表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
146/1285

ヒダリィ達、進むのに苦戦している所へ

 一方こちらは、草原を進むヒダリィ達。

 腰近くまで伸びた、青々と茂る草々。

 道無き中を、黙々と歩く。

 遠くに見える〔ハイエルの樹〕、全然近付いている様に感じない。

 それもそうだ。

 空中じまに在った大木、その間を移動するのだけでも。

 徒歩で3日掛かったのだ。

 中心を挟んで向かい合わせに立っている大木間でも、単純計算で7日以上の道のり。

 だだっ広い草原で、遠近感は狂っているかも知れないが。

 目的地は見掛けよりも、結構遠いのだ。

 途中で何処か、休める場所が在れば良いんだけど……。

 そう考えながら、ヒダリィは草を掻き分ける。

 余りに草が鬱陶うっとうしいので。

 リディはヒナの姿になって、ヒダリィの髪の中へ。

 今はスヤスヤと眠っているらしい、静かなものだ。

 このままずっと、徒歩じゃ無きゃいけないの?

 ピョンピョン飛び跳ねながらの方が、早く着くと思うんだけどなあ。

 ユキマリはそう思い、サフィへ相談を持ち掛ける。


「ねえ、飛び跳ねて行かない?草の中は何か、チクチクして気持ち悪いんだけど。」


「出来たらそうしてるわよ。でもここじゃあ、無理ね。」


「何で?サフィが元気なんだから、結界は無いんでしょ?」


「有るわよ、今はまだ不完全だけど。」


「え?だってあなた、平気そうじゃないの。」


「あれは宝物ほうもつの力のせいよ。結界のせいじゃ無いから。」


「えーっ!じゃあ瞬間移動だっけ?それも出来るんじゃないの?何でヒダリィの言葉通り、それをやらないの?」


味気あじけ無いからに決まってるじゃない。折角、のんびり旅をしてるのよ?楽しまなきゃ。」


「だったらせめて、飛び跳ねようよ。その方が早いでしょ?ねっ?」


 尚も食い下がるユキマリ。

 しかしサフィは、ヒダリィを見ながら言う。


「こいつはどうする気?置いてくの?」


「前の時みたいに、火の玉になって飛んで行けば……。」


「2つに分けたから、炎を上手く操れないのよ。ねえ、サラ?」


『呼んだかい?』


 ヒダリィの背中から、声が聞こえる。

 サフィが、剣に向かって話し掛ける。


「あんたの力、こいつが制御出来ると思う?」


『難しいだろうね。不安定だから。あ、この事は。向こうのヒィにも伝えてあるから。』


「ほらね。こいつには、素早く移動出来る手段が無いの。なんなら、あんたが背負って跳んでく?」


「そ、それはちょっと……。」


 サフィからの提案を、ユキマリはやんわりと拒絶する。

 何しろヒダリィは、リディと2人分の荷物を背負っている。

 それだけでも、かなりの重量。

 ユキマリも自分の荷物を抱えている、ヒダリィを背負って跳ぶとなると荷物は3人分。

 パワータイプの獣人で無いユキマリには、とても無理だ。

『うーん、仕方無いかあ』と残念がるユキマリ。

 一方で、彼女の言い分も分かるサフィ。

 ちんたら歩いてたら、何時いつ着くか分からない。

 さっきは『味気無いから』って誤魔化したけど、本当は違う。

 今下手に術を使うと、復活しかかっている結界に乱れが生じてしまう。

 不安定な状態のヒダリィが居るなら、尚更。

 だから、瞬間移動は使えない。

 ユキマリもヒダリィも、その辺には気付いていないみたいだけど。

 でも、このままじゃあねえ……。

 頭の中であれこれ考えるも、段々面倒臭くなって来るサフィ。

 こんなの、あたしの役目じゃない!

 やーめたっ!

 あっさり、思考を放棄。

 そして、『まあ、何とか成るでしょ』と。

 一人で勝手に開き直り、自分の幸運に賭けるサフィなのだった。




 開き直りが功を奏したのか、本当にサフィの幸運がまさったのか。

 ヒダリィ達の前に突然、謎の集団が現れる。

 草の中に身を隠している、見つからない様にかがんでいるのだろう。

 感覚の鋭いユキマリの耳をくぐり、何時の間にかヒダリィ達を取り囲んでいた。

 集団の内の1人が、ヒダリィ達に対して。

 威嚇する様に、一言怒鳴る。


「何者だ!貴様!」


 急な大声に、ビクッとなるユキマリ。

 サフィは全く動じない。

 ヒダリィは、髪の中のリディを気遣いながら。

 辺りを見回す。

 そして集団に付いて、冷静に分析をし出す。

 手に何か武器を持っているな、ナイフの様な物か?

 殺傷能力はそれ程高く無いらしい、意外に距離を取っている事からも分かる。

 戦わず穏便に、事を済ませようってか?

 それなら、願ったり叶ったりなんだが。

 しかしこれは、見事な陣形だな。

 こちらからは身動きが取れない様、上手く配置してある。

 相当な手練てだれだな、『戦い慣れている』とも言えるけど。

 ここまで考えてヒダリィは、サフィの様子をうかがう。

『何か腹案が有るかも知れない』、そう思って。

 ヒダリィと目線が合ったサフィは、ニヤリと笑い。

 その頭に向かって叫ぶ。


「リディ!起きなさい!ヒダリィの危機よ!」


「ピッ?」


 疑問形の鳴き声を発した後、ヒナは。




「ピーーーーーッ!」




 大きく一鳴きした後、小さい羽をパタつかせ。

 ヒダリィの髪の中から飛び上がる。

 ピョーン、パタパタ。

 スーッ。

 ピョーン、パタパタ。

 スーッ。

 上昇と下降を繰り返し、その姿を辺りに見せつける。

 すると、取り囲んでいた集団から驚きの声が。


「あれは何だ!?」

「も、もしや……焔鳥ほむらどりっ!」

「あの、噂の!?」

「だとすれば、彼等は……!」


 大声で戸惑う集団。

 そこへ間髪入れず、サフィが周りに叫ぶ。


「ここに居る彼こそ!あんた達の同胞をこの地へ返した英雄よ!」


 そしてヒダリィに、『招待状を見せてあげなさい!』とせっつく。

 言われるままに、ヒダリィは。

 ふところから、レッダロン直筆の招待状を取り出し。

 高く掲げながら。周りへじっくりと示す。

 その文面とサインを確認したらしい、本物だと分かると。

 皆ガバッと、草の中から立ち上がり。

 ヒダリィ達に対して、一斉に頭を下げる。




「「「「「「「「失礼致しましたーっ!」」」」」」」」




 顔を出した、その姿は。

 身なりこそエルフに似ているが、顔の形が少し違う。

 耳はとんがっていない、人間族と同じ。

 しかし鼻の先から、枝の様に。

 5センチ程の、棒状の突起が有る。

 瞳の色も、やや緑がかっている。

 深緑の中に〔黒と濃い茶色〕のまだら模様が入った、エルフ独特の服とズボン。

 頭には、高さ15センチ程の尖り帽子。

 こちらは柄の無い深緑で、先端はやや垂れ下がっている。

 草むらの中へ隠れる為に、わざと折り曲げたのだろう。

 顔を出したのは8人、その中で一番偉いと思われる。

 ヒダリィの正面に居た者が、スススッと近付き。

 もう一度、深々と頭を下げる。


大恩だいおん有る方とはつゆ知らず!申し訳ございません!」


「良いんですよ。あなた方が警戒するのはもっともですから。」


 ヒダリィはにこやかに、そう返す。

 自分達のテリトリーに、ズカズカと乗り込んで来たのだ。

 怪しむのは当たり前。

 しかも今自分は、右半分が薄い状態。

 気持ち悪い事、この上無い。

 誰でもそうする、俺でもそうする。

 彼等は本分を果たしたまで、誰が責められようか。

 ヒダリィの返しに、ホッとしたのか。

 残りの者達も、近付いて来て。

 頭を下げた後、にこやかに笑い掛ける。

 ユキマリは自慢の器量良さで、『宜しく!』と握手を交わす。


「これで、時間短縮に関して。打開の芽が出て来たわね。」


 サフィはそう言うと。

 取り巻きの者達に、提案する。


「レッダロンを待たせる訳には行かないの。協力してくれない?」


「おお!レッダロン様のお知り合いでしたか!」


 最初に近付いて来た者が、そう声を上げ。

 名乗りながら、要請を承諾する。




「私は【ピノエルフ】のコミュ【タッカード】に属しております、【フレメン】と申します。私共、喜んでお力添え致しましょう。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ