第2話 魔王 ユース・ウカット
詠唱魔法。リプロシェライエ。
僕は神・クフェイトクリヒによって命を受けた。史実通りならここから伝説が始まるはず。このナビルド・コダールヒによる圧巻の英雄劇が。
最新のデータを読み込みます。――
ゲーム開始します。
名前を設定してください。
『ソフィック・ロジット』
この名前で確定しますか?
セーブデータ1に保存されました。
「ロジット。起きなさい。もう朝よ。今日から冒険に出かけるって昨日言ってたじゃない?行かなくていいの?」
そういえばそんなことを言っていたような気がする。
「ん……?やばい。お母さん、いま何時?」
実質67年も生きているから時間の感覚が抜けてしまっていた。そういえば60年前もこんな風に寝坊したんだっけ?
覚えていない……。
「いまは鹿の刻よ。まだ間に合うでしょう。早く準備して出発するわよ。送ってあげるから、急ぎなさい」
というかお母さんの解像度があがってるじゃん。時代の流れは素晴らしいな。身体も思うように動かせる。
「送るって言ったって、馬車しかないだろ?走った方がまだマシだっつーの」
確かチュートリアルだとこの後には……
「もう知らないわよ。1人で市役所に向かいなさい」
思った通りの返答だ。
こんな序盤から有利な状況を作り出してしまっていいのか。
いやまだモンスターにも会っていないのに油断なんてしていたら、かつてのあの名が汚れてしまう。
「いってきます、お母さん」
初期装備は街の地図と片手ナイフ、そして通貨だ。
ちなみに通貨はサンスを扱う。僕は100サンスを持って家を出た。
家を出ると幼馴染の
名前を設定してください。
『コバルン・ヤンカーワ』
人呼んでコバヤン。
家を出ると幼馴染のコバヤンが立っていた。
「おはよう、ロジットくん。今日は一緒に冒険に出る約束でしょ?忘れたの?」
確かこの物語は幼馴染を助けるはなし。魔王がやってくるんだっけ?
「おはよう、コバヤン。つい寝坊しちゃってね、遅れてごめんね」
僕はこの子は7歳ながら密かに恋心を抱いていた。7歳の恋愛なんてと思うかもしれないが、これからの付き合いを考えてほしい。
「それじゃあ、いこ。ロジッ」
突然彼女の影がたちのぼり、この世のものとは思えないような人相をした魔王が現れる。
あれ?なんか魔王の登場の仕方変わった?前は普通に馬車でやってこなかったっけ?
「コバヤンは私のものだ、ロジットよ。助けたくば、魔王城にこい。そこで私は待っている」
「返して、魔王。彼女は僕と結婚の約束をしているんだ」
「そうかそうか。なら尚更こいつを助けにこなければいけないな。せいぜい頑張ってくれよ。そうだな、攻略のヒントを与えよう。矜持を持つこと」
昔の僕はこれを教授に聞き間違えた。だから、物語の進行が無駄な時間で潰されたってわけか。
「待ってるね、ロジット」
僕はその言葉が彼女の最期の言葉だと思った。
ちなみにこいつの名前は最後に明かされたのだが、ユース・ウカットと言っていた。
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