表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/6

序章 第二話 ムラクモと八咫鏡(ヤタノカガミ)

 初詣に来たのは何年ぶりだろうか。


 「今年はスタッフ全員で初詣だな!」


 朝令暮改が日常茶飯事の社長は仕事納めの後、唐突に言い放った。


 これぞブラック。恐るべし。


 予定が入っている社員も多かろうに…数名が悲痛な表情で、数名が最高の作り笑いを浮かべ、残りは唖然とするか、無表情で受け入れるかのどちらかだった。


 初詣に参加しなかったら解雇すらありえる。


 それが原因で解雇にはならないだろうが、執拗な社長のイビリが始まるのは目に見えていた。


 実際、三年前の社員旅行に参加しなかったスタッフは誰も残っていない…


 早朝から会社に集合し、皆で伊勢神宮へと向かった。


 地元で飲食店を数件経営しているウチの会社は、年末は30日まできっちり営業し、年始は2日から始まる。


 31日は大掃除だっただけに、ある意味、休みはゼロだ。


 社長の取り巻きの役員数名が世間話に花を咲かせていた。


 腰巾着め…


 他のスタッフは言葉少なく参拝に向かう。


 早朝だけに三十分も待たずに参拝できそうだ。


 何を願おう…今年で28歳になる。彼女はいない。できたとしても、この仕事じゃ別れるのは目に見えている。もっといい仕事が見つかるように?仕事を変えようと思う気力すら日々の忙しさに埋もれてしまう。どこか…どこか遠くに行きたい…


 俺は、ただただ、逃げたかった…




 そして、この海岸である。


 穏やかな海。青い空。どこなんだここは。


 疲れてるのか?過労で倒れたか?


 もしかして、ここって天国?


 「違いますよ」


 背後から声がした。


 ありえないレベルの美女が背後に立っていた。


 「私は天照大神アマテラス。貴方は戦人せんじんとなって戦う運命さだめです」


 はい?意味がわからん。


 「いきなりで驚いたでしょうが、これは神々の決定なのです」


 またしても背後から声がした。


 おおう。アマテラスさんほどではないが、こちらも美しい。


 「私は豊受大神トヨウケヒメ。さぁ、アマテラス様の仰せの通りにするのです」


 俺にどうしろと…


 「まずは、声を出して話なさい」


 あ。言われてみれば確かに。ん?考えてることが読まれてる?


 「その通りです」


 「あ…ええと…すいませんでした…」


 「謝らなくて結構です」


 「あの…これって神々に呼び出されて転生とかするんでしょうか? それとも、このままの姿で勇者となって、どこかの世界で魔王とかドラゴンを倒すのでしょうか?」


 アマテラスとかいう、最初の美人が答えた。


 「そのどちらでもありません。貴方には神々の武器を使う資格があるのです。その武器を使い、同じ境遇の者達と戦い、勝利しなさい。見事勝ち残れば願いを叶えてあげましょう」


 どうせ夢だろうと思い、適当に返事をした。


 よくわからん、小さな鏡を渡され、変な世界に飛ばされた。






 相手はまだ来ていないようだった。


 鏡に意識を集中してみるとレーザーのようなものが出た。


 適当にレーザーを出す練習をしていると、前方の空にドアと同じくらいのサイズの金色の光が現れて、中から白い鎧を着た若い男が出てきた。


 一瞬躊躇ったが、どうせ夢だ。


 俺は容赦なく銀髪の男にレーザーをブチ込んだ。






~慧~


 空間を斬るって、どうしたら斬れるの?


 「簡単さ。斬りたい場所を想像すりゃいい。そして目の前の空間を斬るんだ。あとは勝手に空間と空間が連結されて、ケイが望んだ空間に斬撃が発生する」


 この空間に来るなり撃たれまくってるから、斬りたい場所を想像するにも、頭にビジョンが浮かんでこないよ?


 「じゃあ、相手を強く思い浮かべてから目の前の空間を斬るんだ。相手が高速で動き続けていれば当らないが、止まっているなら直撃するぞ」


 相手…確認する前に顔面吹っ飛ばされたんだけど…


 「策はある。オモイカネに貰った鎧は数発じゃ貫通できん。右目を守りながら隣の壁まで全力で走れ。攻撃が頭部以外に来たら相手を見るんだ」


 わかった。やってみる


 ムラクモを鞘に納めてから深呼吸をして、地面を強く蹴った。


 それだけで50m以上横っ飛びができた。


 両腕で顔を守りながら飛ぶ。


 10発以上、顔に向けてレーザーが来たがオモイカネの籠手は護りきった。両腕が激しく痛む。痛むが千切れてはいない。


 腹部にレーザーが来た瞬間、俺は相手を見た。




 田川真二タガワシンジ(人間)


 特性 高天原たかまがはらの民

 適正 戦人せんじん

 武器 八咫鏡ヤタノカガミ 攻撃力900 神防400

 防具 なし

 HP   240

 MP   120

 攻撃  1150(+900)

 防御   104

 神攻     0

 神防   450

 回避   150

 命中   250

 残      0


 スキル 暁を破る光(B-)




 見えたっ!


 そう思った直後、顔面にレーザーが直撃した。


 まずい!壁が見えない!


 「ケイ! ここで止まれ!」


 ムラクモが叫ぶ。即座に体勢をひねり、壁に腕が引っ掛かる様に伸ばす。


 丁度、掌に壁の端があたり、力任せに体をストップさせる。


 急激に止まることで肩が抜け、壁に背中を叩きつけられた。


 まずは立ち上がり、背中に壁をつけ息を整える。


 レーザーを受けた両腕と顔面はきっとひどいことになっているだろう。


 十秒程度だろうか。頭がおかしくなるレベルの痛みに耐えると視力が戻り、傷はなくなっていた。そして、鎧も自動修復されていた。


 「ケイ! 良くやった! あとは相手を強く思い浮かべて叩っ斬れ!」


 相手の顔を思い浮かべた。


 疲れた表情をしたおっさんだった。


 この国にありがちな顔。


 どこにでもいる顏。


 うまく言えないけど、終わらせなきゃと思った。


 力いっぱい、ムラクモを振り下ろすと背後の壁の向こうから叫び声が聞こえた。


 覗いてみると、相手の姿はもう消えていた。


 立っていたであろう場所には、5cm程度の光る珠が浮いている。


 「ケイ、あの球に触れろ。それでお前の勝ちだ」


 言われた通りにしてみると、体に新しい力が流れ込んだような感覚があった。


 そして、草原に戻っていた。


 アマテラス様がにっこりと微笑んで迎えてくれた。


 「ケイ。お疲れ様でしたね。見事な勝利でした」


 「ムラクモのおかげですよ」


 「あら。もうムラクモと話せるようになったの?」


 「はい」


 「ならば、次の戦いまでに八咫鏡ヤタノカガミとも話せるようにならなければ」


 アマテラス様の隣にいるオモイカネ様が口を開いた。


 「これでワシが稽古をつけてやれるのう」


 次の戦いまでオモイカネ様が鍛えてくれるらしい。


 とりあえず疲れたな。


 俺はその場で倒れるように眠ってしまった。




 「思兼神オモイカネ。予想通りでしたね。いえ、予想以上かも知れません。適正より魂の美しさで選んで正解でしたね」


 「ケイは魂に穢れがないですのう。いきなりムラクモと会話できる人間なんぞ、清盛くらいかと思ってましたが」


 「田川も適正だけならばケイを凌駕していましたが、魂が擦り減っていました。それでは適正も半減します。何より、穢れた魂の人間が戦人となっては困ります」


 「それでも勝ってしまう時がありますからな。悲惨な歴史が刻まれるのはもうこりごりですじゃ。なぁ、豊受大神トヨウケヒメよ」


 「あら。私が来たことに気づいていたのね」


 「ワシを誰だと思ってるのじゃ」


 「二人ともおやめなさい。次の相手は恐ろしいわよ。」


 「素戔男尊スサノオ八尺瓊勾玉ヤサカニノマガタマですな。」


 豊受大神トヨウケヒメが口を開く。


 「私もケイを後押ししましょう。彼に神代かみよの衣を授けます」


 




 ケイが目を覚ますと真っ白な空間にいた。



~慧のステータス~


  緋山 慧(人を超えつつある者)


 特性 高天原たかまがはらの

 適正 戦人せんじん

 武器 天叢雲剣アメノムラクモ 攻撃力1500 防御力400

    八咫鏡ヤタノカガミ 神攻600 神防400

 防具 神代かみよの鎧 防御力600 回避200

    神代かみよの衣 防御力100 神防200

 HP  414

 MP  100

 攻撃 1712(+1500)

 防御 1304(+1100)

 神攻  700(+600)

 神防  650(+600)

 回避  403(+200)

 命中  480

 残     0


 スキル 神眼(B-)

     時空斬(S-)

    暁を破る光(B-)

 ※慧は八咫鏡ヤタノカガミの本来の力を発揮できる為、田川使用時とは異なった数値です。




~田川~


 ん?


 一瞬、意識が飛んでいた気がする。


 どこか遠くへ行きたい…どこか…


 どこか…


 どこか何てどこにもないっ!


 俺は何を弱気になっているんだ。


 どうせ変わらないと諦めて、情熱も何もかも失っているじゃないか!


 今年は変えよう。できることから始めよう。


 いつもより軽い足取りで帰宅し、明日に備えて寝ることにした。


 憂欝さは不思議と消えていた。


 今年は何か変われそうな気がしていた。






高天原たかまがはら

 

 思兼神オモイカネは下界の田川の様子を見ていた。


 「ふむ。田川は田川で穢れを減らしたようじゃの。たった一戦とは言え、無駄にならなかったようじゃな。しかしのう…」


 「ケイの振る刀は穢れを断ち切るか…面白くなってきたのう…」

オモイカネの特訓がスタート!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ