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木材の柔らかい何とも言えない匂いと、抑えられては居るが温泉独特の硫黄の匂いが立ち登り、妙な安心感を齎してくれる情緒あふれる旅館。大きさは流石あの学校の専属旅館と言った所だろうか。かなり大きく、所々でしっかりと現代技術が盛り込まれて居る。
そしてバスを降りた僕達はロビーに来たわけだが、右腕には荷物、左腕には秋葉姉さんが柔らかい感触と共にホールドされてる。勿論他の生徒会メンバーからは物欲しそうな視線を向けられ、また旅館の男性職員からは嫉妬から異常な光景を見ている様な視線までもが飛んで来る。それ以外にも女性の視線があるが、正直言ってあまり周りを見る余裕は出来なかった。
まだ始まっても居ない様な時間だが、僕の体力は限り無く0に近い。
その体力に伴う形で周りを気にし、考えている余裕は一切無くなって居る自体で、ただ現状を必死で生きてる感じだ。
すると話しが終わったのか九条先生が紫と薄い黄緑の胸を強調させつつも落ち着いた雰囲気を醸し出す和服に、長く綺麗な黒髪を纏った大和撫子。和服美女と言う感じの女性を連れて来た。
そして やっぱりか、と僕にはそう言葉が思い浮かんだ。何時もと同じ様に姉さんの腕を抱きしめる力が強くなり、それとはお構いなしに先生が話しを始めた。
「この人がこの旅館の女将さんで、名前は」そこで区切ると、バトンパスされた様に女将さんが「田村八雲と申します」と透き通る様な声で自己紹介をすると、また両手を体の中心に当て綺麗な礼をした。
反射的に僕達も礼をしたが、生憎姉さんが腕に抱きついて居るせいで首だけの礼に成ってしまった。
それを見た女将さんは「おやおや、うふふ。しっかりとした生徒さん達ですね。特に男の子、確か舞川さんは。それだと舞川さんと被ってしまいますから恋さんと呼ぶ事にしますね」僕と先生の顔を見ながら、だがしっかり姉さん達の方を見ながら発した強い言葉。
多分名前は生徒会の名簿で確認したんだろうが、今の一言で場の空気がかなり荒れた。しかもそれは突き刺さる様に鋭く、抉り取るナイフの様に『何か言いなさいよ』と言う感じで僕にも飛んで来る。
ただ前にも言ったが何方に転け様が待っているのは地獄であり、天国に向かう事は決してあり得ない。
普通では味わう事の出来ない、この殺伐とした空間ですらも妙に慣れてしまった。だからだろう。視線に押し潰される事無く耐えて居ると、その白い手首に付けて居る腕時計で時間を確認した女将さんが「それではそろそろ、お部屋に案内致します」と話しを切り出し、部屋へと移動し始めた。
途中、スタッフルームや用務室などに挨拶をしたが、まぁ視線は自ずと僕には女性、それ以外の男性からは他のメンバーへと向けられ、かなり皆の苛立って居た。
そんな感じで挨拶は終わり、生徒会はある種特殊な感じなので教員用の部屋を使う。その為案内された横の部屋は九条先生の部屋だ。
部屋の前に着き、女将さんがゆっくりと戸を開けると「えー、当旅館では不純異性交遊などの出来事は絶対に、万が一の事がありましてもその様な事は行わ無いで下さいね」威圧的に、全体に言った言葉の筈だがそれはまるで女性陣に向かって放った言葉の様で、また皆も返事をする事無く無言のまま部屋に入った。
僕も続く様に入り、中を見てみた。10〜13畳程の畳が敷かれて居り、そこまで広くは無いが小さくも無い部屋。TVや冷蔵庫などの家電製品は備え付けられ、少し奥にテーブルが置かれて居る。玄関に当たる所の横にはお手洗いと小さいがシャワールームがつけられて居た。
この部屋を高いと見るか安いと見るかは分からないが、基本的には1〜4、5人用の部屋なのだろう。
良くも無く、悪くも無く、曖昧だがそんな印象を部屋に持った所で部屋の外に居た女将さんが「では、くれぐれも何かふしだらな行為が無い様にしながらお寛ぎ下さいませ」と言い、去った。あれ、可笑しいなぁ。まだ僕の部屋に案内されて無いんだけどなぁ。
『女将さんが言い忘れた』や『先生と姉さん達は同室』と言った、何個かの考えが浮かぶが多分全てが正しい物とは違う。
必要以上に焦る心を落ち着かせ、姉さん達の方を向きながら「因みに、僕は姉さん達と同室じゃな「そうだよ、恋ちゃんには言って無かったのに良く気が付きました。ご褒美としてお姉ちゃんと一緒に寝ようね」」有無を言わさず腕から離れ、軽く部屋を見ている姉さんから返された笑顔の言葉。はぁ、溜め息が零れたが流石にあれだけ女将さんに言われたろうから、口では幾ら言っても何もするまい。
そう思った僕は、そもそも『男女七歳にして席を同じゅうせず』と言う言葉にある通り、同じ部屋で異性が寝食を共にすると言う事を無視した。と言うか、そこを言ってしまえば何か色々と大変な事に成りそうだし。
そしてしっかりと部屋に入った僕は荷物を軽く整理して、会長である姉さんの支持を待った。
他の皆も荷物の整理を終え、それを見計らって「では、先ず神社に行き、学生としての文学へ励む様に座禅を組む事に成ってるから、他の生徒が入る前に行くわ」と会長スイッチが入ったらしく、凛々しく姉さんはそう言うと先生も「えっと、確か旅館の中にあるから」そんな補足説明を受け、僕達は旅館内にある神社に向かった。
旅館内とは言った物の、神社は旅館とは別館で作られて居るので旅館の敷地内が正しい。
距離はそこまで無く、時刻的に見る漸く一般生徒が旅館に到着したぐらいの時間だ。で、僕達も神社に着いた訳だが、此処の神主さんは家の近くにある神社、つまり年越し何かでお世話に成った『舞川』に関係ある神主さん。
「お、若にお嬢。それと生徒会の方々ようこそ来て下さいました。では、午前の授業として座禅に取り組んでもらうのですが、先ずは動き易い服にお着替え下さい」と何時も通り人当たりの良い挨拶をされ、説明通り更衣室に移動して着替えを始めた。
更衣室は個室に成って居り、プライバシーは完全に護る使用に成って居る。デパート何かである更衣室に近いが、それよりも明らかに大きく作られて居るので着替え安い。
で、着替える服だが予め家から持って来たスエットに着替えた。一様着替えたが夏海にはこの格好を何度も見せて居るので写真は取らず、着替えた制服をロッカーの中に居れて神主さんの所に戻った。
そこにはもう女性陣は全員が揃って居て、全員が肌着を着ているので正確なラインは分からないが、それでも綺麗なスタイルでスエット姿にも関わらず美しいと思えた。あと何故全員が少し顔を赤くしてるの?
疑問を抱いたが「全員揃いましたので、座禅が出来る本館の方に参りましょうか」神主さんの言葉で歩き出した。
僕が神主さんに続いて歩こうとした瞬間、スっと両手を違う誰かに取られ、気付いたら姉さんとサクラさんが腕に抱きついて居た。
感じる柔らかさ、何時もは制服越しだが柔らかいスエット越しだからか、何時も以上に柔らかくリアルな感触が腕を襲う。えっと、何でだろ?理解出来ない、何時もの様に唐突に抱き付かれたが何時もとは違う。こう何かに押し負けた様な感じに抱き付かれた。何故そう思ったのかは分からない。ただ姉さん達の顔が赤かった理由は姉さんによって分かった。
「何時もと違う恋ちゃん、かっこいい。なのに可愛くて抱き締めて、抱き付かれたくて。それに生地が薄いから恋ちゃんの感触がしっかりある。気持ち良いよぉ~」和む様に落ち着き、甘えた様に姉さんはそう言い、ポカポカと頬を赤くさせて居た。なるほど、とは行かないが多分皆そんな感じなのだろう。
そうして3分ぐらい歩き本館の中にある本殿へと着いた。
本殿と言うのだから重々しい空気が流れている感じがあるが、実際そう言うのは全く無く、元々は白っぽかったであろう木が長年掛けて黒い木になり、そして出来た部屋だ。横に座禅が苦手な人用の畳が9畳ずつ惹かれて居り、奥には壁一面を覆い尽くす大きな神棚がある。これを見ると本当に神社何だなと言う気になるが、重々しく無い空気の中にピリピリとした張り巡らされた空気があるのがまた良い。
空気を感じながら再び神主さんの方を見ると、神主さんが説明を始めた。
「座禅が苦手な人は横にある畳の上で座禅をして下さい。また、座禅のやり方が分からない場合も教えるので申して貰っても構いません。そして最後に重要な事ですが、座禅自体は何処でしても良いのですが、北側。つまり入り口の方を見ながらやるのと、神棚に背を向けるのだけは禁じられているので気を付けて下さい。では、コレから2時間程の座禅をして集中力と忍耐力を付ける様努力を頑張って貰います。それとあと10分もすれば他の方に教えなければなりませんので、様があれば早目にして下さい。では、開始です」説明を聞き、ゆっくりと皆が動き出すが姉さんとサクラさんはまだ腕にくっ付いたままだ。
はぁ、そんな溜め息が出そうだが抑え、2人に向かって「まだまだ時間はあるし、コレからね」と言い、離れて貰った。多少なりとも腕に負担が掛かって居たのか2人が離れると腕は軽くなり、息をゆっくりと深く吐き、場所を探し始めた。
全ての気が集い、一度は交際する場所。それは基本的に部屋の中心を指す。基本的には神社や寺には本殿を中心として作られて居り、また本殿の中心が神社の中心では無く、 神棚や仏像を中心として広がって居る。
その為1番座禅の効力を発揮するのは神棚の前にと成る。その為僕は神棚に近づいて歩き出した。
あまり座禅は苦手なのか姉さん達は神主さんに正式な方法を聞くと、畳に座った。
それにしても、近づくと更にこの神棚が凄いのが分かる。いや、正確にはこの部屋がかな。基本的な盛り塩から北や西とかにそれぞれの風水に有った物が置かれて居る。
そんな事を感じながら神棚の前に着き、一礼をしてから座り座禅を組み始めた。
太ももの上に足を乗せ、逆の足も太ももに乗せる。以外と骨盤が柔らかく無いの出来ないらしい。まぁ僕は出来るのであまり関係ない。そして手を組み、親指同士をくっ付け、足の上に起き身体の中心に意識を集中させる様な感じで手の中に気を集中させ、無心に成る。
まぁ無心に成ろうと思って無心には成れ無いわな。一様考える事を考え無いと思い、息を吸うのだけを感じる。そうすれば必然的に思考が消える。
気持ち悪い、気持ち良い、何も感じ無い。その全てが分からない。今自分が何をしているのかさえも理解出来ない。
ただ当たり前の様に過ぎて行く時間を感じられるだけ。
どれだけの時間が経とうとも分からない、それが数分なのか何時間なのかさえも。
そんな中、誰かの手が肩を触れ、左右に揺すられた。ゆっくり目を開き、長い時間目を閉じて居たからか光が閃光の様に鋭く、深く目から脳内へと焼き付けられ、寝起きの様な感覚に見舞われた。
誰かが居るのは分かるが人物は分からず、目が冴えるのを待って居ると向こうから話し掛けて来てくれた。「若は本当にお凄い、本来数十年掛けて学ぶ事を意として体得し得る。ですが、今回は入り過ぎたのでしょうなあ、そのままで良いのでお聞き下さい。これより昼食なのですが、若やお嬢などの生徒会面目は隣の部屋を使い方食べるそうです」と声や僕に対する呼び方で神主さんだと言うのが分かり、目を完全に開ける様に成った僕は隣の部屋に移動した。
そこには足を痺らせ、ピクピクとして居る姉さん達が居り、九条先生は現代っ子なんだろう。目に涙まで溜めてるよ。その点、僕には無縁の話と成ってしまった。精神統一は良くやるからね。
そうして姉さん達に干渉される事無く精進料理に近い料理を食べ、午前の部を終わらせた。
因みに精進料理は薄味で、素材本来の味付けなので以外と美味しい。
さて、確か次は………
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