2ー8
殺風景な部屋の中、1人の冴えないメガネ男子が1人の見目麗しい美女の肩を掴み、目線を合わせ「無理だよ」と言う。
今の状況、過程などを一切無くした上で今の僕達は周りから見た時、大体そんな風に見えて居るのだろう。コレが部屋がもっと縫いぐるみ何かで溢れたメルヘンで、ファンシーな部屋ならばまた違った風にも見えるだろうが、先ずこの状況だけを見て理解出来る者は居ないと断言出来る。
そしてこの物理的で無ければ目に居れても痛く無い様な美女が、まさかこんな冴えないメガネの血縁者、しかも母親など誰が分かるのだろうか?僕だった先ず、隣に住んでるお姉さん、最高でも残念な弟さんだね。としか言い様が無い。
それ程までに異様な事なのだが、当事者であるこの母親は愚か、多分この家に居る全ての人が行き過ぎたスキンシップとしか捉え無いだろう。
とても溜め息が出たく成る話しだが、少なくとも今の状況を見てる運命の神様とやらは、更なる試練を僕に与えたらしい。
僕の言葉をどう理解したかなんて、そんな物僕には理解出来る余地が無い。と言うか、理解出来ればスクールカウンセラーにでも就職決定だ。だが、母さんに一言だけ言わせて貰うとすれば、何故にその様な解釈に成ったのか是非に御教授頂きたい。
「あー、やっぱり恋ちゃんも久しぶりにママとお風呂何て恥ずかしいの?あ、でも大丈夫よ。昔は毎日入ってたんだし、ねぇ」明らかな長文、そして僕が言った『無理』と言った単語を曲解仕切ったであろう反応、残念系な人なのか?いや、まぁ僕を産んだ時点で残念と言うか運命は終息へと向かって居るのかな?
この、いや。憎み、愛し、そして理解せざる負えなかった力のせいでね。
ただ、こんな幾ら頭が残念だと言っても、幾ら何でも高校生が女性、しかも母親と風呂に入る何て、世間一般常識や一般人の考えから逸脱され過ぎて居る。だからこそ、僕が原因の出来事は出来るが限り僕が片付けるべきだ。
期待や嬉しさ、その他諸々の感情からかキラキラした母さんの瞳を真っ向に受けならが、息を飲む様に心臓に罪悪感と言うべき物が押し寄せて来る。僕が我慢して頑張れば、みんな幸せ…と。でも、息子として言わなければいけない。それが、本意を隠した言葉としても。
息を落ち着かせながら、母さんを見て言い放つ、「絶対に駄目」そう。
その瞬間、母さんは絶望感溢れる美女へと変化した。溢れ出る負のオーラ、そして押し寄せて来る母さんを悲しませたと言う、突き刺さる様に鋭く研ぎ済ませれた咎と言う名の罪悪感。
だが、そんな中でも母さんは母さんの様だ。……こんな言葉で分かっちゃう僕が痛く悲しいね。
決めた事は絶対にやる、それは負けず嫌いな人ならば大抵がそうだろう。当然の様に母さんも負けず嫌いで、しかも最悪な程に滅茶苦茶な奴。
一瞬で考える、そう一瞬で。常人なら思考回路がショートした挙句、オーバーヒートして廃人コースに真っしぐら。ですが、母さんはやはり化け物と例えてもあながち、間違いは無いのだろう…多分。
一瞬にしてぷうっと可愛いと言うか、かなりのギャップを生む程に頬を膨らませると、最後はもう駄々っ子だ。
「入るの!絶対に!だって、ここ最近、ママを存在に扱い過ぎ!だから!ねぇ!」何処がだ、と言いたく成る自分を抑え、先ず何処からそんな考えが湧き上がるのか、学者にでも解明して欲しい所だが、抑えるんだ、僕。
行き過ぎた行動は身を滅ぼす、だから今は我慢するんだ。そうすれば、きっと明日こそ、未来は無いね。自分自身については僕が1番良く理解して居る。だからこそ言える。絶対に幸福何て訪れない。
まぁ、僕の事は置いておくとして、今はどうやって母さんを落ち着かせて普通に風呂に入るかだ。
とは言っても、今の母さんを止めるのは絶対僕では無理。
やばいな、そう考えられている時が1番花とは。
束の間の安息、一瞬。0.5秒にも満たない刹那と呼べる瞬間に、母さんの手は僕の腕の自由を奪い、尋常な無い力で連行されて行く。てか、あり得ない!何でこんなに力が強い訳!
足に力を入れ、母さんの動きを止めた筈……だった。が、梃子の原理すら無力化する力で僕を引きずり、抗う事すら間々なら無いまま、僕は風呂場へと連行された。
引っ張られて居たおかげで、階段で死ぬかと思ったが何とか生き延び、風呂場に着いた瞬間、そう言えばと思い出してしまった。
僕が風呂好きなのは家族の皆が知って居るのだが、旅行中にセバスチャンさんに理想の風呂を話してしまい、父さんが新しく露天風呂を作ったのだ。父さん曰く、かなり良い出来らしいが、まさかこんな状況で入る事に成るとは。
そう思って居る内に母さんは迷う事無く、着替えられるスペースへと僕を連れて行くと、今まで母さんの手には無かった筈の何だろう。俗に言うビキニと呼ばれる布生地が少ない水着が握られて居た。
もう色んな意味で突っ込み所満載だが、一々突っ込んでいたら多分キリが無い。
それに自分から入るって言って居たのに、顔を赤くして居る。あと、ちゃっかり扉を鍵で閉めて居たから逃げる事はほぼ不可能。
はぁ、「負けたよ、母さん。もう、先に入ってるから後からそれ着て来てね」と言い、母さんから死角に成る所で服を脱ぎ、お初の風呂場に移動した。
新しく成った、と言うかつい最近に作られたそれだが、わざわざこんなに金を掛けるのか。驚きを通り越して唖然としてしまった。一体何れだけの金持ちならこんな風呂に成れると言うのか?聞いてみたい物だな。
目の前に広がる10m×10m四方の檜で作られた露天風呂、そして岩陰をモチーフに作られただろうシャワーやボディーソープなどが設置させられた場所、周りには絶対に外から見えない様にしつつも、内側からは360度どの場所からでも外の美しい景色を堪能出来る様に立てられた壁、全く。一体何れだけ売れてる温泉宿なんだか。
素直な気持ちなど通り越し、最早一般庶民程度の知識しか持たない僕には、理解不能だ。
そう何とも言え無い微妙な感覚に囚われつつも、体を洗おうとした瞬間、後ろの扉が開き、そして水着を着た母さんが入って来た。
グラビアアイドル、体型やパッと見た肌の感じ、正に容姿端麗、現代日本に蘇った大和撫子だ。
長くふんわりとした髪が、鋭く際どいイメージを持たせるビキニを柔らかくさせ、尚且つ母さんのスタイルだからイメージが崩れる筈も無く、完璧。そんな言葉が脳内に響き渡った。
見惚れて居た、奇しくもそう思ってしまう自分が情けない。
色々な意味で溜め息を零したい気分だが抑え、社交辞令。と言う名目の元「似合ってるよ」と言う言葉を掛け、体を洗い初め様とした。
が、神様はやはり僕に対して何か深い恨みを抱えてるらしい。
椅子に座りシャワーを浴び様とした瞬間、横に母さんが座り、此方を眺めながら母さんの手が素肌同士である僕の腕を絡め取る様に抱き締め、そして自分の胸へと押し当てた。
柔らかい、たった一枚の布越しの中伝わって来る感触、それは柔らかいのに弾力があり、とても不思議な感じだ。だが、そんな事よりも頭に血が上って気絶しそうです。はぁ、虚しい溜め息が心の中に静かに零れた。
………………………春香………………………
恥ずかしい……けど嬉しい。今の私の中にはそんな感情だけが満ち溢れて居ました。
ここ最近、恋ちゃんが私を疎かにした。実際そんな事は無い。ただ、他の子が恋ちゃんと居るのが何と無く胸の中に刺さった。私はそれが何と言う感情なのか、それは直ぐに分かった。
恋ちゃんへの恋と嫉妬、その両方だろう。
だから、私は何時に無く積極的に成ってしまった。そして恋ちゃんが好きそうな水着を着て、恋ちゃんに「似合ってる」と言われた。
正直今すぐ恋ちゃんと大人なイチャイチャをしたい。でも、そんな気持ちをしていたら恋ちゃんに引かれてしまう。だから、だから抑えながら、恋ちゃんにアプローチすれば良いんだ。
シャワーの方に行った恋ちゃんに着いて行き、横に座った私は洗うのに邪魔に成ってしまうけど、恋ちゃんの腕を掴み、愛おしく、大切に、でも独占するように自分の胸へと押し付ける様に抱き締めた。暖かい、心も体も。ああ、何時までもこんな幸せが続けば良いのに。
そう思える程に、恋ちゃんは凄かった。
それから恋ちゃんは諦めた様に体を洗って行くので、そのまま抱き締め続け、体が洗い終わったので露天風呂に入る事にした。
恋ちゃんと、恋ちゃんと同時に、恋ちゃんと同じ空間で、恋ちゃんが感じている熱を感じながら、私は露天風呂に足を入れた。
暖かい、ジワジワと体の真を温めて来れる様な感じがする。でも、幾ら高い温泉を使っても恋ちゃんを抱き締めた時の幸福感には勝てない。そもそもこの世界に恋ちゃん以上に大切にする物何てあるのかしら?自分の命?恋ちゃんの為なら躊躇せずに捨てられるし、お金も恋ちゃんと暮らせるなら要ら無いし、やっぱり恋ちゃんが1番ね。
恋ちゃんの事を考えて居たからかな?正直な体は恋ちゃんの腕を掴み、お湯の中で身を任せる様に抱き付いた。顔を赤くさせて照れてる恋ちゃんが可愛いく、もう本当守りたく成っちゃうわね。
何時だったかしら、恋ちゃんが私の前から消える夢を見たのは?
何時だったかしら、私が恋ちゃん以外の事を気に留めなく成ったのは?
何時だったかしら、それが始まり、また永遠に続くのを信じ、願い続けたのは?
全てが間違いで、全てが正しい。
まるで言葉遊びをして居る様。でも違う。全部事実で全部嘘、言葉としては合って居ても、絵としては合って居無い。
ああ、私は恋ちゃんに狂わされて居るのでしょう。
ただ愛される事、ただ触れ合う事、声を聞く、目で目視する、その全てに意味など無い筈なのに、こんなにも私の体を、心を、全てを満たしてくれる。
恋ちゃんが麻薬や|病気(中毒)なら、今の私は完全なる恋ちゃん病、カルト的な物なら崇拝者ね。
症状は一緒に居るだけ嬉しくて成って胸がいっぱいで、でも胸の中が切なくて、なのにもっと求めて、更に体が疼く様に寂しくなる。対象者は恋ちゃんに会った女性全てかしら?
私はそう考えながらも、恋ちゃんとも話がしたく成ったので恋ちゃんの方を見てみると、そこにはすっかり出来上がってると言うか、逆上せてる恋ちゃんが居た。
あれ?もしかして結構な時間考えてた私?
あはは、苦笑いしか出て来ないや。まぁ、取り敢えず恋ちゃんを運ぶとしましょうか。
お湯から体を出し、恋ちゃんの逞しくて、大きくて、鍛えられた体を持って更衣室に連れてく。
勿論重くも無いし、持て無い訳無い。だって母は強しって昔から決まってるもの。
そして恋ちゃんを持ちながら更衣室に入った瞬間、そこには鍵を閉めた筈の扉から入ったであろう泥棒猫が居た。
私はそっと恋ちゃんをバスタオルの上に置くと、上からもう一枚風邪を惹かない様にバスタオルを掛け、軽蔑する様に僻む様に「あら、親子が折角気持ち良くお風呂を楽しんで居た中、わざわざ鍵が掛かった扉を開けて入って来る何て、随分と不躾で礼儀が成って無いのね」そう皮肉を込めた言葉を放った。
普段ならもっと穏便何でしょうけど、この泥棒猫の私利私欲の為に恋ちゃんが汚されると思うと、怒りが込もってしまうわ。
私のそんな言葉をぬらりくらりと無視した彼女は、恋ちゃんの前では絶対に出さ無い様な不敵な笑みを浮かべると、私の目を見ながら「そんな事何て今はどうでも良いんですよ。ただ、時間も時間なんで貴方はそろそろ夕食を作らないければいけない」と言うが、何が言いたい?確かにそろそろ恋ちゃんのために、私の手作りの美味しい料理を作らなければいけない。因みに『手作り』で『美味しい』って言うのは重要。市販品を使って美味しい何て、誰でも出来るし愛が無い。だから私は全て手作りで食材も1番恋ちゃんの体に無害な物を使って居る。
で、結局それが何なんだろう?私には分からない。
暫く彼女の問いに悩んで居ると、彼女は私を嘲笑う様な表情をしながらこう言った。
「それじゃあ、夕食を作って居る間に私がれんくんの看病と言うよりも介護してますね」と。
それは盲点だった。確かに恋ちゃんが起きて居れば、私と一瞬に楽しく夕食を作れただろう。だけど今の恋ちゃんは逆上せて居るので、誰かの介護を受けなければいけない。それに幾ら私でも流石に介護をしながら料理を作るのは大変だ。と成ると彼女が介護をする事に成ってしまう。
ああ!荒れる様に言葉を吐き出したく成る。でも、そんな中、彼女は私にもう一度話し掛ける。
「あと幾ら私がれんくんを取るのが嫌でも、スイッチだけで切り替えてたらその内ボロが出ますよ。お母様」頭の中に流れるその言葉、意味など直ぐに理解出来る。
だから、私はそんな感情を抑えながら言い放つ。
「それは貴方も同じでしょ、恋ちゃんと私の害にしか成らない|泥棒猫(天音)さん」と。
「「本当、嫌な人」」




