んで行く。

 これは、通常通り。

 そしてミギィ達も、森へと向かう。

 こちらは、片手に。

 〔白く輝く鉱石〕を中に詰め込んだ、ランタンを掲げて。

 ミギィ達は、通常とは異なるルートで。

 森を目指す。

 それは……。

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