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『ファンタジーだから!』なんて言葉で、俺が納得すると思うか?  作者: まにぃ
3-2 戯 (たわむ) れも、ほどほどに
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〔エルフ・ホグミス〕連合部隊と、〔奴〕との攻防は

 深々とした、小屋群の在る森。

 空が真っ暗になった後、打ち合わせ通りに。

 エルフ達が2人1組で、四方八方へ散って行く。

 小屋群には、指揮官のスニーと。

 モンスーコが残る。

 威勢良く振り上げていた、大きな矢は没収されたので。

 戦うすべを持っていない。

 強引にここを占拠していたので、エルフ達はこころよく思っていなかった。

 だから、モンスーコの武器も持参していない。

 置き去りにされた形の自分に、森全体が責める様で。

 辛い気持ちに成るモンスーコ。

 こんな事に成るなら、虚勢を張らなければ良かった。

 後悔するも、既に手遅れ。

 そんなモンスーコに、スニーが声を掛ける。


「落ち込んでいる場合では無いだろう?今回は、皆が結束して掛からなければならんのだ。」


「し、しかし……。」


「お前にしか出来ない事を、やるんだな。」


「な、何か有るでしょうか……?」


「有るさ、ちゃんとな。」


 森の外側を見ながら、スニーは言う。

 それは、出来れば避けたい事。

 相手が何者かによっては、ここは重要な施設となる。

『そうなって欲しくない』との思いを込めて、スニーは言ったのだが。

 同時に〔モンスーコへの励まし〕となってしまう皮肉に、スニーも苦笑いをするしか無かった。




 あちこちに展開したエルフ達が、気配を探る。

 しかしまだ隠れているのか、それとも力を回復していないのか。

 おかしな気配は感じられない。

 そこでお互い合図を送り、しばらく潜伏する事にした。

 ゆっくりと、常に位置を変えながら。

 こうして、数十分経過した後。

 或るエルフが、変な物を地面に見付ける。

 それは四角い、手のひらサイズの白レンガ。

 何でこんな場所に……?

 一応、皆に知らせた方が良さそうだ。

 そう考え、ペアを組んでいるもう1人のエルフに話そうとした時。

 白レンガに異変が。

 ボコッ。

 ボココッ。




 ボコボコボコボコォォォォォォッ!




 それはあっと言う間に膨れ上がり、変形して行く。

 ミシミシと周りの木々をなぎ倒しながら、形作られるその姿は。

 石の巨人の様。

 大きな胴体は、円柱状。

 それを支える様に、太い脚が胴の下から2本伸び。

 胴の左右からは、逆に細長い腕が突き出る。

 しかし、頭に相当する部分は現れない。

 頭が無いのは、何か理由が有りそうだ。

 とにかく奴は、本当の姿を現した。

 初めに白レンガ見付けたエルフは、森中へ響かせる様に大声を上げる。


「奴が現れたぞーっ!気を付けろーっ!」


 何っ!

 エルフ達が、その声の方を見ると。

 真っ暗闇の中に、ボーッと白い物が浮かび上がっている。

 それは、胴体部分をグルグルと旋回させた後。

『ドスン、ドスン』と歩き出す。

 その向きは、ユミンの在る町の方向と同じ。

 どうやら宝物ほうもつの在り処を感知して、自動追尾している様だ。

 森の木々の高さは、一番高い物で30メートル程。

 平均で23メートル程、大体5階建ての建物の高さ。

 奴の天辺てっぺんが森の上から出るか出ないか、その状態で大きさは固定されたらしい。

 チラチラと、森の上から姿を出す。

 その様子は、遠くに居るホグミス達からも確認出来た。

 ここからは、おいら達の本領を発揮する時だ!

 みんな、やるぞー!

 おーっ!

 数十人のホグミスが、森を取り囲む様に配置されると。

 一斉に白巨人へ両手のひらを向け、そこから霧状の水を噴射する。

 森の上を介する形で、白巨人に降り注ぐそれは。

 幻惑に使用する物。

 初めは嫌がる様に、ブルブルと体を震わせていたが。

 耐性が付いたのか、直ぐにまた歩き出す。

 量が足りないのか!

 再びホグミスは、白巨人へ向け噴霧するが。

 その動きを止める事は出来ない。

 その少しの攻防の間、エルフ達は警戒しながら。

 白巨人との間合いを詰めていた。

 一斉に、四方から襲い掛かるエルフ達。

 或る者は腕、或る者は足。

 在る者は『ここが急所だ』と考え、心臓に相当する部分へ攻撃するも。

 削り取っても、その場で再生してしまう。

 一方で切り取った部分は、そのまま朽ち果てる。

 そのさまを見て、エルフ達は判断する

 こいつの中に、再生を司る部位が必ず在る。

 それさえ破壊してしまえば……!

 その考えから、必死に足止めをしようとするエルフ達。

 しかし徐々に、エルフ達は押され始める。

 無限再生する白巨人。

 対しててエルフ達は生身で、疲労が段々まって行く。

 比べれば、優劣は明白。

 懸命に白巨人へ攻め掛けるも、逆に吹っ飛ばされ。

 怪我を負う者が続出する。

 このままでは、森での足止めは不可能になる。

 戦況から、そう判断したスニーは。

 展開しているエルフ達へ命ずる。


「皆の者!怪我人を連れて、小屋へ戻れ!戦力を立て直すぞ!」


 その直後からエルフ達は、続々と負傷者を連れて小屋群へと戻って来る。

 治療を手伝って、あちこちを動き回るモンスーコ。

 小屋群はさながら、野戦病院と化していた。

 中の造りをしっかりと把握しているモンスーコは。

 怪我の程度に応じて、テキパキと部屋を割り振って行く。

 そこへ治療係のエルフが駆け付け、怪我人の面倒を見る。

 自分が無力である、そんなのは認めたく無い。

 モンスーコは必死に働き、その存在感を周りに見せつけて行く。

 そのひたきさに、エルフ達もモンスーコを少し見直す。

 これが、彼への評価改善の切っ掛けとなるだろう。

 そう思いながらも。

 やはり、こうなってしまったか。

 悔しいが、致し方無い……。

 満身創痍のエルフ達を目の当たりにしながら、これからの戦術を練り直すスニーだった。




 こちらの戦力は、かなり落ちた。

 森の外へ出すのは、防ぎようが無いだろう。

 ならばせめて、進む方向を変えねば。

 スニーの考えは、そこへと至った。

 森の外に居るホグミス達へ、伝令を出すと。

 残りの動ける者達を率いて、スニー自ら出陣。

 白巨人の正面へと回ると。

 後ろへ下がらせる様に、一斉に攻撃する。

 かなりの圧を掛けられた白巨人は、一瞬たじろぐ。

 そこへ森の外から、ホグミス達が放射。

 今度は幻惑作用の霧では無く、気配を消す霧を噴射している。

 幻惑は〔相手の感覚に訴える〕技、しかし今度のは〔感覚を遮断する〕技。

 方向感覚を乱して、ユミンの町かららそうと言う作戦だ。

 と同時に、森内外の地面へ【普通の水】を発射する。

『ガシッ!ガシッ!』と、白巨人の正面から攻撃を繰り出し続けるエルフ達。

 ホグミス達も、供給をめない。

 それでもとうとう、白巨人は森から出てしまった。

 森の外は、霧が立ち込め真っ白。

 その中で白巨人は、明るい輝きを見付ける。

 宝物だと感じたのだろう、その方向へと歩き出す。

 十数歩、白巨人が歩いた先に。

 輝きの元は有った。

 それへ向け、左腕を伸ばす白巨人。

 しかし、『バシュッ!』と言う音と共に。

 左腕は、肘の部分から先が切り落とされ。

『ドッスーン!』と言う轟音を辺りに響かせ、地面へ落下。

 それを切っ掛けに、霧が晴れて行く。

 霧の中から浮かび上がる、シルエット。

 それは、右手に剣を携えていた〔人間〕だった。




「!」




 白巨人がしゃべれたなら、そう驚きの声を上げただろう。

 不殺ころさずの剣を右手に握り締めていた、ヒィ。

 ブンッと、刀身にこびり付いた土塊つちくれを振り払うと。

 チャッと正面に、剣を構え直す。

 そこへ、森から飛び出たスニーの声が。


「そ奴は!切っても切っても、自己再生します!ご注意を!」


 声の方へ静かに頷くヒィ。

 剣を奪い取ろうと、白巨人は右足を前に出す。

 その時、地面がグラッと動いた。

 そして、白巨人から右の方向へ。

 地面が傾く。

 角度は10度位、かなり急な坂道に相当する。

 白巨人は、右足を着地させようとするが。

 軸足の左足ごと、ズルッと滑る。

 その巨体を支える事が出来ず、『ズズーン!』と横へ倒れ込む。

 エルフ達は、森の木々にしがみ付いている。

 ホグミス達は身体を霧状にして、地面から離れ浮き上がる。

 ヒィは、足元の地面が『ジュッ!』と言ったかと思うと。

 瞬時に、白巨人の方へと向かって行く。

 それはさながらロケットの様、勢い良く地面れを飛び続け。

 剣先を前に突き出し、そのまま白巨人の胴体へと突き立てる。

 ズシュッ!

 かなり奥まで、刀身をめり込ませると。


「じゃあな。」


 ボソッと小声で、ヒィが漏らす。

 刀身全体から、激しく【紫色の炎】が立ちのぼると。

 白巨人の全身を一気に飲み込んで。

『ゴウッ』と無駄なく焼き尽くすが如く、辺りに紫の光を放つ。

 それを見ていた、エルフやホグミスは。

 白巨人を包み込む炎を『美しい』と感じ、一方で戦慄の念を覚えた。

 これ程凄まじい物を、見た事が無い。

 完全に燃やし尽くされ、灰塵かいじんと化した白巨人。

 それを見届けると。

 皆自然に、ヒィへと平伏していた。




 森に潜んでいた者との決着は、これで付いたものの。

 崇め奉られると言う、変な状況におちいって。

『止めて下さい、そんな事』と、オロオロするヒィ。

 その一方で、〔忘れてはならない者〕の動きが。

 この流れで、話に出て来る人物と言えば……。

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