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すぴには向かない人
しばらく連絡のなかった鯨佐くんが、いきなりビールを提げてやってきて、僕にも飲ませながら話し出した。
うん、久しぶり。
どう? うまくやってる?
そうだよね。うまくやっている気配がするよ。 ……ふつうに、誰でも感じ取れる顔色とか雰囲気とか。そういったものだよ?なにも変なものは見えちゃいないさ。
うん。ちょっと忙しかったんだ。
三年ほど前からの知り合いが、ちょっと神経のバランスを崩しちゃってね。
いや、前からおかしいといえばおかしいとも言える人だったよ。幻視体質でないひとからいえばね。
ほかのひとからおかしいと言われるのではないかとピリピリしながら、でも言わずにいられない。言って同調するのが能天気ないわゆる「すぴ」信者の人ばかりで、違和感を覚えてますます苛々するてだけの、ふつうの幻視体質、と見ていたんだ。
でも、ちぐはぐなところはあったのだよね。
電話占いにお金をかける。
ちょっと敏感ならば呼吸を合わせてからでないと入れないような神社の石段を、無造作にずかずか上がる。
はじめは、ぼくよりも強いひとだから影響をうけないのかと思っていたんだ。
どうも違う。