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『ファンタジーだから!』なんて言葉で、俺が納得すると思うか?  作者: まにぃ
3-2 戯 (たわむ) れも、ほどほどに
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鍵でまず、宝物(ほうもつ)をこじ開けよう

 ユミンの町のあちこちに掲げられる、松明たいまつ

 日が照って明るいのに、どうしてこんな物をかせるのか?

 疑問に思いつつも、エルフ達は長の命に従う。

 町の外で結界を張っているホグミスも、伝達された通りに動き始める。

 町の傍だけでは無く、向こうに見える森さえも。

 霧に包もうとしていた。

 周りの雰囲気が急激に変わって行く事へ、小屋群で陣取っているモンスーコも戸惑う。

 そこへ、森の中で狩りの途中だったエルフ達がなだれ込む。

 何だ何だ?

 と同時に、ユミンから派遣されたエルフ達も合流。

 こちらはスニーが指揮している。

 長の命をスニーが伝えると、エルフ達は大盛り上がり。

 そして、自分達の近くに潜んでいるであろう脅威に。

 対抗すべく、準備をし始めるのだった。




 ヒィは自分の荷物袋から部品を掴み出し、編成されたエルフの作業部隊へと渡して行く。

 サフィの指示でそれは組み立てられ、ユミンの中心部に在る広場へと設置される。

 何故こんな巨大な物が、小さい袋に入っていたか。

 エルフ達は驚きながらも、黙々と作業する。

 設置には、数時間掛けられた。

 そこへ。

 モンスーコが持っていた、場違いな位に大きい矢が運び込まれる。

 それを組み込んで、完成。

 出現したのは、【巨大なクロスボウ】。

 モンスーコの矢が無ければ、どうしていたのだろう?

 それとも、事前にその存在を知っていたと言うのか?

 エルフ達は皆、不思議がる。

 供出する様要請された、モンスーコ本人さえも。

 クロスボウの大きさは、〔弓幅10メートル程×本体の長さ15メートル程〕。

 それが、回転する巨大な発射台に乗せられている。

 台は射角を変更出来、宙に在る物へ確実に狙いを定められるすぐれ物。

 台座部分も。

 ヒィの荷物袋から部品を取り出され、テキパキと組み立てられた。

 最早マジックアイテムと化している、ヒィの荷物袋。

 不思議でたまらない、好奇心旺盛のエルフ達が。

 ヒィに強請ねだって中を覗かせて貰うも、何の変哲も無かった。

 余計に頭がこんがらがるエルフ達。

 ネプテスが嫌がって、姿を隠していただけなのだが。

 ここまで来ると、ヒィもネプテスの凄さを認めざるを得ない。

 よくこんな魔物に、協力を仰げたな。

 サフィのヘンテコな魅惑に当てられて、判断力が鈍ったのかも知れない。

 そう考える程ヒィには、サフィへの評価が揺らいでいた。

『アホの子には違いないんだけどなあ』、その思いだけはずっと同じだったが。

 こいつはどうも、変な所で知恵が回る。

 クロスボウもそうだ。

 どうして、構造を理解している?

 どうして、組み立ての指揮が出来る?

 これも『ファンタジーだから』で済ませるのだろうか。

 それとも『女神だから』と言い張るのだろうか。

 まあ良い、上手く事が運べば。

 状況を丸く収める為に、全力を尽くすのみだ。

 そう決意し。

 サフィに対する邪念を追い払う、ヒィなのだった。




 各自、配置に付いた。

 ヒィは、ユミンから外へ出た。

 サフィとユキマリは、クロスボウの近くで待機。

 町のあちこちには、赤々と松明がともっている。

 ホグミス達が展開した霧は、森を完全に飲み込んだ。

 空へ向け、クロスボウの発射角度を調整する。

 それが終わると、リディが『よいしょ』と矢の上に登る。

 そして『ポンッ』と言う音と共に薄煙うすけむりが立ち、ヒナの姿になると。

 トコトコと矢を登って行く。

 矢じりまで達すると、その場に座り込み。

 脚でガッチリ、矢じりへと掴まる。

 リディは準備完了。

 クロスボウに関してエルフの指揮をるのは、クロレ。

『発射準備!』と号令を掛けると。

 大勢でクロスボウのつるを引っ張り、レバーへと掛ける。

 カチッと音がしたのを確認し、作業部隊はクロスボウから距離を取る。

 皆が緊張する中、クロレが命ずる。




「発射!」




「「「せーのっ!」」」


 3人のエルフが力を込め、クロスボウのトリガーを引く。

 すると。

 ビュンッ!

 勢い良く矢が、空へと放たれた。

 その目標は、遥か空中。

 ここで1つ、解説を。

 どうしてこの空中島は、夜も無くずっと明るかったのか?

 答えは明白。

 宝物ほうもつに因る物だから。

 そう、宝物は【空中に浮かんでいた】のだ。

 土地全体を包む様に、輝きを放ちながら。

 まるで自身の効力が及ぶ範囲を、光で示す様に。

 それは、〔空を行き来する光球〕に似た明るさを保ち。

 昼の状態だけを作り出していた。

 この世界は、光球の動きによって昼夜が形作られている。

 土地の上空から動かない宝物は、その上部だけをこう々と照らし。

 その真下は遥か彼方だったので、宝物の光の影響を受けなかった。

 だから地上の者達は、空中島に気付かなかったのだ。

 外敵から身を守る為、宝物は発動している訳だから。

 悟られないのは当然だが。

 それを今、解除しようとしている。

 その鍵が、リディ。

 彼女は、宝物の影響を受けない。

 寧ろ、〔打ち消す事の出来る、数少ない存在〕と言える。

 サフィの背中で眠りこけていたのは、伊達では無い。

 影響を打ち消し、サフィに元気を取り戻させていたのだ。

 しかしそれは、サフィの能力の制限にも繋がるので。

 瞬間移動とかは、使いたくても使えなかった。

 サフィの能力は人間程度に成り下がったが、旅を続ける余力は残ったと言う訳だ。

 宝物は無意識、リディは意識的。

 その両者が直接ぶつかれば、どうなるか。

 これから、それが明らかと成る。




 ビューーーーーッ!

 真っ直ぐに飛んで行く、大きな矢。

 必死に矢じりへしがみ付く、リディ。

 絶対に、役に立つんだ。

 そしてお兄ちゃんに、一杯褒めて貰うんだ。

 だって、【見た】もん。

 そうなっている、うちを。

 だから……!

 ピーーーーーッ!

 大声で鳴くと、直ぐ傍まで近寄っていた宝物目がけ。

 失速し落下し掛けている、矢じりから飛び立ち。

 小さい羽をパタパタさせて、突進する。


 《やあああぁぁぁぁぁっ!》


 リディはそう叫んでいるつもりだった。

 しかし、周りには。


 《ピピピピピイイイイィィィィィッ!》


 甲高いヒナの鳴き声として、辺りに響き渡る。

 そして。

 ドスンッ!

 ヒナと宝物がぶつかると。

 パシュッ!

 何かが弾ける音がする。

 それは、エルフ達にも聞こえる程の大きさで。

 同時にバッと、周りが暗くなる。

 ヒュルルルルーーーッ!

 宝物と共に、ヒナが落ちて来る。

 そこへ、エルフ達が思い切り投げ上げたユキマリが。

 自分の荷物袋を携え、或る程度の高度まで達すると。

 袋の口を開いて、叫ぶ。




「今よ!吸い込んでーっ!」




「承知。」


 ユキマリの袋の中に居た、ネプテスは。

 彼女が合図を送ったら対象を吸い込む様、サフィに言われていた。

 その通りに、ネプテスは実行する。

 ギュルルルルルーーーーッ!

 袋口ふくろぐちから、竜巻の様な物が発生し。

 上空へ長く伸びたかと思うと、ヒナと宝物を飲み込んで。

 再び、袋の中へと帰って行く。

 そして完全に取り込んだ後、キュッと袋の口を閉め。

 ユキマリは叫びながら、落下する。

 あああああぁぁぁあぁぁああぁぁぁぁっ!

『自分の位置はここだ』と、教えながら。

 下で待機していた、投げ上げ係のエルフ達は。

 ヒィの荷物袋から出してあった、〔着地用マット〕を大きく広げる。

 その中央にボスッと、見事ユキマリは収まった。

 駆け寄るエルフ達も、袋から勢い良く飛び出したヒナを見て。

 ユキマリと宝物の無事を確認し、安堵する。

 直ぐに立ち上がり、ユキマリは。

 屋敷の中でジッと待つ、テルドの下へと向かう。

 それを黙って見送った後、町の外へと向き直るエルフ達。

 下の世界では夜の時間帯だったのか、辺りは闇に覆われている。

 その中にポツポツと灯る松明が、エルフ達の心配そうな顔を。

 チラチラと照らしていた。




 空中島の上空が真っ暗になった事は、宝物の効力がき消えた事を意味する。

 それは同時に、他が動き出す合図でも有った。

 それは。

 〔森に潜む何か〕と。

 〔それを撃退せんとする者達〕と。

 後、〔1人〕は……。

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