1ー7
生徒会室に居る明らかに不機嫌そうな『美』と言う文字が入る、2人の女性。それが何を表して居るのか、理解するのに1秒もの時間を要さなかった。
時刻は8時00分、つまり時間をオーバーして居るわけでは無い、寧ろ早い方だ。だがそれでも彼女達からすれば、遅いと言いたいんだろう。僕には「ああ」と言う言葉と共に理解し、腕を抱き締めて居る彼女、姉さんも「あ」っと『やってしまった』感のある声を出した。
ただ後ろに居る副会長さんからはその光景が見えないらしい。僕と姉さんが一瞬止まった事に、疑問を抱いたかどうかは知らないが「どうしたの?」そこで言葉を区切り、生徒会室にしっかりと入った瞬間に「おはよう、サクラちゃんと九条先生」とキッパリハッキリと言ってしまった。
場の空気がピンとピアノ線が張り巡らされた様に固まる、酷く硬く。そしてワンテンポ遅れで副会長さんが事態に気づき、更に空気が悪く成る。しかも何でか飛鳥さんはどっかに行ってるし。あれか、逃げたな。
はぁ 慣れた、そんな言葉が頭を過ぎり、僕もまたその言葉の意味を理解して居た。だから悪い空気の中でも「おはようございます、サクラさんと先生」と不機嫌そうな2人の美しく可憐な女性達に言い、固まって居る姉さんを引き摺りながらも所定の位置、ホワイトボードの前に起き、自分の席に座る事が出来た。
危ない綱渡り、成功すれば状況脱出だが失敗すれば底の無い奈落の底へと、永遠バンジー。さて、今の選択は何方に傾いたのかな。
ゆっくりとサクラさんが僕の横の席に座り、先生も仕返しとばかりに何時もは副会長さんが座って居る席、僕の横に座った。流れ的に副会長さんは僕の前の席に座るが、やはり居心地はあまり良く無いのだろう。苦笑いを浮かべながら斜め下を見て黄昏て居る。
そして全員が位置に着いた所で、漸くピアノ線は弾ける様に切れ、固まって居た空気、時間は動き出した。
「恋くん、そのおはようございます」覚束ない、そんなイメージを連想させる様に、急には抜け出せなかったサクラさんがそう挨拶を返してくれて、逆に先生は普段からあまり僕と触れ合うきかい機会も無ければ、今日の様に貯めてしまって居る事もある。それはガソリンの様に燃え易く、ちょっとした何かで全てに引火してしまう。
九条先生は飛び付く様に腕を抱き締め、姉さん達とは違った大人な感触が腕に広がり、適度に付けた香水の香りが僕を包み込む。コレは何処か母さんや天音姉さんに似て居て、でも何処か違った。
この状況だけでも十分に凄いが、先生のそれはまだ満たされ無いらしい。腕伝いに顔を近づけ、鎖骨辺りに顔を埋めると激しく頬擦りをし始めた。
鎖骨だからか少し痛いが、それでも多分僕が止めても先生は止まらないな。何時もなら先ずこんな事には成らない、成る筈が無い。ただ状況が状況だけに。と言うか、物凄い笑顔で息を荒くさせないで、めちゃくちゃ怖いから。
逆に秋葉姉さんや副会長さんは物欲しそうな目をしながら、ジーっと僕と先生を見て居る。まぁ現実は無情成り、今の僕の力では救う事は出来まい。
何秒間か先生がして居るのを見て居たサクラさんも、やりたく成っちゃたんだろう。サクラさんの手がぎこちなく、でもしっかりと僕の手を握り、そして「私にもギューってさせてね」まるで夏海を見て居る様な気持ちに成り、また僕もその様に接してしまった。
手を伸ばし、優しく愛おしむ様に頭に触れ、ふんわりとしたその髪の感触を感じながら、解かす様に細く柔らかい金色の綺麗な髪と頭を撫でた。
やってしまった、同じ様な事が過去にもあった気がしたが2回目だからかな。言葉は出ても焦りはそこまで無い。それに撫でられる度に気持ち良さそうに目を閉じてるのが可愛過ぎ。ついつい何回も撫でてしまう。
何分経っただろうか、だがそんな事は今はどうでもいい。今度は姉さんと副会長さんが不機嫌に成ってしまった様だ、
「ゴホンッ」そんな苛立ちを込めたわざとらしい咳払いをすると、怖いくらいに綺麗な笑みを浮かべ「そろそろ活動内容の確認しなきゃいけないので、2人共今すぐに、秒速100km以上の速度で私の恋ちゃんから離れて下さい」何と言うか、途轍もなく理不尽じゃ無いかな。秒速でそれだけの速度だと、多分出せたとしても体と精神が追いつかないし、脳の限界を突発して10000%ぐらい必要だよ。
ただ2人共いやいやだが離れ、サクラさんは同じ位置だが先生はホワイトボードの横に移動し、まるで。うん見計らってたね。飛鳥さんが「んーと、そろそろ大丈夫かな?」とひょっこり入って来た。
人の苦労も知らないで、何か飛鳥さんだけズルいです。
はぁ、深い溜め息が零れ出てしまった。何だろ、始まる前からこんなに疲れるって。興奮し過ぎて寝れない子供や当日に風邪を引く様なのには絶対成りたく無かったけど、これ程までに体力を削られるんだったらそっちの方が良いな。
まぁどっちにしろ嫌に決まってるけど。
飛鳥さんも所定の位置に座り、何時もの様に副会長さんが横に居ないが会議に近い形で、活動内容の確認が始まった。が、僕はもう耳にタコが出来る程聞かされ、嫌でも暗記が出来てしまったので聞く耳が持てなかった。
それから数分で話は終わり、次はバス移動だ。一気に飛んだ感じがあるが、こんなもんだろう。あと生徒会メンバーは泊まる場所、施設の従業員の方々に挨拶回りがあるので30分程早く出る。
まぁ一般生はHRだったりとでお見送りは、窓から女子がして居るが来ては居ない。居たら居たでそっちの方が可笑しいけど、窓から体を乗り出して大きく腕を振って居る。パッと見たら可笑しな光景過ぎ、ここで手を振り返してもいいんだが多分事故が起きりそうなので辞めておく。
マイクロバスとは言った物の16人乗り様のしっかりしたバスなのには変わり無く、生徒会メンバーだけで行くのなら充分だ。
にしても、先生はやっぱり引率者として前に居るが、何故に皆さん固まる訳で。あー、みなまで言わん。言えば悲しくなりそうだし。
そして先生が運転手さんに向かって「全員乗ったので出して下さい」と言い、バスは目的地へと向かって進み出した。
まぁ10秒と経たずして補助席に座らされると、右横に姉さんが居てその奥にサクラが座り、逆は飛鳥さんが隣で奥は副会長さんが座った。見事に一列で終わったが、これだったら大きめの乗用車でも足りるよね。
まぁ生徒会予算は毎年余るだけだから、こう言った所に使うのは悪く無いけども、要らないでしょ。それとこれだけあるんなら離れ様よ、いや固まって居た理由が緩和されたなら良いけど。でもさぁ、ねぇ。
確かに『大は小を兼ねる』が物には物に見合った物がある。小で足りるならば小で良かろうに。わざわざ金を掛ける意味はあまりにも無さ過ぎる。
色々と考えが浮かんだ所で、携帯の着メロが成り、夏海からのメールが届いた。
内容は『行ってらっしゃい、怪我無く帰って来てね。あと約束も忘れ無いでね』と夏海らしいと言うか、しっかりと労わってはくれるが約束に念を押す所が、夏海が妹らしく甘えて居るんだなと分かる。
取り敢えず『行って来ます、着いて着替えたりしたら写真送ります』と、どうせ姉さん達に嫌と言う程撮られるだろうが、なるべく早く送るとしよう。
そんは返信をした所で携帯をポケットにしまい、一眠りと行きたいが生憎無理な様だ。
「じゃあ、着くまでの間暇だし、王様ゲームでもしましょうか」口元に手を当て、可愛らしいが小悪魔な笑みを浮かべながら副会長さんがそう提案した。
提案、もう確定事項だろうに。姉さん達は直ぐ様首を縦に振り、有無を言わさずに始まった。
僕もこう言うトラブルチックな出来事には慣れてしまった。だから1番の対処法として王様に成り、命令で僕は寝るが構わずゲームを続ける。と言う命令を出せば良い話だ。いや、フラグ………んな訳無いか。
そして副会長さんが何処からか下の方が赤く塗られた割り箸と普通の割り箸を取り出し、下の方が見えなく成るカップを取り出した。ん、可笑しくは無いか。
変な予感が過った様な気もしたが、気負い過ぎだと思い無視をした。
カップの中に割り箸を入れ、シャッフルさせながら一言「それでは今から『王様は恋に命令券!ドキドキ王様ゲーム』を始めるわよ!」んな、ハメやがった。最初から気づいてたな。
と言うか何故他の3人は当たり前みたいな顔をしてるの!可笑しいんだよ。本来の王様ゲームのルールからかなり逸脱されちゃってんだよ!
直ぐに声を出し、この悪魔の様なゲームを止めようとしたが無理だと悟ってしまった。だってもう皆割り箸を決めちゃってるんだも。こう成ると僕が折れるまで交渉してくるから。
段々と体調が著しく悪く成って来たが、勿論誰も助けてはくれない。まだ先生が混ざらないだけ増しだと思う他、やむなし。
深い深い心の溜め息が零れ出そうだが、しょうがないと割り切る事にした。そう、よくある事だと。
体に途轍もなく重たい何かがのし掛かり、体力をかなり削って行く。
そして目を前に向け、割り箸を持った綺麗な女性陣を眺め、1番最初に王様に成ったのは飛鳥だと言うのが分かった。テンションは低いが、まだ飛鳥さんなので安全だと思えるのが攻めてもの救いとなる。
すると普段の冷静な飛鳥さんとは違い、頬を赤くさせながら「えっと、その、じゃあ」冷静とは言い難い、可愛いらしい感じで区切り、頬をもっと赤くさ
せ「耳元で『大好き』って言って」沈黙、深く途切れる事の無い沈黙が周りを支配し、僕も不意打ちを食らったかの様にダメージを受けた。
が、沈黙とは裏腹に期待の眼差しが向けられてるのも事実。頭が痛い、頭痛さえも感じるがここで逃げれるとは思う程、僕は馬鹿ではない。高速に入り時速70kmのバスから落ちればどう成るかぐらい、計算しなくても理解出来た。
息を飲む、ゆっくりと慎重に、まるで割れ物を扱うかの様に飛鳥さんの耳元に近づいて行く。近づく度に優しい匂いが僕を包み込み、また少し荒く成った息遣いが感じられる。
あと数cmで耳を甘かじり出来るぐらいに近くに寄り、そして意を決め「大好きですよ、飛鳥さん」意とした訳では無いが、声には吐息が乗り、飛鳥さんの耳にそれが伝わった瞬間、飛鳥さんは顔を真っ赤。熟したトマトの様に赤くさせ鼻と下半身を抑えながら下を向き、静かに成った。
勿論、他の人には聞こえない様に言ったので『えー』言う顔をして居るが、無視だ。
それならとまた王様ゲームが始まってしまい、今度は副会長さんが王様に成ってしまった。1番成って欲しく無かった人が成るとは、何と言う運の無さ。もとい僕らしいのだろうか。
崩れた様に副会長さんの顔がいやらしい、小悪魔と天使を混ぜた様な笑みに成り、同時に僕の背中に冷んやりと冷たい感覚が襲う。
逃げたい、僕の直感がそう叫ぶが足が固まって居る。動かそうとすれ度に激痛が走る。
感情を押し殺し、痛いぐらいの作り笑顔を浮かべ副会長さんが喋るのを待った。
ほんの数秒の間に何万回と言う回数で思考が動き、数十分にも値する程に感じられた。
やっと、妙にいやらしく副会長さんの唇が開き、ゆっくりと動き「じゃあ、真弓お姉ちゃんと結婚したいって耳の近くで、エッチィ感じで言って」思っていた寄りは低い、そんな感想が出たが普段言わない事の方が言い訳か。身体を自由にしたいならば実力行使で良いし。
裏を読んでしまうと言いたく無く成るが、言うだけと言う安心感からか急激に身体は軽くなり、安堵の気持ちをそのままに飛鳥さんと同じ様に耳元に近づき、気恥ずかしさからか顔が熱く成って来るが無視して、息を空い「真弓お姉ちゃんと結婚したい」ある程度の緩急は付けたが、殆ど棒読みで言った。
理由としては恥ずかしいって言うのもあるけど、秋葉姉さんの表情が滅茶苦茶曇ってたからね。
まぁ聞こえる様に言ったから姉さんは少し落ち込んでるけど大丈夫そうだし、副会長さんも鼻を両手で抑えて下を向いてるから大丈夫でしょう。
気分転換に前、フロントガラスを見てみるとそこには結構な大きさの旅館が見えて来た。確か明日はホテルに泊まる筈だけど、取り敢えずやっと着いた。とだけ言っておこう。
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