苦労した物ほどおいしく感じるのです。
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「一樹、こっちに追い込んで!」
「来るなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「ほれほれ一樹、こっちじゃぞ」
「いーやーだぁぁぁ!!!!!」
森に僕の悲鳴が響き渡る。
なにこれ、かなりピンチなんですけど!?
なんでこいつ俺しか狙わないの!?
『グルルルル・・・』
「もう嫌だ...」
バキッという嫌な音がして後ろの木が倒される。
「ほらっ!早くして!」
そう言うと桜はこっちに走り、僕とすれ違いに奴の懐へ飛び込んでいった。
「あ、危ないよ!」
僕が叫んだ時にはもう遅く、桜の上から奴の顎が下りてきて噛みついていた。
―――――丸太に
「はぁ?えっ?えっ??」
いつの間にそこに丸太が現れたのだろうか?
さっき僕が走り抜けた時には確かになかったはずだけど・・・
「おじいちゃんナイス!」
じいさんがやったらしい。なんて馬鹿力だ。
「ふぉっふぉっ、ほれほれ次が来るぞ~」
じいさんの言う通り奴は丸太を放してまたこちらを狙っていた。
「って、あれ?」
何だか様子がおかしい。なぜあいつは首を上げない。
「どうやらあれくらいの強度で良かったらしいですね。少し不安でしたが安心しました」
「強度?何の?」
「奴の首元を見てください」
「首元?」
僕は言われた通り首元を見てみた。
―――キラリ―――
...?何だ?何かが光ったぞ?
よく見ると一本のワイヤーが奴の首を動かないように押さえつけていた・・・
って、あのワイヤーって・・・
「あれってもしかして僕を助けてくれた時のワイヤー?」
「そうですよ?」
うん。やっぱり間違えていなかったようだ。
「でもラクショーでしたね♪」
「ラクショーって...あれが?」
「そうですよ?だって奴は生態系の中でも比較的下の方ですよ?」
「そうなんだ...」
あれより上の奴がうようよいるところを想像して寒気が走る。
「ほら、そろそろ行きましょう?」
「え?あいつはどうするの?......って早!?」
奴のほうを振り向いた僕は驚いて腰を抜かすところだった。
「ほっほ、早く仕留めないと危険なのでな」
そこには奴のお肉を入れたであろう白い大きな袋を持ったじいさんが...
「サンタクロース?」
まさにサンタクロースのような格好で立っていた。
(これで中に肉じゃなくてプレゼントが入っていたら完璧なんだけどな)
そんなのんきなことを考えていると、
「ほら、帰りましょうって」
「ん?ああ、そうだね」
確かにもう食材は手に入ったしリベンジはしたし...
「じゃあのんびりと帰ることに...」
「はやくしないと虫が寄ってきちゃうから・・・」
「OK。急いで帰ろう」
早く帰ってからのんびりしよう。そうしよう。
「あの~、私は虫も狩りたいんじゃが...」
「ん~…そうですね、それもいいかも・・・」
「早く帰りましょう。そうしましょう」
また狩りなんて絶対に御免だ。
「「?まぁ、良いか」」
桜とじいさんは訝しむような視線を送ってきながらも了解してくれた。
「また明日行くことにしましょう」
「そうだな」
「えぇ!?」
どうやらまだ諦めてなかったらしい。
「また囮、よろしくね」
「えぇ~...」
そして僕は囮係に任命されたらしい。
こうして僕の明日の予定は半ば強引的に決まった。
P.S.
その晩御飯に食べた奴の肉で作ったシチューは凄く美味しかった。