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バスの中、後ろに映る昨日一夜過ごした旅館は本来の大きさとは目を疑う程に小さく成り、またそれとは別に5人の美しい美女の視線が僕に突き刺さり、恥ずかしさと共に何とも言えない恐怖とは違う、溜め息が零れ出そうな感覚に見舞われる。
なるべくゆっくりと息を吸おうと意識させては居るが、身体はそんな事を聞かず、冷静ささえも奪う程に鼓動を上げ、最早昨日の時点で0に近い体力を更に削り取って行く。
そして走るバスの中、あまり嬉しくは無い『質問』と言う名の『取り調べ』、『お話』と言う名の『探り合い』が始まってしまった。
息を飲み、その音が頭の中に響き渡り緊張して居るのを物語って居る。これがどう転ぶのかは分からない。でもそんな事を5人が知る余地も無く、深く抉る様に副会長さんと目が合い口を開いた。
「ねぇ、恋ちゃん。あの女将さんとはどう言う関係だったの?お姉ちゃんにしっかりと『ただ』の『他人』だって、教えてくれないかにゃぁ」横の席に座って居るからか、ただ普通に聞こうとはせず少し斜め下から上目遣いで可愛らしさを作りながら、副会長さん自身の大人な感じを雰囲気と口調で押し出し、完全に男を落とす様にそう聞いて来た。が、露骨なまでに『ただ』と『他人』を強調し過ぎだ。それでも有り余る美しさが僕に攻撃して来る。が、言えない。裸を見て、見られた何て僕の口からは絶対に言えない。
だんまりと口を閉ざして居ると、副会長さんは首を傾げ、「んーと」と癖なのかそんな事を言いながら考え始めた。
次にどうすれば良いのかを考え始めたぽっい。
だが、これで安堵の表情を浮かべられる程、今の状況は甘くは無い。
副会長さんの奥に座って居るサクラさん、何時もの様に可愛らしい顔なのだが雰囲気としてはイジけて居る。理由は色々と想像が付く、それでも頬膨らませても可愛いのはやっぱり妹系だからか。それでも何時も寄りオロオロして居らず、多分怒りたいと言う感情とまた別の感情が入り混じっているだろう。
ジッと睨む様に視線を向け、それを追う様に目を合わせると逸らされ、また違う場所でジッと見られる。繰り返し6回やると徐々に顔は赤く成り、10回を超えるとやっと顔を真っ赤にさせながら話始めた。
「な、何で私に目を合わせりゅの!」何時も寄りも高圧的な物言い、でも顔を真っ赤にしながら噛むと、とても可愛らしく見えますよ。
ただ噛んだ張本人であるサクラさんは口元を抑えながら、舌の痛みに耐え、痛みが引いた所で話を続けた。「大体、恋くんは隙があり過ぎです!それだから、その色々と……そう!色々と可笑しな事に巻き込まれるの!」言葉を詰まらせてそう言うが、一瞬想像したんだね。顔から熱気が出そうに鳴ってるから。
でも、一度走り出した物が止まるにはそれ相応の物が必要になる。今回だと「ちゃんと話を聞いてますか?聞いて無いなら「聞いて無いと、また今朝みたいな事するの?」サクラさんの声に重ねる様に言った声。別に対がある訳でも無ければ、仕返しのつもりで言った訳でも無い。
ただ的確に今のサクラさんを止めるには、これが1番適切だと思ったからそう言った。案の定、サクラさんは顔を更に赤く染め上げながら「にゃっ!」と副会長さんみたいな声を上げて、黙り込んだ。
で、今の2人で結構な体力を持ってかれたけど、次は飛鳥さんと姉さんの2人ですか。
副会長さん達と丁度対の位置に座って居る飛鳥さんと姉さん、位置的に言えば姉さんが僕の横で飛鳥さんは奥になる。
そして2人の方に目を向けると姉さんは心配そうな目で僕を見て居て、飛鳥さんは姉さんと副会長さんを恨めしそうな目で見ていた。
今までとは確実に違うパターン、何方かと言うと怒って居るやイジけて居るのとは違い、何所か包容力の塊の様な雰囲気が漂って居る。
すると姉さんが僕に倒れ込む様に抱き付いて来ると、首に両手を回しにっこりと微笑みながら優しく、まるで小さな子供と話す様に話始めた。
「恋ちゃんに昨日のお風呂で何があったのかは知らない、でも。私は恋ちゃんのお姉ちゃんとして恋ちゃんを信じるし、きっとあの人が仕組んだ事だから。だから、恋ちゃんは気にしなくて良いよ。何があっても私は恋ちゃんを裏切らないし、絶対に守るから」優しい言葉。でも、姉さん。それだとダメ何だ。
それに溺れてしまえば僕はもう抜け出せない。この負のジレンマからは一生逃れられない。
でも、だからこそ。ただ一言だけ「ありがとう」そう返させて貰うよ。
僕はまだとても弱いから。何時かきっと守れる時が来るまでは、甘えさせてね。
正解な時間は分からないが、多分何分間の間姉さんと見つめ合って居ると、「ん、何だか私だけ仲間外れじゃ無い?」と飛鳥さんの声がした。
あ、忘れてた。「恋くんヒドイ」なっ!心を読むなんて、そんな人外じみたって、今更か。
取り敢えずゆっくりと飛鳥さんの頭の上に手を持って行き、撫でた。優しく、掻き立てる様に。
「恋くんは卑怯です。そ、そんな事されたら、お、怒るに怒れ無い」と言いながら、素直に収まって居た。
そして時間が結構経ったので前を見てみると、そこには学生が止まるにはかなり大きいであろうホテルが広がって居た。あはは、どんだけ金掛けてんだよ。本当にこう言った所には射止めを付けないよね。
取り敢えず、着いたのは良いが何か忘れて無いかな?
不図にそう思い、周りを見渡してみるとそこには何だろ。子供の様に何かを訴える様な目で此方を見て居る九条先生が居た。
目が合い、気まずい雰囲気が流れ一言「わ、私だって!教師として何か人事ぐらい言いたかった!」と普段とは違い、素に違いであろう言葉が聞こえた。
全員の目が九条先生の方を向けずに、ただただホテルの前に止まるのを待つだけだった。
シクシク、そんな作った様な嘘泣きの様な声が聞こえて来るが、何も言え無い。
やっと、たった10分足らずだか気まずい雰囲気の中に居ると、自然と意識を張ってしまい結果的に疲れた。しかも、この遣る瀬無い気持ちは何所に捨てたら良いのか、誰か教えてくれ。
切実とした悩みが毎日の様に降り積もるだけだが、その答えに答えてくれる程この世界は人の生死では動いて居ない。
例え僕が死のうとも世界は壊れ無いし、回る軌道がズレたとしてもまた上手いサイクルを見つけ、それに乗る様に回り始める。所詮世界に取っては僕は小さく、僕に取っても世界とは目の前に居る守りたいと思える人に比べれば、取るに足らない物だ。
で、何所までこの話を派生すれば良いのかは本当に教えて欲しいが、取り敢えず区切るとしてホテルに着いた。
バスの中からでも見えたがかなりの大きさだ。最新の技術だけで作られた様なホテル。しかも最新技術の中にもレトロチックな風貌があり、あの学園の資金力を思い知らされる。
全員がバスから降りた所でまだブルーな九条先生が腕に抱き付いて来るが、流石にあの後だから。と言う事で姉さん達は文句は無く、独占する様に九条先生だけが抱き付いて居た。
そして自動ドアを抜け、ホテルに入った瞬間、目に入って来たのは大きなシャンデリアや両サイドに付けられた螺旋階段、正面にあるカウンターだ。どれもざっと見ただけだが、しっかりとした作りなのが分かる。
床一面に敷かれた大理石、カウンター越しに此方を見て居るボーイ、全てが一流の物。
惚ける様にその光景に圧倒されて居ると、1人のヒゲの執事の様な人が近づいて来た。
2mは有るであろう長身、対して体はそこまで太いと言う訳では無いが歩き方から、かなり鍛錬をして隙の無い格闘技向きの体なのが分かる。所々では筋肉の凹凸がある所から見て、舞川の様な明らかな戦闘向きでは無く肉体其の物を鍛えた感じだ。
目の前に来ると威圧感が凄いが、渋いなどの感情は抱かず、何所か優しく安心させてくれる様な雰囲気が漂って居る。
そして「今日、ご予約の生徒会様でございましょうか?」綺麗なイントネーション、姉さん達の声とは違う意味で耳に残る声だ。にしても、生徒会様って雑な取り方な事で。
普通にそう思って居ると九条先生が「はい、私が九条と申します。一晩だけに成りますが宜しくお願いします」と言ったので、全員で礼をした。それを見ると「ほっほっほっ、いやはや。そんなにも畏まらなくとも結構でございます。そうですね、先ずは私の自己紹介と参りましょう。私の名はセバスチャンとでもお呼び下さい。これでも私、元々は王家の執事などをして居たのですが、現役から降りて老後生活を満喫しようと思い、このホテルに来た所、少々手伝いをしてしまい情が移ってしまい、今ではお客様と些細な話をするのが楽しいのでございます」と随分とお茶目な人だが、この人は凄い。
多分仕事を日常として、つまり自分の仕事を楽しみながらやって居るのだろう。
それから軽く自己紹介をしようと思ったが、どうやら女将さん同様に名簿を渡されて居た様だ。気を使って居たただき有難うございます。ですが、私は既に存じてありますので、どうぞ緩やかにお寛ぎ、青春を謳歌して下さい。と言われてしまった。
早速その青春を謳歌する為に荷物を起き、着替えた。因みに今回はホテル側の主張に寄り、男女部屋はバラバラだ。本当、嬉しい。
着替えが終わった所で、セバスチャンさんの案内である部屋に来た。
部屋と言うにはかなり大きく、だが広間と言うには明らかに小さい。白い壁にホテルの大理石とは違い水捌けが良いコンクリートとで出来て居る床、銀色のそれが何台も並び、興奮する人はかなり興奮するであろう物。
そう、此処は「厨房ですね。本日は此方での職業体験と成って居ります」です!僕の言いたい所を取らないでよ!話の腰がバキバキに折れちゃったからね!
はぁ、にしても生徒会メンバーは基本的にかなり料理が上手い。勿論僕もある程度は得意だ。だが、姉さん達はそれ以上に上手く、美味しい物を作る。なのだが、どうにも調理器具などに興奮する様子は無く、寧ろ違った所に興奮して居た。
僕の服装、それは制服とは真逆の真っ白な厨房着。こう言った色気も無ければ特別とは言い難い服に憧れを抱く物は少ない、もちろん僕も差程嬉しいや楽しいなどの感情は感じられない。が、どうやら姉さん達に取っては違う様だ。
「やっぱり何時もの制服でキリッとした恋ちゃんも良いけど、ちょっとコスプレぽっい感じも可愛い!」と、姉さんは何か僕には理解出来ない所で興奮しながら、僕の腕に抱き着いた。
それがあったのがつい数分前、姉さんが抱き付いて居るのだから逆の腕には勿論、壮絶なジャンケンをして勝った九条先生が抱き付いて居る。
まぁ先生としてはダメかも知れないけど、バスでの事もあって今日は少しだけ甘くしちゃう。
それで、わざわざ職業体験で厨房に来たと言う事は「では、これから皆様には自身で食べて貰いますが、当ホテルで作っているランチを作って貰います」また取りましたね。
まぁ今の通りなので、作り始めるとしましょうか。
「では、メニューはお三方の前にあるボード、それからお手元にある資料の通り和風ステーキとサラダ、ジャガイモの冷製スープ、ヴィシソワーズと呼ばれる物と此方で用意したパンに成って居ります。では、準備が出来しだい個々で始めて貰って結構です。それと質問やメニューに乗って居ない物で使いたい物があれば各自申して頂ければ、出来得る範囲でですがご用意させて頂きます」と言われ、準備は出来て居るので料理が始まった。
とは言っても、皆料理は出来るので、かなりすんなりと作り終わり、食べ始める事に成ってしまった。
別段牛肉を焼いた後に醤油で味付けしたり、茹でたジャガイモを牛乳と一緒にミキサーに掛けて冷やしたり、サラダを盛り付けるぐらいだから料理をしていれば、誰でも出来る。
さて、それじゃあ楽しい食事の時間か。
地獄の時間に成らない事だけを祈ろう。
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