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僕に恋する人  作者: 音夢
第3章 番外編
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番外編 夏休みのある日

ジリジリとした暑さが空気中に広がり、学校全体を覆う夏休みのある日。

何時もなら騒がしい筈の生徒会室だが、今日は生憎と僕以外のメンバーは所用があるので休みを取っており、僕と九条先生の2人しか居ない。

だからと言って何かあるとしたら、雑用的な物が数分前まで有ったが終わってしまい、暇だし、暑いし、動きたくないと成ってしまった。


はぁ、それにしても暑い。そんな言葉も虚しく消え、体力と水分を容赦無く蝕む暑さが消える事は無い。

そして仕事も終わったので、この選択肢が出て来るのには時間が掛からなかった。帰るか、そう思い立ち上がった僕だが、奇しくも横に座って居た九条先生が手を掴んで来る。


年上、僕の周りに居る女性の中では、1番年上の様な振る舞いを見せてくれる人。

スタイルは年上好きならば誰もが望む様なお姉さんスタイルと言う奴で、正面からでも分かる程の大きいそれをしながらも、運動神経抜群と言う感じの引き締まった足を持って居る。

性格も多少行き過ぎた感じではあるが、見た目以上にしっかりとして居り、又新任教師と年齢が対して変わらないと言うのに、生徒会顧問を出来る程の器量。

何故こんな安い賃金しか貰えない職業に成ったのか、と質問したく成る様な絵に書いた上に立つ人だ。


全ての点でそこまで高いスペックなのに、弱々しくも願望を交えた目でこちらを見て来る。

ああ、優しいのは罪だな。いや、美しいや可愛いの方が罪なのかな?まぁ何方にせよ、割り切れ無い僕の罪は贖えはしないな。


掴まれた手をそのままにしながら再度九条先生の隣に座り、「暇ですし、話でもしますか?」と問いをした。白々しい、そう思うが生憎僕にはそれ以外の言葉が見つからなかった。


僕の言葉に九条先生は先ほどまでの顔とは違い、笑顔を浮かべながら頷いてくれた。

一応確認はしながらも、頷くの寄りも早く座り、改めて真正面から九条先生の顔を眺め、「じゃあ、何話しましょうか?」とこっちから切り出したは良いが、話すネタまでは無いのでそう言う。

すると手を口元に当て、あたかも考え事をしていますよ、と主張するポーズを取る。


本当、絵に成るな。


冗談抜きで出て来るその言葉が何故か胸に刺さるが、気にするのはもう飽きてしまった。

気にすれば、気にする程に悩み事を増やしてしまう。

それに分かり切って居る答えに対して、再度答えを出すのは余りにも愚かだ。


そんな事を考えて居る内に、九条先生が何かを思い着いた様だ。

濡れた瞳と言うのかな?何故か色っぽく、何故か可愛らしくも見えてしまう。そんな瞳をしながら、真っ直ぐに僕を見て「恋くんに取って、私はどんな存在なの?」そう言った。


言葉の意味や文章全体としての意味、それらを理解するのに何ら時間は取られなかった。

なのに、答えは出無い。いや、出そうとしない。

出してしまえば、醜い自分を、汚れた自分を、自分で見なければいけないから。


見たくない、知りたくない、考えたくない。なのに、思考と言う物は残酷なまでに意思とは真逆に進む。


僕の能力の被害者であり……こんな所に居て良い人間では無く……もっと他人に好かれるべきで……僕なんかが近くに居てはいけない人なんだ……そう…僕みたいな人間とは全てが交わっていけない筈なんだ。


なのに、僕に優しさをくれ、僕に愛をくれ、僕にとっての1番の先生で、僕が……謝罪すべき人。


枯れた様に体の力が抜け、全身が重く成る。

そんな僕に察したのか「あはは、答え辛かったらべつに」と言った九条先生の言葉を遮った。


重く、全身に熱が絡み付きながらも、口を開いた。

「僕は、九条先生の事…………好きですよ」と。ただ、表裏無く、僕を愛してくれるなら、僕も愛します。

それをするだけで、心が洗われた気になるから。


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