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確か次は、この合宿の本文である勉強への取り組みだったかな。まぁ合宿ならではだからか、各個人個人の苦手科目に寄って分けられるのだが、生徒会メンバーは基本的には全ての科目で高点数を収めて居る。その中で苦手意識のある科目ならば分からなくも無い、と言いたいのは山々なんだけど、生徒会メンバーには勉強などの物で苦手意識は存在感せず、下手に勉強を教わるのは返って学力を落としかねない。なので一般生徒と混じりながら、護身術を学ぶ事に成った。
護身術は既日頃からよく身に纏って居る衣服、学生ならば制服を着たままやる事で寄り実践的な練習が出来る。
何畳もの畳が敷かれた床の上に立ち、右足を左足の後ろに下げ、体重移動が楽に出来る状態にする。基本中の基本、格闘技に全く無縁の人でさえも知っている様な構えをし、始まった。
まるで狂った様に極上の笑みを浮かべながら迫り来る『それ』の腕を掴み、『それ』が作り出した威力に対して流す様に力を加える。簡単に噛み砕き説明すると走って居る人間を後ろから押して居るのと同じに近い。科学的にだとベクトルに対して更なるベクトルを掛け、加速させた上でベクトルの流れをスムーズに変え、空中へと誘う。
畳の上に背中から叩き落され、痛みこそ無いが強い衝撃と往なされた時に感じる空中に浮いた様な感覚、衝撃に寄り限り無く無い近い脳震盪が襲い掛かる。当然、叩き落されたのは僕では無く、僕と対戦をして居た誰とも知らない他のクラスの男子だ。
驚きの余り放心状態らしいが、今やって居るのは曲がりなりにも護身術の授業であって、寝る時間では無い。当然立ってもらわなければ困る。
因みに姉さん達は九条先生に教えて貰って居るみたいだが、サクラさんはともかく、他のメンバーは明らかなまでに強い。お世辞抜きでその辺りに居る不良ぐらいなら瞬殺だよ。
サクラさんの場合は剣術や銃術の類いが得意そうだし、困惑気味みたいだ。
にしても、まだ放心状態ですか。そろそろ自分の状態が理解出来ても良い頃なのに、飽きれた様にそう思いながら畳の上に、物の見事に大の字に成って倒れて居る男を見て「早く起きて貰っても良いですか?授業進まないですけど」と普通の事を普通に言った。が、この人は何処か勘違いをして居るらしい。
先ほども言ったが、この人は狂気じみた笑みを浮かべていた。大方合法的に僕を殴れる事が嬉しかったのだろうが、生憎あんな後先考えずに突っ込んで来たせいで一瞬で終わってしまった。
しかも、僕が勝者と言う形で。その上で僕には運動が苦手(平均過ぎて下)だ。つまり此方が何をせずとも彼方からすれば不愉快で、気に食わなくて、ウザいのだろう。
だからこそ、僕の声に反応したその人は直ぐに立ち上がり、僕の方を見て指差しながら「な、何かの間違いだ!!!」と叫んだ。当然畳にぶつかる音ならば何も無いが、理解できる言葉での叫び声ならば別だ。
多数の目線が僕達の方を向き、そして「あり得無い!運動が皆無で何の取り柄も無い奴がぁ!この俺様に、格闘家イケメンアイドルとしてオファーが掛かって居るこの俺様に!勝てる筈が無い!俺様を妬んできっと何かをしたんだぁ!それでも人間、日本の男か!」とその人は自分こそが正しい、自分こそが正義、そして僕が悪だと言わんばかりの大演説。まぁ確実に言ってるけど。
でもさぁ、完全に負けてたよ。こう言う人には正論とか通じ無いのが嫌だよね。
ただ相手も相手成りにプライドもあるが、負けた恐怖もある様でたまたま参加して居た、新入生のホープ?とか言われて居る人を連れて来た。
180cmはあるだろう大きな体、服の上からでも筋肉質なのが分かり、多分本人が望まない所で威圧的な雰囲気が出されて居る感じ。顔は凄く優しそうなのに、その体が邪魔をしてる。
で、呼ばれた人自体もあんまり状況を理解して無い様だ。まぁ僕と言う事あってか、それとも面倒なだけなのかは定かでは無いが、僕の方に視線を向けると「何を言っても収まる光景では無い様だし、君には何の罪も無いのだろうが、戦ってもらうよ」嘘だよね、それ。だって顔が気持ち悪いって思えるぐらいに笑顔だよ。
取り敢えず本当に収まりが付きそうぬも無いので、開始線に移動して先ほどと同じ様に構えた。それに釣られて相手も構え、姉さん達も何かを言いたそうだが有無を言わせず始まらせた。
相手は此方を伺いながらも間合いを測る様な強くも無く、弱くも無い突きを前に突き放つ。なるほど、確かにホープと言われるだけあってしっかりと考えた上で放った様だが、勿論僕に届く事も無ければ、僕を視界で捉え切れる筈も無い。
一瞬、突きの動作に入った瞬間、相手の視線が腕を見た瞬間に最高速度で相手の後ろに移動した。周りの人は何が起こったか分からずに唖然とし、誰寄りも驚いたのは目の前で消えられた相手だろう。
魔法やマジックを見せられて居るかの様に一瞬で消えるのは幻想的であり、同時に恐怖でもある。が、それを理解する間も無く、直感的に僕を探し、見つけた相手は怒涛とは違う。ただ藪から棒に突きと蹴りを放つ。
確かにこれが一般人への攻撃なら良い。だけど、相手をして居る僕には一切効かない。
紙一重で交わす、それは攻撃をして居る側は『あともう少しで!』と焦り更なる攻撃を放つ事になる。それを無視し、意として紙一重で交わすのは余裕の行動なのか相手の攻撃に合わせて動くからなのかは定かでは無い。
今は先ず言えるのは、明らかなまでに相手の放つ全てが弱い、いや。強いには強い。だけど実戦的な戦闘方では無さ過ぎる。所詮はスポーツとしての格闘技だと言う事だろう。
交わし続けるのも飽きたので、右手の拳を軽く握り締め、相手が僕に突きを放った瞬間。それを左手で逸らす様に否しながら拳を突き刺す。
真っ直ぐ、一向真っ直ぐ相手を突き刺す様に。
同時に右腕全体に何か押される様な反動が来るが、それすらも押し込み相手を吹き飛ばす。180cm物身体は軽く放物線を描きながら2mは吹き飛び、相手の腹。僕が突き刺した場所には拳の形をした焦げ跡が残って居る。
結構力を抜いたんだけど、こんな物か。周りに走る静寂とは裏腹にそんな事を思いつつ、元々相手をして居た人を見るとかなり唖然として居た。
それからは、男子は悉く僕との練習を嫌がったので女子に教える形で練習を始め、そして2時間程で全員の体力が無くなり、護身術の訓練は幕を閉じた。
時刻は午後6時、世間一般で見ればまだ夕方で遊んで居る人も居る時間帯だが、旅館では大体今ぐらいから夕食が始まる。
大広間と呼ばれる何畳もの畳が惹かれた団体客などをもてなす場所。話が進む様にと男女に席は分かれ、生徒会メンバーは仕切り役兼で年上が多い事から先生方と同じ席に座って居る。
基本的には女将さんからの挨拶の様な物は無く、全員が揃った所で食事が始まった。
各席から聞こえて来る楽しそうな話し声や僕への視線。その中に交じる様に合同授業での話も流れ、良く言えば賑やか、悪く言えばざわざわとした雰囲気が漂う。どう言おうとも全て僕に関連していそうだ。
食事の時ぐらい静かに出来無いのか、普段の僕ではあまり出さない少しキレた思考だが、疲れから来て居るのだろう。そもそもこれ自体も僕が起こして居る現象から成り立つ物、思考は全て災いだな。
どう考えても体力を消費させられてしまう。
溜め息が出そうな身体を何とか支え食事を始めた。
食事は昼間の様な精進料理とは違い、豪華な和食が並んでいる。刺身に味噌汁、ご飯や和え物、天ぷらと言ったどれもシンプルな味わいで僕や先生方は好きだろうが、生徒会メンバーは知らないけど他の人で好きな人は変わり者かもしれ無い。実際肉何かが好きな人が多く、和食寄りも洋食の方が食卓に出る事が多い。
日本人としてどうかとも思うけど、僕の家でも和食と洋食を交互に出してるし、まぁ美味しければ大体何でもいっか。
広げらる和食とはあまり合わないと懸念してしまうが、コップに注がれたソフトドリンク、オレンジジュースを一口飲んだ。100%ジュースだからか味が濃く、疲れた身体には良く効くのは分かる。でも和食には合わな過ぎるでしょ。
先生方がお茶を飲んでいるのが羨ましいよ。と思った所で何も無く、食事に着こうとした瞬間、色々話したりはしたが姉さん達ほど絡みが少なかったからか、飛鳥さんの指が僕の指に絡まり、体重をゆっくりと僕の方に預けて来た。
それは可愛いらしいと言う表現が1番似合っており、また制服越しから伝わって来る徐々に上昇して行く熱や優しく、まだ風呂に入って無いので強く濃い体臭が妙な気持ちを誘う。同時に周りの視線も食い入る様に、真っ直ぐ振り落とされたナイフが突き刺さる様に強く激しく、劣悪な物へと変わっていく。が、流れゆく時間の流れに抗い、それを止める事など出来る筈も無く、地獄に違い感じで夕食は終わりを迎えた。
温泉もとい風呂。それは身も心も安らぎ、尚且つ男女別々に入る事がほぼ当たり前と成って居る物。当然、僕もそれは大好きであり、一般生徒や一般客が来ない時間帯を狙って入りに来た。
旅館に着いた時も感じたが、天然温泉独特の硫黄の鼻に掛かる様な匂いが漂い、また体を洗う様に設置された桶やシャンプーなどが備え付けられたシャワー。そして温泉では無いが広々と足を伸ばし、リラックスしながら体を温められる湯船。その奥に作られた正確には分からないが、少し冷える体が湯の暖かさで引き締まり、伸ばされ頭が冷やされる事に寄って逆上せ辛く、幾らでも入って居られる露天風呂があった。
個人的には此処で愚痴でも言える人が居れば良いのだが、生憎そう言うのとは無縁の為、人が全く居ない貸し切りの今がとても嬉しい。
そんな複雑でも無いが、色々絡み合った考えを持ちながらシャワーの前に座り、見たくも無い顔を見ながら邪魔に成りそうなメガネを外し、頭を洗い始めた。
シャワーからお湯を出し、頭を一度濡らし全体的に濡れた所でメーカーは分からないけど、プラスチックで作られたポンプ式の容器からシャンプーを手に付け、泡立ててから頭を洗って行く。
ゆっくりと揉む様に洗う事に寄って頭皮の汚れは取れるので、10分ぐらい髪を洗い、そしてシャワーで流す。昔からシャンプーハットは使った事が無いが、シャンプーを流している時に目を開けるのはかなり愚かな行為だろう。
運が悪ければ失明の確率もある訳だから、以外と子供が言うシャンプーが怖いと言うのは本当の事だな。
はぁ、それにしても最初は姉さん達に部屋のシャワールームで一緒に入ろうと言われたが、何を考えて居るんだか。幾ら、幾らあの本の影響で変わって来たと言っても、やっぱり憎い。この力も、この容姿も、この性格も、自分自身と言う存在さえすらも。
一体、前世の僕はどれだけの罪人だったのだろう。いや、寧ろ力だけを見れば偽善者並みの善人だったのか。まぁ宗教じみた話は嫌いでも無いが、好き好んで独り言の様に語る気には成れ無い。
愚痴りながらも頭と身体を洗い終え、先ずは何処の風呂屋にでもある様な大きな風呂に身体を沈めた。温度は暑くも無く冷たくも無くと言った所で心地良く、今日の様に疲れた日にはかなり気持ち良い。
自ずと足は伸び、肩まで使った身体は脱力され、妙に軽く成る。
はぁ、今日一日のつかれが溜め息と言う形で零れ落ち、更に僕を不幸にする。しかも風呂を上がれば仕事が待って居る、まさに天国から突き落とされる訳か。
ぼんやりと数十分程黄昏て居ると、唐突に露天風呂に入りたく成り、僕は身体を起き上がらせると露天風呂に足を運ばせた。人間とは不思議な生き物だが、ある種こう言った唐突にやってしまう事は、あまり科学でも証明しきれ無い物もあるのだろう。
そして露天風呂に繋がる戸を開け、外に出た瞬間春先とは言えまだ夜の気温は低く、身体をキューが締め付けられる。急ぐ様にと周りの事には目もくれず露天風呂に入った。
すると今までの寒さは一気に無くなり、天然温泉独特の匂いが身体を安らげ、少し高めの温度が気持ち良く筋肉を解して行くのが分かる。中の時と同じ様に足を伸ばしゆっくりと上を向いて見るとそこには、幻想的な光景が広がって居た。
周りに一切建物が無いおかげで無駄な光は無くなり、寒い季節限定だが空は透き通る様に高く、無数に光る星々が美しい。まるで狙ったかの様に大きな満月すらも広がり、先ほどまでの疲れなどは一瞬で消え去り、今はただこの世界。空と温泉と自分しか存在して居ない世界が広がって居た。
とてつもなく老人に見える様な発言だが、実際風流な風景や音楽などが風呂をより一層居心地良い場所へと変動させてしまう。上がりたく無い、そんな言葉さえ考えてしまうのが露天風呂だ。結構な時間風呂に入って居ても、頭は冷やされて居るので血は登らず、かなりの時間が居れる。
それから20分ぐらいが経ち、仕事もあるのでそろそろで様と腰を上げた瞬間、見ている物に対して理解が追いつかなく成った。
露天風呂の言わば覗きなどが行われるであろう為にしっかりと立てられた壁、そしてそれをバックに映る美しく、柔らかそうな良い匂いが漂うであろう足の近くまで伸びた黒髪、特に化粧をして居るでは無いのだろうがスベスベとした肌に凛とした中にでも可愛らしさや美しさがある顔立ち、当然風呂なので肌に身につける物は一切無く、スタイルの良い腰の括れや胸、全てが隠される事無くそこに有った。
僕は言葉など出なくなり、「あら、恋さんでしたか。どうでしょうか、当店自慢の大浴場と露天風呂は。良ければご奉仕居たしますよ」礼儀の中にも小悪魔な表情があり、漸く女将さんだと理解出来、上せないと言った露天風呂の中なのにも関わらず身体中が一気に暑くなり、僕は「へ、あ、の。ご、ごめんなさい!」そう言いながら逃げる様に更衣室に向かった。
更衣室の中、虚しく握り閉めて居るタオルが床に落ち、未だにしっかりと状況を分かって居ないが、取り敢えず身体を拭き浴衣に着替えてから夏海に写メを送り、落ち着かない気持ちを落ち着かせながら歩いた。今にも転びそうな足取りだが、僕と同じ様に浴衣を着た姉さん達を見た瞬間、そのスタイルから先ほどのそれまで連鎖で呼び起こし、正直仕事をして居ても仕事をして居る感は無く、気が付いたら床に着いていた。
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