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序章 第一話 ケイと天叢雲剣(アメノムラクモ)

 まずい。


 非常にまずい。


 いきなり終了しそうな勢いである。


 空が青い。抜けるような青さだ。


 セルリアンブルーの空を見て、美しく磨かれた白い大理石のような足元を見た。


 大きく息を吸い込んで、地平線を見る。


 どこまでも続く、雲一つない青空と白い大地。そして、規則的に直立する黒いモノリス。


 俺は縦2m横1m厚さ10cm程度の黒い大理石のようなモノリスの後ろに隠れながら、次の手を考えあぐねていた。


 相手は100m程度の距離にいる。隠れもせず、直立不動で立っているはずだ。


 おそるおそる顔を出し様子を伺おうとすると、瞬時に激しい光が顔面を襲う。


 熱い。


 すんげー痛い。


 正気を失いそうな激痛が走る。


 自分の顔に触れてみると、眉間を中心に10cm以上の大穴が開いていた。


 元の位置に戻り、呼吸を整えながら回復を待つ。


 数十秒で視力が戻った。穴もふさがっている。よく分からないが、そういうものらしい。


 このままここにいても埒があかない。


 俺は天照大神アマテラス思兼神オモイカネの言葉を思い出してみた…





 2015年、元旦。


 センター直前で初詣なんてしている暇はないのだが、通っているゼミの年末特別強化合宿とやらでクリスマスも何もなくアホみたいに勉強をし、大晦日の深夜に帰宅した俺は、そのまま泥のように眠り、正月を迎えた。


 「初詣行こうぜ!」という友人達のメールで目が覚めた俺は、断ろうかと迷ったが、ここまできたら神頼みも悪くないと思い、地元にある熱田神宮に行くことにした。


 適当なジーンズに適当なトレーナーを着て、これまた適当なコートを羽織る。


 大学に受かれば彼女とかできるでしょと考えていた俺は、ここ一年、服装や髪形に興味がなくなっていた。髪は伸びすぎていて正直、キモいと思う。


 寝癖を直すのもめんどくさいので、ニットを被り待ち合わせ場所に向かった。


 難なく友人四人と合流し、神社に向かう。


 俺のキモさに友人達はゲラゲラ笑っている。うるせーぼけ。死ね。と思ったが、ここまでウケてくれるならそれもまた良し! と開き直った。


 熱田神宮は予想通り混んでいた。


 世間話をしつつ、参拝の順番を待つ。


 一時間程度で順番が来て、俺は千円を投げ込み神頼みをした。




 と、思ったら草原にいた。


 目の前には絶世の美女がいる。


 巫女さんのような服装だが、遥かに絢爛豪華な恰好だ。頭には太陽?みたいな飾りが輝いている。


 なんのコスプレなんだろうか。


 そして、隣には「7」と書かれた光り輝くマイクロプロセッサみたいなものが浮いている。


 どういう原理で浮いているのだろうか。


 現状を理解することができず、俺はフリーズした。


 たぶん、ポカーンというふきだしが似合うくらい、アホみたいな顔をしていたと思う。


 「ふむ。驚いたじゃろうが、まずは落ち着いて聞いてほしい」


 謎のマイクロプロセッサから重厚なおっさん風の声がした。


 「うわあ!」


 「何? 何なの?」


 「何のイベント? どうなってるの?」

 

 美女が口を開いた。


 「まずは落ち着いて」


 「私は天照大神アマテラス。この国の太陽を司る神。あなたの名前は?」


 透き通った、耳障りの良い、この世のものとは思えない美声に俺は正気に戻ることができた。


 「俺は…緋山慧ヒヤマケイって名前です」


 「慧…良い名前ですね。ケイと呼んでいいかしら?」


 「構いません」


 「ありがとう。ケイ。では、思兼神オモイカネの話を聞いてください」


 「わかりました」


 謎のマイクロプロセッサはオモイカネっていうのか。


 てか、アマテラスとかオモイカネって古事記やら日本書紀に出てくるような神様じゃん!


 そして、この展開って小説とかゲームとかのやつじゃ…

 

 などと考えていたら、マイクロプロセッサが輝きだした。 


 「ワシもケイと呼んで構わんかね?」


 「あ、どうぞどうぞ」


 「ふむ。さて、ケイよ。そなたにはやってほしいことがる」


 「なんでしょうか?」


 「三種の神器を集め、この大和やまと戦人せんじんとなり、世の戦人せんじんと戦ってほしい」


 「無理です」


 俺はマッハで即答した。


 「そもそも、センター試験があるので時間がありません」


 「ふむ。学問を修めようとするのは素晴らしいことじゃ」


 「時間に関しては心配せんでもよい。時はほぼ止まっておるゆえな」


 「俺、戦えないっす。この一年で太ったし。日頃から運動してないです。格闘技とかは高校の授業の柔道くらいしか経験ありません。そもそも、なんで俺なんですか?」


 「適正があるからじゃよ」


 「適正?」


 「説明するより見せた方が早いじゃろ。どれ」


 オモイカネはいきなり俺の右目に張り付いた。


 「熱っ!」


 「右目でワシらを見てみい」


 おおおおおおおおお。なんか、頭上に名前が出てる。


 アマテラス(最高神)オモイカネ(上位神)


 「足元を見てみい」


 うおおおおお。足元が透けて見える。あれは、熱田神宮じゃん。


 参拝に来ていた人達全てに名前やら数字が見える。


 とりあえず友人を見てみた。


 


 田山 雄二(人間)


 特性 なし

 適正 なし

 HP   18

 MP    0

 攻撃   15

 防御    8

 神攻    0

 神防    0

 回避   13

 命中    6

 残     0

 

 スキル なし


 


 なんぞこれ。まるでゲームじゃん。


 「神眼を与えたのじゃ」

 

 「あれ?アマテラス様とオモイカネ様は名前しか見えないですよ?」


 「ある程度の差なら見えるのじゃが、圧倒的な格の差があると名前と種族しか見えん」


 「なるほど」


 「ケイ。自分の能力を見ようと念じてみい」


 「わかりました」



 緋山 慧(人間)


 特性 高天原たかまがはらの民

 適正 戦人せんじん

 HP   14

 MP    0

 攻撃   12

 防御    4

 神攻    0

 神防    0

 回避    3

 命中    4

 残  1286

 

 スキル 神眼(B-)




 数字だけみると非常にうん〇だな。運動してないとは言えども、これはやばい。


 残ってのはボーナスポイントみたいなものなんだろうか。


 「わかったじゃろ?ケイ、オヌシにはワシらの力が宿っておる。目覚めてないだけなのじゃ」


 「俺が選ばれた理由はわかりましたが、戦人せんじんって、戦うんですよね?」


 「うむ」


 「怪我したり、死んだりするんですよね?」


 「死にはせん。怪我もせん。死んだら庇護を失い、普通の人間に戻るだけじゃ」


 「あの…怒らないで教えて欲しいんですけど、勝つとなんかメリットとかあるんですか?」

 

 「オヌシにワシらの庇護が強力につく。行きたい大学ならどこへでも行けるじゃろ」


 「センターの問題を全て勘だけで書いても、間違いなく満点になるじゃろうな」


 「え? なんすかそれ。チートじゃないですか」


 「天照アマテラス様の庇護はもっと凄いぞ」


 「どんな庇護なんですか?」


 「悪用さえしなければ、そなたの人生は限りなく輝くじゃろう」


 「もう一度聞きますけど、時間は止まってるんですよね?」


 「そうじゃ」


 「やります。俺、戦います」


 天照大神アマテラスはにっこりと微笑んだ。


 「ありがとう。ケイ」


 「それではそなたに、天叢雲剣アメノムラクモを授けます」


 目の前に銀色に光り輝く棒状の物体が現れた。長さは1m以上ある。


 「手に取ってみなさい」


 光の両端を両手でつかむと、真っ白な鞘に納まった真っ白な拵えの日本刀が現れた。刀身はうっすらと銀色に輝いている。


 オモイカネが口を開く。


 「ほう。白か。これは期待できそうじゃな」


 「さて、ケイよ。自分の能力を解放するのじゃ」


 俺はもう一度、自分のステータスを念じてみた。




  緋山 慧(人間)


 特性 高天原たかまがはらの民

 適正 戦人せんじん

 武器 天叢雲剣アメノムラクモ攻撃力1500 防御力400

 HP  414

 MP  100

 攻撃 1712(+1500)

 防御  504(+400)

 神攻    0

 神防    0

 回避  203

 命中  290

 残     0

 

 スキル 神眼(B-)




 すげ。勝てそうな気がしてきた。


 たるんだ体が引き締まっている。伸びきった髪が銀髪に変化していた。


 天照大神アマテラスが優しく語りかける。


 「これにてケイは戦人せんじんとなりました」


 「困った時は天叢雲剣アメノムラクモに聞きなさい。きっと助けてくれます」


 思兼神オモイカネも優しく語りかける。


 「いきなりで驚いたじゃろうが、頑張ってくれい」


 「これはワシからの贈り物じゃ」


 俺の体に銀色の粒子が集まり、これまた真っ白な胴鎧と籠手とブーツが顕れた。


 正直、かなりかっこいい。


 「デザインは今風じゃろ」


 「さて、そろそろ相手も来てるはずじゃ」


 「そのようですね。ケイ、私たちはいつでも貴方の側にいます。心を強く持って困難に打ち克ってくださいね」


 天照大神アマテラスが微笑むと、俺は青空と白と黒の大理石で構成された世界に飛ばされていた。


 あ…そもそも、なんで戦う必要があるのか聞いてなかった…








 「困ったら天叢雲剣アメノムラクモに聞けか」


 このまま壁の後ろにいてもジリ貧だ。


 俺は天叢雲剣アメノムラクモを握り締め、強く念じてみた。


 「おっせーよ! 何度も語りかけてるのに、早く気づけよ!」


 うおお。なんか聞こえる。


 「俺は天叢雲剣アメノムラクモだ。ムラクモでいい。よろしくな」


 うん。よろしくお願いします。


 「さて、相手は八咫鏡ヤタノカガミだな」


 あ。そうなんだ。


 「あれはやばいぞ。無限にレーザーを撃てるからな。今のケイでも5発も直撃したら消滅する」


 見えた時には直撃してるんだけど…


 「そりゃそうだ。相手は光だからな」


 そんなん無理じゃん。勝てないじゃん。


 「普通はな。だけど、俺はムラクモだぞ? ケイは俺の能力知らないだろ?」


 うん。知らん。


 「俺はな」


 












 「空間を斬れるんだぜ?」




 ~現時点の慧のステータス~

 

  緋山 慧(人間)


 特性 高天原たかまがはらの民

 適正 戦人せんじん

 武器 天叢雲剣アメノムラクモ 攻撃力1500 防御力400

 防具 神代かみよの鎧 防御力600 回避200

 HP  414

 MP  100

 攻撃 1712(+1500)

 防御 1104(+1000)

 神攻    0

 神防    0

 回避  403(+200)

 命中  290

 残     0

 

 スキル 神眼(B-)

     時空斬(S-)




 ~相手のステータス~

 名称不明(人間)


 特性 高天原たかまがはらの民

 適正 戦人せんじん

 武器 八咫鏡ヤタノカガミ 攻撃力不明 防御力不明

 防具 不明

 HP   不明

 MP   不明

 攻撃   不明

 防御   不明

 神攻   不明

 神防   不明

 回避   不明

 命中   不明

 残    不明

 

 スキル 不明

次回予告!


ムラクモの能力が解放され、三種の神器が揃っていく。

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