魔王のキモチ
大切な君。
守りたい僕。
わかってる。
わかってる事。
僕は、魔王で。
君は光の魔女だという事。
闇と光。
油と水のように決して一つにはなれない存在同士。
そんな存在同士。
今、僕は君と戦っている。
僕が君にできることは、君に全力で攻撃すること。
きっと加減をすれば君は後に罪悪感を生むだろう。
君は、とっても優しい光の魔女なんだから。
だから、僕は消滅してもいい様な悪役になりきる。
簡単な事。
魔王になら簡単な事。
じゃあ、僕は魔王じゃなかったかもしれない。
君は、世界に光をもたらすため。
僕は、仲間達と楽園を創るため。
戦う。
闘う。
きっと君が最後の魔法を使えば僕は、滅びるだろう。
滅びる事に後悔はない。
そう思う。
そう思い込む。
君に伝えられない気持ちなど抑え込む。 君が幸せであればそれでいいんだから。
「この程度か、光の魔女よ。そんな魔法じゃ我は倒せぬぞ。」
最後の魔法を誘う言葉。
終末を急ぐ言葉。
これ以上は辛い。
辛い。
どうせ叶わぬ願いなら。
早く消えてしまいたい。
君は、真っ直ぐ僕を見る。
正義の瞳で、
透き通った瞳で、
そして、杖を僕へ向ける。
最後の魔法だ。
これを受けたら、僕は死ぬ。
世界は、平和に包まれる。
君は、人々に拝められ幸せになる。
それでいい。
それを望んでいた。きっと…
光が僕の体を包む。
ああ、これが最後の魔法か…
思っていたより暖かい。
そして、優しい。
まるで、君のように
だけど、体は崩れていく。
これでいい。
これでいいんだ。
何度も思考を巡らして、考え出した最高の答えだ。
…
……
………
ダメだ。
最後なのに
あと数秒で、終わるのに
君がとても愛しい
愛しさが増して行く
君に伝えたい。
君に僕のキモチを伝えたい。
でも、ダメなんだ。
僕の中のキモチとキモチが、喧嘩する。
僕は、無意識に呟いていた。
「愛しているよ。」
声になったかは、わからない。
出来れば、君の耳に届くなと願った。
僕が最期に見たのは、君の頬に流れる水だった。
…アイシテイタヨ