第11話:カニは再び海を翔ける
ズワイタウンに別れを告げた勝の目に、もう迷いはなかった。
あの巨大マグロ――虚無の先兵。
あいつに勝つためだけに、カジキの魔力を燃やし尽くし、ヤシガニのハサミ、モンハナシャコの拳、そしてタカアシガニの巨体を融合させたのだ。
「今度はオレの番だ!」
ズワイの応援を背に、勝はミサイルのごとく水を突き破り、マグロの元へと急襲する。
その速さ、まさに水中の弾丸。カジキの魂が彼の体を加速させていた。
「……ん?」
遥か彼方にいたマグロの巨体がピクリと反応した。
ズドォォォォン!!
次の瞬間、マグロが正面からの突撃で迎え撃ってきた!
圧倒的な質量と質量の衝突。勝の甲羅にヒビが入り、あたりの海水が一瞬にして泡立つ。
「うおおおおおおッ!」
吹き飛ばされそうになりながらも、勝はすかさず体勢を立て直す。
今の勝には、“速さ”がある。
大きさでも、硬さでもない――スピードだ!
「こういうのはな……先に後ろを取った方が勝つんだよ!!」
勝はマグロの周囲を目にも止まらぬ速さで旋回し、狙いを定めた。
――ヤシガニの超握力ハサミで、尾びれをガシィッ!!
マグロが慌てて暴れる。が、すでに遅い。
「これが……カニ界の、NEWパンチだァッ!!!」
ドゴォッ!!
バゴォォッ!!
ガガガガガガガガガガ!!!
シャコの力を取り入れたシャコパンチ連打!
貫通する水流、超振動、深海を揺らす閃光の嵐――!
マグロの体が大きく仰け反る。
さらに追い討ちだ!
「シャコパンチ・ヴァリアント!!」
バシュッッッッ!!!
まるで大砲のような一撃がマグロの側頭部に炸裂し、ついに――
「……終わりだッ!」
マグロが大きくうねりながら、ゆっくりと深海へ沈んでいく。
――勝った。
勝は、勝ったのだ。
海の静寂が戻る。泡ひとつない空間で、彼は深呼吸した。
「ふぅ……やっぱ、オレ、強くなったな」
しかし。
ふと、自分の身体に違和感を覚える。
足が、少し……軽い?
勝は海底の鏡岩に近づき、自分の姿を映してみた。
「あれ……?」
数える。1本……2本……3本……4本……5本……6本。
「な、なんで!? オレの足、6本しかない!?」
その瞬間、勝の脳裏に浮かんだのは――
「カニ:歩脚8本。ヤドカリ:6本」という、生物分類の冷酷な事実。
「まさか……戦ってる間に……!?」
さらに、彼の体のシルエットは、どこか細長く、背に違和感のある曲面を持ち始めていた。
それはまさしく、甲殻類界の別カテゴリ――ヤドカリの姿だったのだ!
「オレ、まさか……ヤドカリになっちまったのか……!?」
深海の冷たい流れが、勝の勝利を祝うでもなく、静かに吹き抜けていった。
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