ドタバタファンタジー、始まり始まりーっ!
自分なりの〔ベタな娯楽王道ファンタジー〕として、
今作品にチャレンジしています。
お読み頂ける方が、楽しい時間を過ごして頂ければ幸いです。
どうぞ宜しくお願いします。
「そっちへ行ったぞ!」
「兄貴! 任せとけ!」
ズバッ!
〔少年〕の掛け声に合わせて。
〔男ドワーフ〕が、自慢の斧で斬り飛ばす。
男2人が何かと戦っている、その一方で。
〔少女〕と〔若き女剣士〕が、その様子をうかがっている。
「遣ってる! 遣ってるわよ!」
「この隙に、私が一太刀浴びせてくれるっ!」
ズアッ!
女剣士が、立派な片手剣で相手を切り裂く。
コンビネーションが良いのか、それとも適当に振る舞っているだけなのか。
少女は、女剣士の周りをちょろちょろと動き回っているだけで。
直接、戦闘には参加しない。
どうやら少女は、ヒロイン的な立ち位置に居たいだけらしい。
そうこうしている内に、辺りのモンスターを一通り退けたのか。
森の中は、シーンと静まり返る。
少年は嫌な予感がし、耳を欹てる。
すると、上から何かが降って来る気配。
「みんな! 敵襲に備えろ!」
少年がそう叫んだと同時に。
4人は腰を低くして、ややしゃがんだ体制を取る。
少し離れた所に、『ドッスーーーン!』と大きな音がして。
何者かが地面へ着地したかと思うと。
ザザザザザーーーッ!
木々をなぎ倒しながら、4人の方へと向かって来る。
少年は、少女へ向かって叫ぶ。
「足止めする事は出来るか!」
「あたしを誰だと思ってんの! そんなの、簡単よっ! てーいっ!」
迫り来る音が一瞬止んだかと思うと、『ズズーン!』と言う重低音を発して。
地面にめり込んだらしい、迫って来ていた怪物がもがいている。
「今だっ!」
「おっしゃあ!」
「私も続こう!」
ギシュッ!
ズガッ!
ドシュッ!
肉を切り刻む様な音が、辺りに響く。
数分後、漸く決着がついたのか。
ドカッと地面に腰を下ろす面々。
周りは、モンスターの死骸だらけ。
丁寧に葬る間も無く、死骸は勝手に自然消滅した。
これでやっと、ゆっくり出来る。
ホッと胸を撫で下ろしながらも、4人は乾いた喉を潤す為。
ゴクリと、持っていた水を飲むのだった。
「あたしと居ると、飽きないでしょ?」
「あん? 何だ、今更。」
唐突な少女の言葉に、少年が反応する。
すると男ドワーフが、少女に文句を付ける。
「〔気が休まらない〕だろ? お前の場合。」
「何よーっ! 文句有るのーっ!」
「当たり前だ! お前のせいで、兄貴がどれだけ苦労してると思ってんだ!」
少年を〔兄貴〕と慕う男ドワーフと、プクーッと頬を膨らませて不満顔の少女との間で。
取っ組み合いの喧嘩になりそうな勢い。
険悪な雰囲気の2人に割って入る、女剣士。
『まあまあ』と2人を宥めながら、少年に言う。
「彼女が居なかったら、私達は出会って無かった訳だしな。大目に見ようじゃないか。」
「甘いなあ、相変わらず。」
男ドワーフは、文句が言い足りない様だ。
女剣士の言葉を受けて、少年は。
少女と初めて会った時の、或る一言を思い出す。
《今日からここで暮らすから。こいつと。》
「初めは、『何を言い出すんだ?』と思ったけどな。こんな腐れ縁になるとは。」
しみじみとした感じで、ポツリと漏らす少年。
それに対して、少女は。
「腐ってなんか無ーーーいっ!」
「そう言う意味じゃ無えだろ。」
少女の言葉に呆れる、男ドワーフ。
もう、放って置こう。
一々反応してたら、疲れが何時まで経っても取れねえや。
そう考え、持っていた携帯食をパクつく男ドワーフ。
女剣士も、同様に食べ出す。
少年は冷静な口調で、少女に告げる。
「お前も、今の内に食っとけよ。今度は何時食えるか、分かんないからな。」
しかし、少年が言い終わる前に。
少女は既に、モグモグと食べ始めていた。
何だよ、忠告するまでも無かったじゃないか。
まあ、こんな振る舞いは。
今に始まった事じゃ無いしな。
気にするだけ無駄か……。
少年は気を取り直して、ストレッチで筋肉を解し。
疲れを取ろうとする。
こうして。
四者四様、行動にやや差は有るが。
変なチームワークを発揮し。
4人は何とか、危機的な局面を打開した。
尚も、森の探索を続ける4人。
1主人公、1ヒロイン、1男ドワーフ、1女剣士。
とある町に佇む、或る屋敷で。
訳有って、共同生活をしていたのだが。
これはその日常で有り、非日常でも有る。
どうして、この様な取り合わせとなったのか?
全ては、あの日から始まった。
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或る日。
【フキ】と言う名の町に辿り着いた、1人の少年。
それがこの物語の主人公、【ハイエルト=アジカ】。
ツンと逆立った、獄炎の如き真っ赤な髪がトレードマーク。
町中で住む所を探していた時、偶々少年の前へと現れた少女。
彼女こそ。
この物語の起点となる出来事を、主人公の下へ引っ張り込んだトラブルメーカー。
美少女の外見とはかけ離れた、残念な性格の持ち主である【サファイア】。
名前から想像される通り、美しい濃紺の髪を靡かせており。
その魅惑的な容姿に騙される者、多数。
そんな2人が出会った時点まで遡って、話を始めるとしよう。
男ドワーフと女剣士の初登場シーンは、また後程。
それでは……。