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第14話:伝説のバケガニ、ふたたび

それは、とある穏やかな浜辺。


陽射しがきらめく波間に、まるで岩のような巨体がひっそりと佇んでいた。


それは、海の王にして伝説の甲殻生物――マサル


あのマグロとの激闘から幾星霜。今や彼は人間の言葉を学び、テレパシーでの簡易会話すら可能になっていた。




しかし、長年の激戦の代償として、勝の歩脚は数本欠け、ついにはヤドカリ的な分類へと移行してしまった。


彼は沈没戦艦を住処とし、甲羅の代わりにそのコア骨格を背負う形で生きる伝説となっていた。




そんなある日――




「……ん? アレハ……」


遠くから、赤いマントをたなびかせた若者が、砂浜を踏みしめながら近づいてくる。




その名はリュウガ。


まだ修行中の炎の魔剣士。


彼は祖父から伝え聞いた「バケガニ伝説」を信じ、己の力を試すべくこの地を訪れたのだった。




リュウガは荒い息をつき、キリッと目を細めると、大声で叫んだ。




「そこにいるのが伝説のバケガニか! 腕試しに来たぞ!!」




……岩(勝)は動かない。




しかし次の瞬間、岩に見えた物体がむっくりと起き上がった。


甲羅からは機械的な光のラインが淡く走り、無数の脚がゆっくりと砂を踏む。




「ヤメテオケ……キケンダ」




重々しい念話が、リュウガの頭の中に直接響いた。




「おおっ⁉ 思念会話!? すげぇ! でもやるからには容赦しないぜ!!」




リュウガは構えると、背負う魔剣に炎を宿し――叫んだ。




「爆炎斬ッ!!」




バシュウゥッ!!




激しい火花とともに魔剣が振り下ろされる!


だが――その一撃を、勝は平然とハサミキャッチ。




「イタイメニアワナイト……ワカラナイカ」




そのまま、魔剣ごとリュウガを軽々と持ち上げ――


ズン! ガン! バシーン!




――岩に叩きつけること数度。




リュウガの視界がグルグル回る。だが、まだ意識はある。


勝はしばらく考えた後、ついに超手加減のシャコパンチを繰り出した。




「……ゴメンネ……チョットダケ……」




ポフッ。




それでも頑丈なリュウガは、目を回してその場にパタンと倒れた。


やがて、静寂。




波が静かに寄せては返す砂浜に、若き魔剣士の意識を失った姿と、去っていく甲殻の巨影だけが残される。




夕陽の中、勝の背中のコア骨格がわずかに光を灯しながら、海の向こうへと沈んでいった――。

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