3ー5
上半身を襲う熱く、絡みつく様な熱と言うか紫外線の固まりである日光が僕を照らし出し、下半身には冷んやりとしたプールの水の冷たさと合いまってとても気持ちが良い。
けど、この気持ち良さをしっかりと味わえると言うか噛み締める事も叶いそうも無いな。
水が綺麗に流れる、そう表現するべきかは分から無いが、少なくとも人間技では無いとは分かる。
目を血走らせながらプールの水がまるで秋葉姉さんを避ける様に、水面を揺らす事無くだが凄い勢いで近づいて来る秋葉姉さん、正直言って怖い。が、同時に秋葉姉さんの無駄の無い動作に見惚れてしまった。
はぁ、秋葉姉さんにだけ言えた話じゃ無いけど、何でスペックだけで見たら高いのに此処まで愛が重いのかな、全く。
皮肉と言うか、自分自身を蔑み軽蔑する様にそう思いながら早く、槍を突く様に向かって来る秋葉姉さんを無造作にも交わす為に、叩き込まれた様に意思をせずに足を開き、そして陣を引く。
無振動の水が妙に身体にまとわりつくが、何時もアウェイな現場で戦う事の方が多いんだ。あまり関係は無い。
ただ秋葉姉さんを流せば良いんだ。
目を瞑り、限界まで意識や気を研ぎ澄ませ、身体中の血の流れ早くし筋肉を伸縮させながら、息を吸い吐き、一気にリミッターを外した瞬間、見開いた目の前に居る秋葉姉さんの伸びた手に触れ、陣を回す。
筋肉のバネが秋葉姉さんの威力を吸収し、開いた足が胴体を動かす事無く陣を描きながら回り、秋葉姉さんが僕の後ろに吹き飛ぶ。
一瞬、たった一瞬で起こるにしてはあまりにも起こり過ぎ、又一瞬にしてあまりにも起こらない瞬間、それを味わった秋葉姉さんも流石に吹き飛んだ瞬間は驚きの表情、呆気に取られた表情、様々な捉え方をする事が出来るがまぁ小悪魔や悪者ぽっく言えばマヌケ顏、とは言ってもそれでも画に成る辺り、流石と言う所か。
先ずは1人、そう先ずは1人。秋葉姉さんは痛く無いけど少しは時間稼ぎが出来る程度にはやった。じゃあ、残るは副会長さんだ。
でも、秋葉姉さんを相手して居た一瞬の間に消えたし、何処に行った。
確率としては水の中だろうが、それだと確実に分が悪い。もしくは逃げたと予測して更衣室で待ち伏せでもして居るのかもしれ無いが、何方にせよ好ましい状況と言うのにはあまりにも笑えない冗談だ。
と成れば、陣を組み直す事も解く事も出来無いな。
隙を見せれば、必ず来る。囮として使うのも有りかもしれ無いが、鬩ぎ合いが重要と見るのが妥当だろう。
だからと言って、時間を賭け過ぎれば秋葉姉さんが復活して来て更に危なく成る確率が、飛躍的に上がる。
と成れば、コレしか無い。はぁ、自分のレパートリーの無さに飽き飽きしてしまう。全く、殺しの手段や相手を潰す訳じゃないんだ。自分の獲物が届く最良の距離に移動し、有無を言わさずに殺るや全て交わせって言う最強の戦術は、あまり好みでは無い。まぁ、1番気持ちが良いけどね。
呼吸一つ一つを感じながら、身体中の重心をズラし、開いた足に乗せる体重を分散させ、陣を敷く。
秋葉姉さん程、気配や動きは良く無いんだ。動きが手に取るように見えるよ。
近づいて来る水中に居る副会長さん、さぁて動きを封じる方法はと問われた時、次の行動は至って簡単だ。
副会長さんが次に移動する活路を潰せば良い。
何も無い、いや。あと1秒もしない内には何か居る場所として変わる場所に対し、水中から足を抉る様に空に向かって放つ!
足に感じる水圧寄りも、筋肉の伸縮作業に寄って生まれた反動の方が強く身体に来るが、同時に副会長さんが蹴りで生まれた威力で離れたのが分かる。
これで終わって欲しいが、生憎それが現実に成る程優しくは無い。
蹴りで軸が一点の足に集中し、反動を否す為に身体を半周回した時に見えて来たのは、かなり近付いて来て居る秋葉姉さんの姿。
しかも顔には秋葉姉さんらしくは無いと言うか、冷静さを取り戻した上で本気の目をして居る。
はぁ、これが赤の他人でこんな格好をして居なければ、逃げるが勝ちとでも言って逃げて居るのだが、流石に今逃げるのは色々とあとが怖い。
しょうがないし、秋葉姉さんには悪いけど少し本気を出させて貰うかな。
ゆっくりと息を止め、秋葉姉さんの目を見ながら呼吸のリズムを感じる。
今、僕の目には秋葉姉さんだけがポツリと暗闇の中に立って居る、実際には違う。ただそう表現するのに相応しい映りだろう。
秋葉姉さんの動作全てがスローモーションにしか見えず、また秋葉姉さん以外視界には映ら無い。
ああ、全く嫌な才能かな。銃弾を避けるのに役立つからと父さんに教えて貰ったのを、まさか実の姉に使う日が来るとは。あの時は考えもしなかった。でも、まぁそんな昔話が始まる展開を誰も期待何かして居無い。
少なくとも僕はそんな詰まら無い話を聴くよりも、小説でも読んで居た方が気楽だし、楽しそうだ。
で、取り敢えずは目眩まし程度には本気を出すか。
左腕を素手から前に出し、横を向きながら右手を水中で押し出す様にうっ!「ちょっ!副会長さん!空気を読まずに抱き付かないでよ!」ちっ、思った寄りも早く副会長さんが復活しちゃったし、先に副会長さんから「って、秋葉姉さんも抱き付か無いで!」あ、やば!完全に取り押さえられた。
秋葉姉さんと副会長さんに前後から抑えると言うか、凄い力で抱き付かれ、同時に逃げ様とするからか身体中に何とも言え無い感触が襲い、慣れては居るとは言え動きを鈍らせる。
そして更に姉さん達の力は強く、又絡める様に身体に抱き付き、最終的になすがままに成ってしまった。
一体、何時に成ればこの人達に勝てるのか。いや、何か足掻くだけ無駄にも思えて来るかな。
それから昼食まで、プールから上がろうが中に居様が逃げ無い為と言う理由の元、抱き付かれ続けたのは言うまでも無く、紛れも無い事実と成った。




