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エルフの村で、一休み

 休憩の為に〔ダーセ〕へと立ち寄った、ヒダリィ達一行。

 この辺り一帯には、〔木や草の成長に作用する水〕属性の。

 水の妖精【スックリ】が、幅を利かせている。

 ランクは〔ホグミス〕と同じ、5段階の3番目。

 尚、レッダロン達〔セキブに所属するエルフ〕と共に暮らしているのは。

 同じく5段階の3番目で、〔風をまとった水〕属性の。

 水の妖精【ベイン】。

 一般的な水の妖精、例えば【ウンディーネ】などとは。

 水を起源としている共通項は有るが、粒子の細かさ等の違いにより。

 別種の妖精として扱われる。

『妖精界にも派閥は有る』と言う事だ。

 だから、ランク付けも。

 ウンディーネ達とは分けて考えられている。

 そこは注意が必要。

 混同すると、力を借りる時にややこしい事となる。

 得意分野が違うのだ。

 スックリやベインは、ホグミスと同じ補助系。

 攻撃系・防御系の様に、物事へ直接関与するのは苦手。

 エルフは、それに関する理解は十分なので。

 問題とはしないが。

 魔法使いなど、魔力を行使する者達は。

 ついうっかり契約すると、『欲しい魔法が手に入らなかった』と言う事態におちいりかねない。

 つらつらと書き連ねたが。

 要するに、『ヒダリィ達には、それ程関係は無い』。

 どんな精霊にも平等に接する、その姿勢さえ失わなければ。

 特段、問題は起きない。

 約1名、それが危うい者は居るが。




 ヤマガラ科は、大木の枝と枝の間に。

 板などを敷き詰め、その上に家を建てる。

 一方でエルフは、老齢な大木の幹をくり抜いたり。

 木の成長の仕方を調節したりして、家を形作る。

 なので、家の形は様々で。

 人間が建てる様な直方体の集まりとは、ちと違う。

 柱がゆがんでいたり、屋根がへこんでいたり。

 不格好に思われるかも知れないが、生きたままの木を組み合わせているので。

 寧ろきっちり造ると、木の伸びと共にグニャアッとなってしまう。

 その方が住み辛い、自然のままに任せているのだ。

 床だけは、別に板を用意して。

 平らになる様、調節しているが。

 よって、外界の者が訪れて。

 エルフの家を一軒一軒見て回るだけでも、飽きる事が無く面白い。

 それを今正に体現しているのが、例の如くサフィ。

 輸送の為ヤマガラ科が形作っていた、ゴンドラの様な布から。

 さっさと地面へ降り。

『おっもしろーい!』と叫びながら、早速ダーセ内へ探検に出かける。

 よくもまあ、そんなに体力が余っているなあ。

 座っているだけでもかなり疲れている、ユキマリ。

『自分とは全然、様子が違っている』と感じる。

 〔ハンモック〕を思い出して頂きたい。

 あれも、身体が中央に入り込んでしまえば安定するのだが。

 腰掛けるだけでは、腰から尻に掛けてがグラグラして不安定。

 揺れに抵抗して、バランスを取ろうと踏ん張ると。

 筋肉がりそうになる程キツい、ブランコの様には行かないのだ。

 その状態で森の中を運ばれるヒダリィ達も、飛んでいる際の揺れを最小限に抑える為。

 気を使い、疲労が溜まっていると言う訳だ。

 疲弊しているのは何も、布の両端を持って運んでいるヤマガラ科だけでは無い。

 一団の中で元気なのは、ヒダリィの髪の中でジッとしていたヒナ位。

『元気過ぎるサフィがおかしい』とも言える。

 何処からそんなスタミナが湧いて来るのか、是非とも教えて欲しい物だ。

 そんな風に呆れながらも、ヒダリィは。

 ユキマリやヤマガラ科と共に、エルフの案内の下。

 食事を取るスペースへと向かうのだった。




 エルフコミュに関して、もう1つ特筆すべき点は。

 村や町が在っても、人間のそれとは異なり。

 〔境界を示す柵の様な物が、外側に設けられていない〕と言う事。

 人間は自衛する為、領土を誇示する為。

 柵や囲いを必要とするが。

 エルフは、共存する精霊が辺りを漂っている事で。

 仕切りの代替だいたいとしている。

 精霊の密度の濃い範囲が即ち、町・村の範囲。

 これは楽な様で、意外と危うい。

 精霊が居なくなれば、境界は崩壊し。

 町や村の存続が困難と成る。

 逆に、精霊のうろつく範囲が勝手に広がれば。

 コミュ同士の衝突が、何時の間にか生まれてしまう事に繋がる。

『精霊を野放しにしていれば、それで良い』と言う訳では無いのだ。

 適度に接する必要が有る。

 そこが何とも、ややこしい所なのだが。

 森のあちこちに、精霊は住んでいる。

 水だけでは無く、土も木も風も。

 エルフの町・村では、『密集している』と言うだけ。

 他の精霊がお邪魔するのも、当然許容している。

 そうで無いと、この世界は成り立たない。

 精霊同士の相性の良ししは有っても、精霊同士が自ら争う事は無い。

 争っている様に見えるのは、他者の主観に過ぎない。

 特に、人間族の。




 スックリがかもし出す清涼感が、ダーセ内を覆っている。

 ここにじっとしているだけで、体力が回復しそうだ。

 それ位、空気が澄んでいてすが々しい。

 思わず深呼吸するヒダリィ、そしてユキマリ。

 ヒナも、『ピッピッ』とご機嫌の様だ。

 輪を描く様に、皆が草むらの上へと座り。

 食事を取りながら、ヒダリィ達は話し合う。

 ダーセから2~3時間で、イリコを抜け。

 或る程度の空白域を進んだ後、セキブへと達する。

 イリコ内には、ダーセ以外にも。

 村が2つ有るらしいが、今回のルートには引っ掛からない。

 それはつまり、『セキブへ入るまで休めない』事を意味する。

 〔ローレンの森〕は、3つのエルフコミュで分割統治されている訳では無く。

 誰の支配も受けていない空白域が、多数在る。

 統治者が居ないので、変な輩が住み付いている事も有る。

 救いなのは、森全体に清らかな魔力が満ちている為。

 ピノエルフが、おいそれとは侵入出来無い事。

 警戒はしているが、ピノエルフ自体に強大な力が有る訳では無いので。

 心配は軽微。

 宝物ほうもつが宙へ追い遣られた時は。

 入植して来た人間族を、ピノエルフに上手い事利用され。

 そこを突破口に、攻められてしまっただけ。

 エルフ達は、そう考えているらしい。

 ヤマガラ科も、エルフ達に同意。

 今は十分気を付けている、そんな事はさせない。

 ヤマガラ科には、前回のてつは踏まない自信が有る様だ。

 その時、話し合いの場に。

 ヌッと顔を出す者。

 エルフの家を堪能し尽くした、サフィだった。

『あっ!これ頂きっ!』と、ヒダリィの食事をつまみ食い。

『お前の分は、ちゃんと別に有るから!』と、怒り気味のヒダリィ。

 そこから離れ、対面へ座るユキマリの隣へ避難。

 自分の分の食事を、エルフから受け取った後。

 口の中へ目一杯頬張ほおばりながら、サフィは言う。


「ほんな……モゴモゴ……たんひゅんな……モゴモゴ……。」


「食べ物を飲み込んでからしゃべれよ。何が言いたいか分かんないぞ。」


 ヒダリィが面倒臭そうに注意する。

 その左隣では、嬉しそうにリディがパクついている。

 食事は幼女の姿の方が、美味しく感じるらしい。

 ヒダリィと喋りたい事も相まって、食べる時はこの姿へ。

 そのリディを、チラッと見遣りながらチクリと。


「この子でも、その辺はちゃんとしてるぞ?」


 事あるごとに、リディを引き合いに出され。

 ムカッと来るサフィ。

 幼女と比較すれば、あたしがすんなり従うでも思ってんの?

 舐められた物ね、あたしも。

 そう考えている時点で、サフィは。

 ヒダリィの術中にはまっているのだが。

 ゴックンと、口の中の食べ物を。

 のどの奥へと流し込んだ後。

 サフィは、この場に居る者へ向かって言う。




「そんな単純な物じゃ無いわよ、あの事件は。」




「何だ?まるで見て来た様な言い方だな。」


 ヒダリィが、いちゃもんの様な言葉を投げ掛ける。

 それに対しサフィは、エルフ達へ向かって。


「精霊達は、あんた達に何も語っていない様ね。都合が悪いのかしら?」


「絡んでいるってのか?精霊が?宝物強奪に?」


 サフィの言葉に、ヒダリィが反応する。

 言い返し辛そうな、エルフ達の代わりに。

 サフィが続ける。


「〔守れなかった〕と言う点では、間接的にね。でも何が起こってそうなったか、全部知ってる筈よ。」


「単に、中立な立場を貫いているだけじゃないのか?」


「そんな訳無いでしょ。〔あの子達〕にとっても、大切な物なんだから。」


「何が言いたい?」


 じれったいサフィの物言いに、イラッと来るヒダリィ。

 それは同席している、エルフやヤマガラ科も同じ様だ。

『はっきり言って欲しい』、そう言った顔付きへと変わって行く。

 意識は十分、自分へと引き付けた。

 サフィは満足し、そして告げる。

 この場を揺さぶる様に。




「レッダロンには教えたけど。【裏切者が居た】って事よ。」

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