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『ファンタジーだから!』なんて言葉で、俺が納得すると思うか?  作者: まにぃ
3-2 戯 (たわむ) れも、ほどほどに
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枝の上に建つ、小屋の中で

「こ、こんな感じで宜しいでしょうか……?」


「ああ、十分だ。感謝する。」


 木の枝の上に建つ小屋。

 そのたもとに、或る物を固定するモンスーコ。

 状態を確認し、上へ声を掛けるスニー。

 モンスーコは、あれからずっと挙動不審。

 おっかなびっくりで、スニー達の言う事を聞いている。

 小屋の在る枝から、だらんと垂れ下がるそれは。

 ヒィの荷物袋の中に入っていた、〔縄梯子ばしご〕。

『何でこんな物が……』と、不思議に思っていた内の1つ。

 そうか、ここで使う為だったのか。

 ヒィの中でに落ちた一方、以前考えた〔或る可能性〕が信ぴょう性を増す。

 後でこっそり、サフィへ確認しよう。

 そう考えながら、ヒィは。

 袋を背負ったまま、梯子をのぼるのだった。




 余程、縄梯子が珍しかったのか。

 自慢のジャンプ力で枝まで辿り着けるのに、ユキマリもわざわざ。

 縄梯子を使って、『よいしょ、よいしょ』と上って行く。

 エルフ達は、普段通りに。

 ピョンピョンとジグザグに、2本の木の幹を蹴り上げながら。

 器用に身体をさばき、上方へと向かって行く。

 サフィはリディを背負ったまま、何とか縄梯子を上り切る。

 リディはそれ程重く無い、それに加えて。

 女の子の姿のリディと、リディを下ろす事によって体力不足におちいるサフィ。

 2人を分離すると、結局『2人共上れない』と言う結果となるので。

 仕方無く、この様な形に。

『覚えて置きなさいよー!』と、強がるので精一杯のサフィ。

 明らかに疲弊している。

 枝に上った後は、2人それぞれ。

 サフィはスニーに、リディはクロレに背負われ。

 小屋の中へと入って行く。

 ユキマリは、小屋をじっと観察している。

 どっかで見た事の有る様な……。

 考えながらも、最後まで分からなかったので。

 直接モンスーコへ確かめる事にした。




 中に入ると、意外や意外。

 小屋に見えた外見とは裏腹に、結構広い。

 どうやらヒィ達が入って来たのは、玄関の一部らしい。

 そこから奥に、細い通路が見える。

 左右と奥に、それぞれ分かれ。

 その先に、部屋が在る様だ。

 更に奥へも、部屋が続いているらしい。

 枝の上で連なっている〔小屋群〕は見た目、木造建築。

 それも、軽くて丈夫な種類の木を材料にして。

 釘などで打ち付けているのでは無く、柱に溝を掘り接合させているらしい。

 上から重量が掛かる為、基礎部分は強固になる。

 これで、ガラガラと崩れるのを防いでいる。

 屋根は、ドワーフの町で見られる様な平面では無く。

 人間達の町で一般的に見かける、三角屋根。

 しかも、屋根裏部屋を設ける事が出来そうな位に。

 とんがり部分には、スペースが有る。

 不思議な不思議な、部屋内の空間。

 一行はそれぞれ分かれ、割り振られた部屋に向かう。

 ヒィにてがわれた部屋は、天井に向けて。

 木の梯子が備え付けられてあったので。

 ヒィは興味本位で、それを上ってみるも。

 天井裏に有ったのは、古臭い干し草。

 何かが住んでいた跡みたいだ、所々押し潰されてへこんでいる。

 一通り確認して、下へ降りて来ると。

 ユキマリが、ヒィの居る部屋を覗きに来た。


「へえ、こっちはこうなってるのかあ。」


「部屋によって、造りが違うのか?」


 ヒィはユキマリの言葉が気になって、そう尋ねる。

 ユキマリは答える。


「ビミョーにね。壁に〔×の形〕で、柱が固定されてたりする部屋も有ったよ。」


「そうなのか。」


 部屋によっては、壁等を補強する必要が有ったのだろう。

 それにしても、バラエティーに富んでいるとは。

 ここは、何かの施設だったのだろうか?

 ヒィがそう思う中、ユキマリが付け加える。


「あ、そうそう。あっちで食事を用意してるって。行こっ!」


 ユキマリに手を引かれ、ヒィは部屋を後にした。




 食事を取る事となった部屋は、一段と広い。

 元々、そう言う用途で使用されていたのだろう。

 長い年月で、ここは使われなくなり。

 つい最近、モンスーコが居座った。

 それにしては、岩場に有った小屋よりも。

 年月が経過していない様に感じる。

 まるで、時が止まっているみたいだ。

 その辺りの疑問も含めて、ユキマリはモンスーコへ尋ねる。


「ここって、前からこんななの?」


「〔前から〕、とおっしゃいますと?」


 過剰に敬語となるモンスーコ。

 一行に恐れを成していると言うより、『あのヒナに余計な刺激を与えたくない』との思いからだろう。

 そんなの、ユキマリには知った事では無いが。

 ユキマリは続ける。


「何か新しい気がするし。それに、何処かで見た覚えが有るんだよねえ。」


「それはきっと、【鳥人ちょうじん】の住まいが思い浮かんでいるのでは?」


 おびえ気味のモンスーコに代わり、クロレが答える。

 驚くユキマリ。


「えっ!ここに鳥人が居たの!」


「いや、その。ええっと……。」


『しまった』と言う顔をするクロレ。

 これは、まだ話すべきでは無かった事項。

 そう考えているのだろう。

 クロレの反応で、『余計な事は喋るまい』と。

 ファルもモンスーコも、口をつぐむ。

 シーンと静まり返る、食事の場。

 ユキマリのせいでは無いのに、彼女はシュンとしてしまう。

 その背中を軽くポンポン叩く、リディ。

 幼子おさなごなりの慰め方なのだろう。

 リディの頭をそっと撫でるユキマリ。

 小さな少女の心遣いに、感謝する様に。

 その光景がヒィには、少し微笑ましかった。




 食事の後、それぞれが部屋に戻る。

 結構な部屋数が有るらしい、個々に部屋がてられた。

 但し、リディはサフィと同じ部屋。

 そして、スニーとクロレも同部屋。

 その方が、都合が良いのだろう。

 ヒィは黒っぽい木の床に寝転がって、天井を見上げながら考える。

 大体後2日で、町へ辿り着く筈。

 でもこれまでの出来事からして、すんなりと事が運ぶとは思えない。

 色々なケースを、あらかじめ考慮しておく必要が有るな。

 最初に考えていたより、面倒な事に成りそうだ。

 頭の痛くなる思いを抱えながら、ヒィは就寝する。

 その〔夜〕、普段とは違って。

 森林地帯は静まり返っていた。

 それが、酷い金切り声を上げたヒナのせいだと。

 一行の誰も、気付く事は無かった。




 目覚めた後、早速準備に入る一行。

 状況的に、〔朝食〕となるのだろうか。

 用意された食事を、黙々と取る。

 質問はもう受け付けない。

 そんなかたくなな態度に見える、スニーとクロレ。

 2人を見て、寂しい気持ちに成るユキマリ。

 自分も辛く感じたのか、ヒィがユキマリに声を掛ける。


「お前さんは、何も悪くないさ。気にするな。」


「で、でも……。」


 うつむき加減に成るユキマリ。

 そこへサフィも、声を掛ける。


「あんたらしく無いわね。明るいだけが取り柄なのに。」


「〔だけ〕って何よ、〔だけ〕って。」


「違うの?」


「違うわよっ!」


 両手を上げて、『ムキーッ!』となるユキマリ。

 すかさずサフィが、ボソッと。


「出るじゃない、張った声。ずっと、弱々しかったわよ。」


 ハッとなるユキマリ。

 サフィは既に立ち上がり、そそくさと部屋へ戻っていた。

 彼女なりの励まし方、その不器用さに。

 ウルッと目を潤ませる、ユキマリだった。




 帰路の事を考えて、縄梯子はそのまま残す事にした。

 小屋群は、当面の間モンスーコの管轄下に。

 手を振る一行、引きった表情で振り返すモンスーコ。

 皆の姿が見えなくなってやっと、顔が緩む。

 生きた心地がしなかった、俺もまだまだだな。

 くそう、こんな事でくじけはしないぞ!

 一行が離れた途端、緊張が解け。

 ドッと身体に、疲労感が襲い掛かるも。

 いつもの調子に戻る、モンスーコだった。




 2、3時間程歩き。

 一行は森林地帯を抜けた。

 その先には、またしても草原が広がっている。

 1つ目はオーソドックスな、青々とした感じだった。

 2つ目は、枯れ草の様な薄茶色。

 そして3つ目となる今回は、美しい縞模様。

 帯状に群生しているのか、赤・青・黄・紫等でいろどられている。

 そう、そこに在ったのは〔花畑〕。

 空中じまに来てようやく、咲いている花に出会ったのだ。

 その中を、うねった道が伸びている。

 道に沿って、視線を動かすと。

 遠くに見えるのは、またしても大木。

 どうやら町へ着く前の、最後の休憩場所となりそうだ。

 天高くツンととがった木を目指して、一行は花畑の中を進むのだった。

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