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動物達は取り巻き、少年は唐突に絡む

 〔モウレン〕を出発した、サフィとユキマリ。

 順調に、森の中を飛んで行く。

 気持ちが大分やわらいだ影響で、ヤマガラ科のスピードが上がっている様だ。

 これまでの遅れを取り戻そうと、張り切っているのかも知れない。

 ヒダリィが離脱した事で、2人余ったヤマガラ科だったが。

 サフィとユキマリの後ろに付いて。

 気持ち良く座り続けられる様、背中を支えている。

 お陰で、無駄な力を入れずに済んだ2人は。

 快調に、〔セキブ〕の中を進むのだった。




 一方、ヒダリィ達の後ろには。

 何故か動物達が、ぞろぞろと付いて来ていた。

 楽しそうに話している、リディとヒースの間に混ざりたいのか。

 それとも。

 可愛らしいリディと仲睦まじいヒースが、羨ましかったのか。

 いずれにせよ、こちらに危害を加える様子は無い。

 精霊達も、動物達に対しては気にしない素振り。

 初めは、モルモットらしき物が1匹だけだった。

 しかし進むにつれ、リスだのモモンガだの。

 小動物が集まり始め。

 それから、タヌキやキツネの様な物達が加わり。

 最後には、クマやシカなどの大型動物まで。

 普段ならそこで、食物連鎖の戦いが繰り広げられるのだろうが。

 精霊達が、ヒダリィ達の周りを。

 楽しそうに、クルクル飛び回っている事も有って。

 争い事は起きなかった。

 後ろを気にするヒダリィ、そこでリディは。

 ヒダリィに申し出る。


「この子達と、ちょっと遊んで良いかな?」


 リディが相手をする事で満足して、ヒダリィから離れてくれると思ったのだろう。

『お兄ちゃんの邪魔にはなりたくない』と言う、健気けなげな思いからの発想。

 ヒダリィはこころよく、『良いよ』と言ってあげた。

 嬉しそうな顔をするリディ、動物達の方へ歩いて行くと。

 わあっと周りに、動物達が集まって来た。

 笑い声を上げながら、リディは動物達と話をしている。

 時折、身振り手振りで語りながら。

 その様子を少し離れた所から見ている、ヒダリィとヒース。

『クゥ?』と、ヒダリィの手のひらで鳴くヒース。

 見上げた先、リディ達を見つめるヒダリィの視線が。

 親の様に優しそうだったから。




 1時間程経っただろうか。

 ようやく、動物達は満足し。

 自分達の暮らす場所へと戻って行った。

 結局動物達は何がしたかったのか、ヒダリィには分からなかった。

 みんなで鬼ごっこの様な事をしたり、リディと色々話し込んだり。

 厳しい生存競争の合間に現れた、一時ひとときの安らぎ。

 案外、それを味わいたかっただけなのかも知れない。

 リディはヒダリィの下へ戻り、礼を言う。


「ありがとう、お兄ちゃん。」


「楽しそうだったね。」


「うんっ!」


 ニコッと笑うリディ。

 心の底からそう思っている、そんな笑顔。

 ヒダリィの手のひらから、リディの右肩へ乗り移るヒース。

『クゥ、クゥ』と鳴きながら、リディの首にスリスリ。

 すっかりリディに懐いている。

『くすぐったいよぉ』と、リディも嬉しそう。

 こうして、ヒースの母親探しが再開された。




 リディは動物達に、さりげなく。

 ヒースの母親を見た事が有るか、聞いてくれていた。

 すると、幾つか目撃情報が上がって来た。

 母親は、2人組の男に挟まれる形で。

 森の中を歩いて行ったと言う。

 その男達、どうやら人間族では無いらしい。

 どちらかと言うと、ヤマガラ科に近い服装をしていたのだそう。

 背中は〔青みがかったグレー〕と〔黒っぽい茶色〕のしま模様、胸側は〔淡い茶色〕。

 そんな色彩の半袖服を着て、茶色の半ズボンを履いていた。

 頭には、チューリップの様なピンクの髪飾りをちょこんと乗せ。

 それで、種族が何であるかを主張しているらしい。

『髪飾りを自慢気に辺りへ見せ付けながら、堂々と歩いていた』との証言も有った。

 リディが動物達に、好意的に接した事も有って。

 それ等の事実が、続々と明らかにされた。

 動物達の間でも、『あいつ等、感じ悪かったよな』との評判だった様で。

 次から次へと、話が出て来たらしい。

 そこから少し、険悪な雰囲気に成り掛けて。

 慌ててリディが、軌道修正したのだとか。

『お話は楽しくしたいもん』とは、リディの弁。

 動物達も、リディの言葉をすんなりと受け入れ。

 その後は、話題に上がらなかったと言う。

『それだけ聞ければ十分だ』、ヒダリィはそう思った。

 自分達の存在を知らしめながら、森の中を歩く必要が。

 そいつ等には有った。

 逆に言えば、そんな態度を敢えて取ると言う事は。

『〔カテゴリー〕内に居ても、おかしく思われない連中だ』とも言える。

 そんな奴は、かなり限定される筈。

 ここから導き出される答えは……。

 ま、まさかなぁ。

 行き着いた答えに、ヒダリィ自身が驚く。

 その反応が気になって。

 リディもヒースも、聞きたがっている。

 それが何者か、を。

 言っても多分、複雑な背景を理解出来無いだろう。

 でも一応、これだけは言っておくか。

 そう思い、ヒダリィは。

 一言だけ、リディとヒースに言う。


「ヒースのお母さんを、自慢したかったんだと思うよ。」




 辺りの精霊達に、おうかがいを立てながら。

 尚も捜索を続ける、ヒダリィ達。

 あっちへヨロヨロ、こっちへヨロヨロ。

 れながら進んで行く内に、日が傾いて来たらしい。

 辺りが暗くなって来た。

 丁度同じ頃、精霊達が騒ぎ出し。

 途中から付いて来ていた者達も、来た方向へ戻り出す。

 辺りをキョロキョロ見渡すリディ、『クゥ?』と疑問形のヒース。

 すると目の前に、1人の可愛らしい少年が現れる。

 人間で言うと、10才位だろうか。

 青緑っぽい衣服を身に付けているが。

 周りが揺らめいて、はっきりとした形までは分からない。

 少年は、ヒダリィに声を掛ける。


「やあ。君達、何か変だね。」


「〔変〕って?」


 意外な言葉を少年から掛けられ、そう返すヒダリィ。

 初対面なのに挨拶も無しで、いきなり上から目線の物言い。

『失礼だなあ』と思いつつも、相手をするヒダリィ。

 少年は続ける。


「〔取り合わせが〕だよ。三者三様、不自然過ぎる。」


「警戒するのは分かるけど。別に俺達は、何もしないよ?」


「だろうね。精霊達がやたらと、まとわり付いていたから。」


『そこなんだよ』と、少年は言うと。

 ヒダリィの背中を指し、指摘する。




「火の精霊が宿っているだろう?しかも高ランクの。なのに精霊達がおびえていない。それが納得出来ないんだよ。」

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