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圧勝

「GYAAAA!」


言葉にならない声で野鎌が咆える。咆哮だけで空気を震撼させ、周りの電線にとまっていた鳥たちが逃げていく。野鎌の瞳からは理性が消え失せ、言葉も話せないのかもしれない。そんな中、時雨は静かに野鎌を観察して一度クスリと笑ってから拍手を送る。


「いやぁ、本当に面白いものを見せてくれるね。形態変化なんて…それに妖力でドーピングしているようにも見える」


野鎌を笑顔で評価していく。野鎌はその気持ち悪いほどの落ち着き具合に後ずさりをする。そんな、野鎌を観察し続けて時雨は言う。


「で?…それだけかい?」


そういった途端、周囲から音が消え野鎌の動きが止まる。時雨は拍手を止め笑顔を作ったままに野鎌に無造作に近づいていく。野鎌は半分ヤケ気味に時雨に切りかかる。


「GURUUUUA!」


先程と比較できないほどの速さで時雨を攪乱かくらんしてくる。時雨は立ち止まり目を瞑って話を続ける。


「確に…速度は上がっているね…」


野鎌は時雨の後ろに回り込み、死角から斬撃を繰り出す。時雨は振り返らずに棒立ちしているだけだ。野鎌は少ない理性のなかで勝利を確信していた。だが、


「だから言ってるでしょ?」


意地の悪い笑みで振り向き、両手を何かを持つように形づくる。そして、なにかに弾かれるように鎌が弾かれる。野鎌は目を見開く、時雨の両手には何も握られていないのだ…。いや、その手には魔法陣が握られていた。


「芸が無いんだって。どれだけ基礎的なところを強くしても戦い方がお粗末なんだよ…。今僕が何をしてるのかも分かってないんでしょ?」


時雨は両手の何かで鎌を弾き空いた野鎌の鳩尾に蹴りを放つ。


「GUGYAAA」


蹴り飛ばされた野鎌はかなりの重量があるにもかかわらずに吹き飛んでいく。


「これはね、君のお得意の風の妖術…かな?僕たちでいうところの風の魔法を少し応用して短刀を形作っただけの物だよ」


目を凝らして見ると、時雨の手の先が少し歪んでいた。


「この短刀の刀身には強烈な乱気流を込めてあってね。そこらの台風なんて目じゃない…人に突き刺せばミキサーよりもグチャグチャに肉を抉れるんだよ」


時雨は蹴り飛ばした野鎌に向かって説明する。野鎌は説明が終わると同時に立ち上がる。


「GURUU…」


何度が咳き込み血を吐くが目からは憎悪が消え去っていなかった。時雨の説明は聞こえていなのだろうか、時雨の武器に注意を向け、今度は注意深く近づいてくる。


「だから芸が無いんだって…」


辟易とした感じで魔法陣を投げ捨てて、また違う魔法陣を取り出そうとする。野鎌はその瞬間を見逃さずに今度は一気に詰め寄ってくる。だが、途中で体が止まり前に倒れ込み鼻を地面に強打してしまう。


「GYAU!」


野鎌は足元を見ると地面と一緒に足が凍りついていた。野鎌は必死に氷を殴り砕こうと拳を思いっきり振り下ろすが砕くどころか傷一つ付かない。まるで、罠に掛かった動物のように暴れ狂い、罠から抜けようとする。


「君が気付いているのかはしならないけどね。肉体を強化したことによって理性が半分以上飛んでるし、妖力を妖術にまわすことも出来てない」


ゆっくり、ゆっくりと、地面に伏している野鎌に近づいていく。


「理性が残っていればこんな拙い罠に引っかかることもなかったのにね」


よくよく見てみれば野鎌は何かを踏みつけていた。…時雨のメモ用紙…魔法陣だ。いつ仕掛けたのかはわからないが蹴り飛ばした時あたりに仕掛けたのだろう。時雨は野鎌の前…鎌がギリギリ届かないところに立ち、足掻く野鎌を見下ろす。


「さてさて、このまま気絶させていろいろと実験するのもいいんだけど…このままじゃあ不完全燃焼すぎるし、理性を戻させてもらうよ」


時雨は二枚の魔法陣を野鎌に向けて投げる。魔法陣は野鎌の両鎌に貼り付き足と同様に氷によって地面に張り付ける。


「やっぱり意識を戻すにはいろいろと方法があるけど…実験も兼ねて今回はその形態変化を解かせてもらおうか…」


そう言って、時雨は袖の中からナイフを一本取り出し地面に何かを描いてく。


「知らないと思うけどこれは錬金術と言ってね。魔法陣の研究の途中でできた産物さ…」


地面に描いていたのは錬金術式だった。ほとんど魔方陣と形が変わっていないところを見ると本当に偶然できたものなのだろう。時雨は指先をナイフで切り錬金術式に血を垂らしていく。血を垂らすと錬金術式が光り輝き、術式内の地面が抉れ、代わりに大小太さも様々な針が出来上がっていた。


「さて、ここからは僕もできるか知らないけども…君のその形状変化は妖力のドーピングによって形作られているはずだよね」


錬金術によって出来上がった針を手で弄び、切っ先を野鎌の潰れた鼻先に突き立てる。


「GUGYAAA!」


野鎌の悲鳴じみた咆哮が響き渡る、変化した時とはまた違う咆哮だった。針が深深と突き刺さった鼻先からは何故か血は流れ出ずに代わりに紫色の煙のようなものが出ていた。


「GURUU…」

「うんうん、魔力と妖力の流れ方は同じっぽいね。身体を巡回する魔力には数箇所だけ溜まっている場所があってね」


言いながら今度は両肩に太めの短い針を差し込む。


「GUGYA!」

「妖力で強化されているのならば、その元を断てば後は消費するだけになるからね」


続いて腰の中心あたりに、長細い針を作り出すゆっくりと刺していく。


「UGUUU…GURYAA」

「まぁ、これをやった後は妖力がすっからかんになっちゃうけど回復させてあげるから我慢してね」


そして、最後に胸の中心…心臓のある部分に針を突き立てる。


「GUGYAAAAAAAA!」


一層に大きな声で野鎌ががなる。すると、針を刺しこんである箇所からさらに多くの妖力が吹き出てくる。噴出が収まるに比例して野鎌の体が小さく、元の大きさに戻っていく。時雨は野鎌が完全に元に戻ったのを確認すると、刺し込んでいた針をすべて抜き取り野鎌の頭に手を置く。


「」

これから、少々私事で投稿が遅れるかもしれませんが、7日以内には上げたいと思いますので、どうか宜しくお願いします。

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