第1話
俺の名前は、櫻井 修斗。
石川県立金沢南高校に通う高校3年生だ。
学校ではサッカー部に所属し、一応キャプテンを任されている。
ま、3年生は俺だけだからしょうがないんだけど……
ガラッ
「おはよ〜」
「あっ、キャプテン!おはようございます」
「お……おはようございます……」
「5月なのに寒いですね……」
朝練――朝早く部室に来て居たのは今年入ってきた1年生。
田崎 守、上村 航大、若林 隆二、だった。
「キャプテン……昨日の練習試合も散々でしたね……」
田崎が言った。
ウチの高校は、俺が産まれる前には全国大会にも連続出場し、準優勝まで経験した事がある、言わば強豪校だったのだが……
「17-0だもんな……」
今は見る影も無い弱小校である。
「その前は13-1です」
若林が追い討ちをかける。
「あ……あの……」
「ん?どうした、上村」
「さ……坂井くんがもう辞めるって……」
「またか……」
今年の春には18人居た部員も、とうとう11人となってしまった。
「今週末の練習試合……負けたらまた、退部者が出るだろうな……そうなると……」
修斗の頭に廃部の文字がチラつく。
「いやいや、やる前から何考えてんだ俺!」
「おはよ〜」「ちゃ〜す!」「…………」
坂井 涼太、浜神 零、山口 雅治。
2年生トリオだ。
「おう、おはよう!なあ、涼太。弟、辞めるんだって?」
「あぁ……そう言えばそんな事言ってたな陣のやつ」
「…………ついに11人」
「山口!数字は出さないでくれ……とりあえず朝練始めるぞ!」
「寒〜ぃ!キャプ。今日、朝練止めません?」
「何、言ってんだ浜神。今週末の練習試合に勝ったら陣、戻ってくるかもしれないだろ」
「ワケないワケない」
先にグラウンドで朝練の準備をしていた3人が部室へ戻って来た。
「準備出来ました!」
1年生 橋本 翔
「早く練習しましょうよ!」
1年生 橘 裕太郎
「キャプテン、今日、克也。朝練休みです」
2年生 副キャプテン 長谷川 忠晴
そして、今日休みだと言う、2年生 森 克也。
「分かった。また克也のヤツ寝坊か?」
全員が練習着に着替えゾロゾロとグラウンドへ向かう。
「とりあえず、監督来るまでにアップ終わらせとくぞ……」
タッタッタッタッ――
丁度アップを終えた頃にアクビをしながら、初老の男がグラウンドへと入ってきた。
「みんな集合!監督おはようございます!」
「ん。」
金沢南高校サッカー部 監督 須賀 健三
かつて我が校を全国大会準優勝へと導いた名将……だったのだが
度を超えた指導がPTAで問題となったり、子供たちのサッカー離れにより、今ではすっかりやる気を削がれていた。
「朝練のメニューどうしましょうか?」
「ん、適当にやっといて……ふぁ〜……」
「は、はぁ……」
こんな感じである。
一通りパス練習、シュート練習などを行い。
「お〜い。時間だぞ〜……」
「ありがとうございました!」
何にありがとうなんだか……
週末の練習試合、相手も似たり寄ったりな強さ……
今の自分達にはライバル関係と言える金沢第一高校である。
「第一なら……何とか勝て、るかなぁ。はぁ……」
キーンコーンカーンコーン――
今日は、朝練のみで部活は終わり……
こんな調子じゃ廃部になっても仕方が無い。
帰り道――ふと修斗の目に小さな鳥居が見えた。
「ん?あんな所に神社なんかあったっけ……」
神頼み――そんな言葉もある。
「よし!たまたま見つけたのも何かの縁。神様にでもお願いしてみるか!」
鳥居をくぐり参道を少し歩くと、 古ぼけた社があった。
社の前には一丁前に賽銭箱が置かれている。
チャリン
ガランガラン!
パンパン!
「神様。今週末のサッカーの練習試合勝てます様に……」
こんな物で勝てる様になる訳でも無いが……
「ふぅ、帰るか……」
帰路に着こうと踵を返す。
その時
(安っすい賽銭じゃなあ……まぁ……ヒマだし少し手伝ってやるか……)
「ん?なんか聞こえたか?」
振り返るが誰も居ない。
少し怖くなり、そそくさと神社を後にした。
練習試合当日――
「ま、頑張んなさい……どっこいしょ……」
何とも覇気の入らない監督からの激励。
ピー!キックオフ。
試合開始だ。
「あれ?いつもより相手が良く見えるな……」
(そりゃ、そうじゃ……)
「ん?」
「キャ、キャプテン……パス来てます……」
パシッ!
やけに周りが遅く見える。
ゆっくり飛んでくるボールを受け修斗は思った。
あそこに蹴れば、翔決めれそうだな……
バシッ!
「翔!頼んだ!」
翔は懸命に走り足を伸ばす
伸ばした足に吸い込まれる様にボールが当たり――
バシュ……
ピピィー!
「ゴール!!」
先制点なんて何時ぶりだろう……
「キャプテン!やった、やりましたよ!俺!めちゃくちゃギリギリでしたけど。あんな鋭いパスするから――」
修斗の手を握り翔がはしゃいでいる。
俺……そんな強いパス出してないけどなぁ
(ふぅ……わしゃ、もう疲れた、あとはお前さんに任せた)
(お、おい!じいさん!任せたって無責任な。俺はアンタみたいな事出来ね〜ぞ!)
(あの坊主の中に入ればいいじゃないか)
(はぁ〜〜?)
なんか、ごちゃごちゃと感じるが気のせいか……
とりあえず――「よしっ!この試合勝つぞ!」




