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『ファンタジーだから!』なんて言葉で、俺が納得すると思うか?  作者: まにぃ
4-1 重要な場なのに、ぐっちゃぐちゃ
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サフィ、唐突に現れては場を掻き回す

 大公の後ろから現れたのは。

 濃紺のウェーブ掛かった長い髪をした、スレンダーな美少女。

 まるで絵画から抜け出て来た様な、魅惑の容姿に。

 大公を助けようと立ち上がっていた者達は皆、一瞬息をむ。

 本性を知っている、アーシェを除いて。

『どもどもー』と軽く手を振りながら、愛想を振り撒いて。

 アーシェの下まで来ると。

『まだあ?』と、アーシェにささやく。

『お、大人しくしていてくれ!』と焦るアーシェに。

『水臭いじゃないのー』と、またもヒソヒソ。

 2人のやり取りが気になって、何時いつの間にか着席していた一同。

 少女の姿を見た大公は、控えている部下に命じる。


「突然だが、来客の様だ。椅子を1脚、用意する様に。」


「ははっ!」


 円卓の周りに置かれている物と同じ椅子を、部下が運んで来ると。

 アーシェの左隣に『どうぞ』と置く。

『ありがとう』と、軽く会釈しながら。

 その前へ回ると。

 この場に居る者へ、自己紹介する。




「あたしは〔サファイア〕。気軽に〔サフィ〕と呼んでくれて良いわよ。宜しくっ!」




 シュタッ!

 宣誓する時みたいに、右手を軽く上げ。

 そのまま着席。

 大公は、直ぐにサフィへ謝る。


「〔奴〕との言い方は、言葉のあやだ。済まぬ。」


「分かれば良いのよ。」


「前の時も感じたが。堂々として臆さぬ態度、お主は本当に〔女神〕なのか?もっと慎ましやかな存在かと思っていたが。」


「「「め、女神!」」」


 大公の口から出た単語に、驚く一同。

 〔救世の御子〕候補の影には、〔怪しい者〕・〔不思議な者〕が付いているのは常。

 それも認定ランクが高ければ高い程、人外じんがいめいているのは。

 監査人達の共通認識。

 しかし候補の陰に隠れ、自分の正体を明かす事はほとんど無い。

 なのにこの者は、堂々と名乗るばかりか。

 大公とも、既に面識が有る。

 もしや、先程の大公の話に出て来たのは。

 彼女なのか……?

 考えれば考える程、ジロッとした目付きとなり。

 サフィのボディに突き刺さる。

 監査人として染み付いた、〔習性〕とも言える行動。

 そんな状況を物ともせず、サフィは大公へ言葉を返す。


「『女神の割には気さくだな』と言って欲しいわね。あたしは、身分で差別なんかしないの。」


「大公である私に対しても、か?」


「当然。同じ人間じゃない。ここに居るみんな、ぜーんぶ。」


「神である自分には、些末さまつな事。そう言いたいのか?」


「〔あんな奴等〕と一緒にしないで。あたしは誰に対しても、目線が一緒。それだけよ。」


「面白い。自分は〔奴〕呼ばわりを嫌っておいて、他の神々は〔奴等〕と申すか。」


「あたしは〔乙女〕、だから嫌ったの。それに。ろくに自分の責務も果たせない神なんて、神じゃないでしょ。」


「言いよるのう。本当に面白い!ワハハハハ!」


 豪快に笑う大公。

『問答しに来たんじゃ無いんですけどー』と、むくれ顔に成るサフィ。

 その間に挟まれ、オロオロするアーシェ。

 サフィは、その隙に。

 サッと、アーシェの手元から紙を奪い取る。


「あっ!それはっ!」


「ケチらなくても、これ位良いでしょ?何々、てぃーじぇい?ほうせきか?何これ?」


「サフィには関係の無い事だっ!返せっ!」


「やぁよ。ちゃんと説明してくんなきゃあ。」


「良いから!返せっ!」


「やーっ。」


 ドタドタと、サフィとアーシェの間で。

 みにくい紙取り合戦が、繰り広げられる。

 こんな大事な、会議の場で。

 余りの必死さに、アーシェは自分の立場を忘れている様だ。

 その滑稽なやり取りに、場に居る者達は笑いがこらえられず。

 アハハハハ!

 笑い出してしまう。

 それは、大臣も例外では無かった。

 おっ!

 場があったまったみたいね。

 そう思ったサフィは、『ほいっ』とアーシェに紙を返す。

 そして、大公に向かって。

 とげの有る言い方をする。


「階級分けとは、良い趣味じゃないわねぇ。」


「こうしないと、実態が掴めんものでな。我等人間とは、そう言う者だろう?女神よ。」


 冷静な言い方で、返答する大公。

 対抗してなのか、サフィも冷静な口振りで。




「そんな傲慢な物言いをするから【滅ぶ】んでしょうね、人間は。」




 ギクッ!

 物騒な単語が、サフィの口から飛び出す。

 慌てて、『気にしないで!』と打ち消すが。

 それが反って。

 この場に居る者の頭の中に、印象強くり付ける。

 アーシェは慌てて、『頼むから、ややこしくしないでくれ!』と念を押すが。

『ややこしくしてるのは、寧ろあっちでしょ』と、逆に諭される。

 ざわつく場内、そこへ一喝する大公。


「鎮まれい!我等がここに集まっているのは、何の為だ!」


 ようやく、シーンとする場内。

 話し疲れたのか、進行役をウェインに譲る大公。

 ウェインがサフィに尋ねる。

 それが手っ取り早いと思ったから。


「あなたの隣に座っておられる〔ゼストリアン卿〕へ、〔或る物〕に付いてお聞きしていたのです。『あなたならお答え頂ける』とお見受けして、お尋ねします。」


「別に良いけど?何?」


「〔ゲート〕に付いて、です。私達も使用出来……。」


「無理。」


「はい?」


 即答だったので、聞き逃したのかと思って。

 もう一度訪ね返すウェイン。

 しかし、サフィの答えは同じ。


「無理よ。あんた達は使えない。バックに、〔許可を出せる者〕が居ないから。」


「許可が要るのですか?それは、何方どなたから頂けるのでしょうか?」


 勘では有るが、核心に近付いている気がする。

 ウェインはそう思い、慎重にサフィへ尋ねる。

 対して、サフィの答えは。


「神だったり、別の者だったり。色々ね。けど……。」


「けど?」


 サフィの物言いが、段々怪しくなって来た。

 それでも、何とか聞き出そうとするウェインだったが。

 結局、サフィのこの言葉で終わってしまった。




「あたしが認めないから。誰だろうと、やっぱり無理ね。」




「承服しかねますな。あなたはそれ程、多大な権限を与えられているのですか?」


 ここまで来ると。

 ウェインの言葉は、いちゃもんの様相を呈して来る。

 魔導士としての好奇心の方が。

 〔この場を仕切る者〕と言う立場としての意識を、上回って来たせいかも知れない。

 ウェインの目はらん々としている。

 おもちゃ箱をひっくり返して遊んでいる、子供の様に。

 その視線が鬱陶うっとうしく感じたのか、サフィはアーシェの腕を取り。

『早く、ヒィの所へ帰るわよ』と、立ち上がる。

『そ、それは困ります!』と、止めに入る大臣。

 議題に付いて、何も話し合われていないのに。

 部外者に近い者が解散宣言など、認められない。

『これこれ、こう言う事だ』と、サフィを無理に席へ座らせ。

 何故この場が設けられているかを、説明するアーシェ。

『ふうん』と、鼻先で軽く受け流すサフィ。

 そこへ、『ピコーン!』と。

 何か、思い付いたらしい。

『はいはーい!』と右手を上げ、当ててくれるのを待つサフィ。

 仕方無く大臣は、サフィを指名。

 スックと立ち上がると、サフィは言った。




「だったらさ。当人の代わりに、【後見人】を集めれば良いんじゃないの?それなら可能よ、多分。」

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