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序章 第三話 カガミと八尺瓊勾玉(ヤサカニノマガタマ)

 「んーっ…よく寝た…」


 慧は大きく伸びをした。


 周囲は何もない真っ白な空間である。


 「さて、稽古を始めるかのう」


 振り返るとオモイカネ様がいた。


 「まずは八咫鏡ヤタノカガミと会話してみい」


 言われた通りに念じてみる。


 「やっっほー。私はカガミ。よろしくね」


 あ。よろしく。俺は


 「ケイでしょ? ムラクモに聞いたわ。私もケイって呼んでいい?」


 どうぞどうぞ


 「この姿はね、本来の姿じゃないの。一度、思兼神オモイカネ様に渡してもらえるかな?」


 俺はカガミをオモイカネ様に渡した。


 「ふむ。やはり初期状態じゃの」


 オモイカネ様の7の文字から青いレーザーのようなものがカガミに降り注ぐと、10cm程度の銀色に光る何かに変わった。


 「ケイ、手に取ってみい。アップデート完了じゃ」


 両手で優しくつかんでみる。


 なんとなくだが、優しくつかんだ方がいい気がした。


 銀色の光の中心から金色の光に変わっていく。


 サイズも30cm程度まで大きくなった。


 そして、俺の後頭部のあたりに移動して、そのまま浮いている。


 「これでおっけーよ。ケイはレディの扱いが上手ね」


 それはどうも。ところで、これが本来の姿なの?


 「そうよ。能力は自動防御と自動攻撃。ケイの能力の神攻と神防は私がうけもつわ」


 自動防御ってことは俺は防御しなくてよくなるの?


 「ある程度の攻撃は無視していいわよ。問題はレジストできないレベルの攻撃を見極められるかどうかね」


 なるほど


 今更だが、この神器や神様達の会話は古さを感じない。むしろ最先端か?と思わせる。


 「それはそうじゃろ。ワシらの庇護を強く受けた者が人間界で開発しとるからのう。リンゴの開発者はほぼ覚醒状態と言っても差し支えないレベルで能力を発揮しておったな。正確に言えばワシらではなくガブリエルの庇護じゃがの」


 オモイカネ様、思考を読むのを止めてください。


 「すまんかったのう。むしろ、テレパシーだと思って慣れて欲しいのう。読まれるのが嫌なら遮断もできるんじゃぞ? 特定の相手にだけメッセージを伝えることもできるんじゃ」


 どうしたらできるんですか?


 「頭に薄い膜を張るイメージじゃな。力ではなく、神気を使うイメージじゃ。わかりやすく言うなら、MPを使うのじゃ」


 すげーわかりやすいです。


 イメージ完了。この状態で『オモイカネ様のあほぅ』と思ってみる。


 「ワシの悪口を言った気がするのう…」


 うは。なんという勘の良さ。


 「まぁ、よしとするかのう。さて、特訓じゃ」


 「ワシの攻撃を受ける、いなす、自動防御に任せるなど、最適の対応をするのじゃ。ワシに隙があればムラクモなりカガミなりの攻撃をしてきて構わんぞ。ワシに当てることができれば終了じゃ」


 特訓がスタートした。






~皇居~


 屈伸を繰り返す一人の少女。


 見た目は15~16歳前後。


 黒のランニングウエアにナイキのランニングシューズを履いている。


 髪は黒く、美しい光沢がある。


 ポニーテールに結んでいた。


 「よし。新年一発目! いっくぞー!」


 少女は勢いよく皇居を走り始めた。


 幼さが残る、涼しげな眼をした美しい少女はお気に入りの音楽を聴きながら順調に走り始める。


 「今年は優勝したいなぁ」


 昨年、空手の大会で準優勝だった。


 最後の最後で相手のフェイントにつられた。


 あの時、ヤバイ! と直感が訴えていた。


 しかし、体を止めることができなかった。


 「もっと強くなりたい」


 そう思った瞬間、彼女はどこかの山にいた。




 「はい?」


 「ここ…どこ?」


 「ここは白神山地だ。太古から姿を変えず残る、数少ない山と森だ」


 振り返ると逞しいおっさんというか、おにーさんというか微妙な感じの男の人が歴史の教科書に出てくる弥生時代とか古墳時代の人が着るような服を着て立っていた。


 「あの…どうして私が白神山地に?」


 「ほう。なかなか肝が据わっている。俺の名は素戔嗚尊スサノオノミコトだ。よろしくな。スサノオと呼んでくれ」


 「よろしくお願いします」


 ぺこりと頭を下げた。ポニーテールがふわりと揺れた。


 「な、なんと美しい娘だ。いかん。いかんいかん。奇稲田姫クシナダヒメに離縁されてしまう。しかし。美しい」


 「あのー、どうして私がここにいるのか教えてもらえますか?」


 「ああ、そうだな。すまない。まずはお主の名を教えてくれんか?」


 「私は纏。櫛名纏くしなまといです」


 「櫛名というのか?」


 「はい」


 「これは運命さだめだな。面白い」


 「さだめ? ですか?」


 「俺の嫁と似た名だ。見た目も似ている。強く庇護を受けているのだろう。名前もまといだ。勾玉の力と相性が良い」


 「よくわからないのですが…」


 「纏。お主は俺の代理として、頭のおかしい俺の姉と、空飛ぶCPUもどきの手下と戦ってもらいたい」


 「は?」


 「まぁ、聞け。俺には勘違いという痛いスキルを持った姉がいてな。勘違いや早とちりで殺されかけたことが何度かある。その姉が、勘違いで選んだ人間が、大和の戦人せんじんとなって戦うのは心許ないのだ。そこで、力の神である俺が選んだ纏に戦人せんじんとなってもらいたいのだ」


 「なんとなーく理解はしたのですが、私がその戦人せんじんになって皆の前からいなくなったら、親や友達が心配します」


 「それは安心しろ。下界との時間は一億倍になっている。分かりやすく言えば1秒が三年だ」


 「つまり、誰にも気づかれずに戦えるってことですか?」


 「そういうことだ」


 「戦うのは分かりましたが、どんな戦いですか?」


 「相手を消滅させるまで戦う」


 「なっ!」


 「安心しろ。ここにいる纏は精神の姿だ。肉体に傷はつかない」


 「しかし…精神が失われたら…」


 「失われはせん。庇護は消えるがな」


 「つまり…私は弱くなるってことですか?」


 「まぁ、そうなるな・・・」


 自分には何か特別な戦う才能があるのは薄々自覚していた。そして、全国大会レベルでは努力ではどうにもならないセンスを持った相手がいることも体で理解していた。


 努力もした。三歳から始めた空手は、週に五日、休まず稽古を続けた。稽古がない日は、ランニングなどのフィジカルトレーニングを自主的にしていた。


 だからこそ、弱くなるのは嫌だった。




 「私…戦います…」


 「そうか!ならば俺が戦闘の手ほどきをしてやろう。纏、この光る珠を掴むのだ」


 目の前には小さな銀色の珠が浮いている。


 右手でそっと掴むと、美しい勾玉が手の中にあった。


 「その勾玉の名は八尺瓊勾玉ヤサカニノマガタマだ。念じてみろ。纏なら会話ができるはずだ」


 光に当たっているわけではないのに、手の中の勾玉は七色に輝いている。思わず、「綺麗…」と声が出た。


 「ありがとよ。オイラはタマって呼んでくれ」


 頭の中で声がした。直感で勾玉なんだと理解できる。


 私は纏。タマ、私戦うのよ。


 「知ってるぞ。でも安心しろ。纏はオイラに対する適正が最大値だ」


 そうなの?


 「そうだよ。胸にオイラを当てて、光を纏ってみなよ」


 言われた通りにすると、黒かったランニングウエアはうっすらと七色に輝く、白いランニングウエアに変化した。とても軽く、動きやすい。


 「纏が動きやすいと思った姿になれるんだよ」


 すごい…


 「さて、準備はいいな? 俺は言葉で教えるのが苦手だ。纏、消滅するなよ? 手加減はするが加減は難しいからな」


 



 スサノオは私の顔面にいきなり渾身の右ストレートを放った。


 受けられない。直感的に理解する。女の子の顔に容赦なくストレートを叩き込めるなんて、スサノオは危ないおっさんだ。


 スウェーで躱し、カウンターで顎を蹴り上げる。


 あっさりと掌で止められた。


 「んー。いいセンスだ。素晴らしいぞ! 久しぶりにまともに戦えそうだ! うおおおおおおおおおお! 朱雀よ我が四肢に宿れ!」


 スサノオも黒いランニングウエアの様な服装になる。やはりうっすらと輝いている。両手、両足は燃えている。なんで?


 スサノオの怒涛の波状攻撃が始まる。


 ジャブだと思った突きは私が逃げる方向へ軌道を変える。


 なんとか捌いて、いなして、弾いて、直撃だけは避けた。


 掠っただけで熱い。


 「マトイ! 両手両足に神気をこめろ!」


 タマの言う通りに力を込めると、私の四肢は金色に輝いた。


 「ほう。もう神撃をマスターしたか。玄武! 俺を護れ!」


 スサノオの四肢以外に青い膜が張っている。


 スサノオは防御無視で攻撃をしかけてきた。


 左のジャブをスウェーで避けると、もう一歩踏み込んで右のストレートが繰り出される。サイドステップで避けたが、嫌な予感がした。


 とっさに左のボディーを叩き込むが青い膜に遮られる。


 コンクリートでも殴ったのかと思うほど堅い。


 スサノオの右手が私の頭を掴んだ。


 持ち上げられ握り潰す気かと思うほど強く握り締められる。


 膝がスサノオの顔の位置にあったので撃ち込んだが、またもや青い膜に遮られる。


 そして、そのまま地面に叩きつけられた。


 受け身をとったが死ぬほど痛い。


 精神体でも痛いよ。


 涙が出そうになる。


 鼻の奥がジーンと熱い。


 泣くもんか。


 「マトイ、涙目だな」


 ニヤリとスサノオが笑った。


 その時、私の中のなにかが吹っ切れた。


 強く踏み込み、左の前蹴りでスサノオの水月を狙う。青い膜に当たり強烈な衝撃が来るがそのまま突き抜いた。つま先が砕けたような感覚があった。


 激痛にこらえながら水月にめり込んだ足を軸にして右の回し蹴りを頭部に叩き込む。これも青い膜を突き破ったが、左腕でガードされた。すねの骨が砕けた感覚があったが、左腕をへし折るつもりで振り抜き、そのまま一回転して左の肘でスサノオの顔面を撃ち抜いた。




 スサノオは吹っ飛んだ。私は着地できずにそのまま落下した。折れた足で着地できないもん。


 「な? なにいいいい? マトイ? おまえ、スサノオを倒した?」


 タマが衝撃を受けている。


 すぐにスサノオが立ち上がった。


 ケロリとしている。


 なんだぁ。ダメージないじゃない。


 「ふ…ふふふ…ふははははははははは!」


 「マトイ! 想像以上だ! 俺の全盛期に近い! これならゼウスの眷属にも勝てるかも知れん!マトイには四神の力も授けよう!」


 スサノオがそう言うと、四匹の獣が現れた。


 「こいつらは朱雀・白虎・青龍・玄武だ。俺を倒したなら使役できる。こいつらに向かって勾玉をかざせ」


 十秒程度かな。激痛に耐えていると痛みは消えた。言われた通りに勾玉をかざすと四匹の獣はタマに吸い込まれていく。


 「さて、準備はいいな?」


 「はい。相手を倒せばいいのですね?」


 「そうだ。相手が消滅しても死にはしない。思う存分殴ってこい。四神の使い方は感覚的に分かるはずだ」


 「わかりました」




 私は青と白と黒の空間に飛ばされた。




~纏のステータス~


  櫛名 纏(四神の主)


 特性 高天原(たかまがはらの民)

 適正 戦人せんじん

 武器 八尺瓊勾玉ヤサカニノマガタマ 攻撃力0 防御力1700

 防具 神代かみよの戦衣 防御力600 回避800 神防700

 HP  750

 MP  300

 攻撃  200

 防御 2560(+2300)

 神攻  200

 神防  950(+700)

 回避 1220(+800)

 命中  600

 残     0


 スキル 直感(A+)

     朱雀の烈火(A攻撃+1000 神攻+1000)

     白虎の玉鋼(A神防+1000)

     青龍の樹海(A回復速度上昇)

     玄武の濁流(A防御+1000)

纏さん。慧よりチートです。主人公交代か?


読んでくださった読者の皆様、そして、ブックマークしてくださった方、本当にありがとうございます。リアルは前話の田川さんみたいな生活なんですが頑張って更新します!

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