2ー1
暖かい、漸く少し肌寒かった春も過ぎ、初めてセバスチャンさんと一緒に学校に行く事に成り、何と無く何時も寄りも多少早く家を出たからか海斗とは時間が合わず、セバスチャンさんには悪いが鞄を持って貰いながら、フリーに成った両腕に絡み付く様に夏海と秋葉姉さんが抱き着き、何とも言えない歯がゆい気持ち成りながら、もう見頃と言う時期は終わり、枯れて行く桜並木を歩く。
とても悲しい言葉、だがそれだからこそ、1時しか見る事が出来ないからこそ優美を誘い、美しく舞い散り、見る人を魅力する。
そう考えるとコレもまた一見であり、琴や三味線の様な優しい音を聞きたく成る。
そんな柄でも無く、散って行く桜に黄昏れて居ると、学校に着いてしまった。
「ありがとうございました、セバスチャンさん」と一言お礼をして、鞄を取ろうと2人から手を抜こうとするが抜け無い。寧ろ抱き締める力が強く成って居るんだけど。
まぁ、確かに鞄を持てば何方かの手は塞がってしまい、恋仲の様に密着度を保った抱きつきは1人しか出来無く成る。と簡単な推理をしたが、普通に考えて兄である僕が姉妹でる2人に年が離れて居るならまだしも、普通に恋仲の様な事をする自体が、そもそも可笑しな事なのだが。
それを言って分かってくれれば、僕はこんなにも苦労はしない。
器用にも2人の顔が見える様にしながら、「ねぇ2人共さぁ、僕を挟んで口論と言うか睨み合いするなら、2人共はなれてくれない?」冷たい答えだが、2人にしてみれば1番最悪なバッドエンドだろう。
それに対して顔を顰めながらも夏海は「いや、お兄ちゃんと色々して良いのは私だけだし、だから年取った人が離れれば良いじゃない」とかなり喧嘩口調でだが、まだ優しい言葉でそう言った。
まぁ姉さんは大人の余裕と言う奴か「私が年取ってるなら、恋ちゃんもそうなんだから、私達が1番お似合いに決まってるじゃない」と冷静に、更に嫌味を言う様に夏海に返した。
何だろ、実況を付けるなら『おおっと!夏海選手の先制攻撃だぁぁ!いや!だが秋葉選手、カウンターで返したぁぁぁぁ!!!夏海選手は大丈夫かぁぁ!!』そんな感じだろう。にしても、プロレスやスポーツ中継は見た無いが、何と無くでもそれっぽく成るのは凄いな。まぁ、間違った解釈でやったので有れば、本人には正しくとも他人から見ればそうで無いのかも知れないが。
そう思って居る間にも口論は続いて居たのか、気が付くと2人は僕の腕から離れ、しかしまるで漫画みたいな流れだがまだ口論を続けて居た。
にしても、身長差があるとは言え花の有る2人だ。半分キレた状態でも美として感じられる。
でも、僕からすれば『ラッキー』そう思ってしまう程に嬉しい誤算でしかない。直ぐ様セバスチャンさんから鞄を貰い、声を出してしまうとバレるので、礼をしてから学校の中へと逃げる様に走った。
上手く2人には見つかる事無く学校に着いた僕は、玄関で靴を取り替えてから直ぐに生徒会室に向かう事にした。朝やる様なプリントが有った記憶は無いが、朝から妙に視線を集めてしまう教室に居るよりは増しだろう。
廊下、まぁ玄関を見れば分かるだろうがまだあまり人は来て居ないからか、物静かな廊下に成り、何時もの何かしら声が響いて居る雑談を聞いて居た僕としては多少ながらにも、違和感を感じてしまう。それが勿論、悪いだとか良いだとかと判断する訳では無いが、やはり雑音が無いと自分の足音が響いてしまい気になる、と言うか、後ろを振り向きたく成ってしまう。
そしてその衝動に駆られ、無意識的に後ろを見た瞬間、僕は唖然と言うのだろうか。理解出来て居て、尚且つ理解したくない。更には恐怖にも良く似た何かを味わいながら突き落とされた様な、そんな感覚によく似た、塒が絡み付いた様に体を蝕む。
激しく後ろを振り向いた事に後悔の念を覚えたが、まぁそれは良い。
取り敢えず、もう1度前を向き直し、片膝を付きながら腰を上げ、両手を床に付け上半身を支え、誰も居ない廊下を真っ直ぐに見つめながら、クラウチングスタートを決める!
制服が妙な隙間の有るフィット感を生み、足を上げ過ぎれば破けてしまうだろう。だが、分かって居ても膝から太ももに掛けて高く、強く上げ続ける足を、バネの様に体を押し出す事を止められなかった。
真っ直ぐ、一向に走り続け、やった。そう思った時には僕のライフはゼロからマイナスにした様に削られてしまって居た。
後ろから聞こえる耳を済まさなければ聞こえ無い様な足音、此方を見て居る様な視線、近づいて来る気配、その全てが最高潮に達した瞬間「れぇーんーくぅーんー!」甘く伸ばされた言葉、聞き慣れた声、そして……首から背中、全身に掛けて伸し掛かって来る重さ、匂い、柔らかさ。
僕はこの人が誰だか知って居る、知って居るからこそ嬉しく無いのだが。
はぁ、溜め息が心の中で隠す気も無ければ意識せずとも零れ出た。関わりたく無い、そう思っては居るがここまで来て無関係と言うのは、流石に無理な話だ。
と成ると、はぁー諦めが良い事がそんなに良い事なのか、多分、僕には一生掛かっても理解し得ないな。「何してるんですか、九条先生」と、言ったは良いが、分かっては居たがあまり気が進まない。そんな事はお構いなしに九条先生は話を始める。
「ふふ、恋くんが私を見たのに逃げたからやっちゃった。あとは連休と旅行中に結構な割合で私をのけものにしてた、腹癒せ?」何だろ、首を曲げて可愛いらしく成ってるのが可愛い。なのに腹立たしい。
感情とはまた別の本音的な所でそう思いながらも、のけものとまでは言わないが、構って居なかったのは事実であり、度々九条先生は暴走して居た。だから、それがこの数分の間に無くなるのであれば、安い物だろう。
不幸は不幸を招く、ある意味要らぬ教訓が付いてしまった。
背中に感じる柔らかさや、ふんわりとした良い匂いに微妙な感情を抱きながらも、取り敢えず「構えと言って居るのは分かりました。ですが、一様生徒会役員として生徒会室で仕事をしなければ成らないので、話したりするのは良いので降りて下さい」とちゃんと九条先生の事も善処したつもりだが、やはり一筋縄では行かない様だ。
「お話しは当たり前の様にして貰います。ですが、それだけでは何時もと大差ありません。ですので、お触りもします」何を威張って言って居るのか。だが、致し方無い。「分かりました、でも過度なのは禁止ですからね」こう、折れてしまう辺りがダメな所だな。
そして残り少ない距離だが、九条先生と2人で生徒会室に向かう事に成った。
涼しげな空気が廊下をゆっくりと駆け抜け、冷んやりとした温度にして行く。それは季節の変わり目だから味わえるその季節とは合わない風。だが、そんな事寄りも今は腕に抱き付かれ、しかもワザとなのか。胸を強調するかの様に谷間に腕を持って行かれ、精神や理性を保つ方が気が気でない。
九条 真里亞先生、とても綺麗だが大胆で気配りの効く誰が見ても『良い女』と分類するであろう人。
そんな人と一緒に歩ける何て、とても光栄な事なんだろう。が、今の僕にすれば光栄だろうが何だろうが、今の状況を譲ってやりたい。
まるで漫画やドラマの恋人が寄り添う様に九条先生の体が此方に倒れ、それを僕が支える。言葉にすると『何だ』と軽く見えるが、本心はとても気恥ずかしい。だってあれだよ、かなり破天荒な感じとは言え、10人居れば10人ともに男女問わずとして振り向きそうな程に綺麗な人。流石に気分が可笑しく成ったりはしなく成ったが、幾ら慣れてもこればっかりは慣れ無い。
九条先生には気付かれない様にと振舞って居たが、九条先生は感じてしまって居た様だ。「ふふ、恋くんが私に抱き付かれて緊張してる。嬉しい」独り言の様なそれだが、旗から見れば恋人と同じなのだろう。
彼女が呟き、彼に全てを任せ身を預ける。長年連れ添った相思相愛の恋人がやる様な事。
九条先生が望んで居るのは甘い時間なのか、それとも僕との時間なのかは分からない。でも、まぁ楽しんで居るのならいいか。
歩き辛いと思いながらも口にはせず、生徒会室に向かう事10分程で着いた。
九条先生は僕の腕に抱きつきはながら、器用にも鍵を取り出し扉に差し込み開けた。
2人で同時に生徒会室に入り、見えて来た光景はこの前見た時と大差無い光景だった。
自然としたその光景に日常的な何かを感じながらも、いつも通り席に座ると九条先生が隣に座り、やっと落ち着きを取り戻せたと思いたかった。僕達が生徒会室に向かう間に気づいてしまった様だ。
閉めた筈の扉が一気に開き、靡く髪が美しい我が姉と副会長さんがただ立って居る、ただ、それだけなのに美しくポージングされた様に佇んで居た。一瞬でも2人に目を奪われてしまった僕が狂おしいまでに憎いが、まぁそれは置いておき「姉さんはさっきぶり、で副会長さんはおはようございます」と冷静に挨拶をしておく。
すると姉さんは多少怒った様な表情をしながら「もう、なんで先に行っちゃうの?恋ちゃん」と表情とは裏腹に、柔らかい口調でそう言われた。怒るなら怒って欲しい。そうやって辛い事、悲しい事を全て無くして赤子だから仕方がない。みたいな感じでやられるのが1番怖い。
深く息を吸わなければ、だがそれをすればする程息が入って来ない。肺が絞まる、心臓が痛い。
ゆっくりと息を吐き、心を落ち着かせて居ると副会長さんが「んにゃ、休みの間に私に会えなかったから、少し風邪気味かにゃぁ。だったら、私の熱いキスで風邪を」その瞬間、秋葉姉さんに寄って黙らせられたのは言うまでも無い。
はぁ、どうしてこうも綺麗どころが集まったと言うのに、トキメキもドキドキも、青春すらも起こらないかなぁ。
以外としみじみ思う事だが、この人たちの愛情表現は明らかなまでに常識から外れ過ぎて居る。もちろん、そう言った形の愛情表現が間違いだとは言わないが、それでも常識を欠如し過ぎて居る。
彼女達に取って邪魔な物は要らない、欲しい物だけがある世界こそが正しい世界なのかもしれない。ただ仕方が無く今を生きて居る、所詮壊そうと思えば壊せる世界。いっその事そう言われた方がスッキリするかもね。
そんな深い様な浅い様な事を考えながら、今だ勢揃いしない生徒会メンバーを待ちながら僕は3人にオモチャにされて居た。考え事をして居て気付かなかったが、今の状況は些か悪い。
前には机、右には九条先生、左には秋葉姉さん、そして後ろには副会長さん。前後左右、正に八方塞がり。移動し様にもできる訳が無い。
女性独特の柔らかな良い匂いが僕の周りに舞う、それは過剰なまでに僕の羞恥心に反応しながら、複雑な気持にさせる。
はぁ、早く全員が集まらないかなぁ。
そう思うしか出来なかった。
三週間と長らくお待たせしました。そして、今日やっと修学旅行から帰って来たので眠いです。
では、多分何も無ければ来週には投稿出来ると思いますが、万が一の場合はご了承下さい。




