表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

東雲夫婦は愛情過多〜内緒だった筈なのですが〜

作者: 桃井夏流

仲良し幼馴染がひたすらイチャイチャしている話です。さらっと読んでいただけたら。夏月と言う名でpixivにも載せています。


「やっぱりおにぎりにミルクティーは合わなかったー!!」

「だから挑戦するなって言ったじゃん」

「だってミルクティーもたらこおにぎりも好きなんだもん!両方売ってたらこれだ!ってなるじゃん!」

「ならん」


私が半泣きになりながら藍ちゃんと昼食を取っていると後ろから手が伸びた。


「やっぱり千歳馬鹿でしょ」

「はぁ!?平均ですけど!?」

「俺よりは馬鹿だ」

「那智よりは大体の人間が馬鹿だもん!」


目の前にペットボトルの麦茶が置かれる。


「え?那智神?」

「崇めて良いよ」

「さす那智!顔良し頭よし運動よし!」

「語彙力」


そう言いながら私の飲みかけのミルクティーまで回収してくれる。もう片手にはビニール袋を持って。

え?まじ神?


「ありがと!」

「今日の晩御飯生姜焼き。玉ねぎ入りのやつ」

「任せろ!」


ペットボトルに手を伸ばすと、藍ちゃんがニヤけている事に気が付いた。


「どした?」

「いやぁ?相変わらずですねぇ東雲夫婦は」

「私の名字は佐々木だけど」

「分かってるよ!揶揄ってんだよ!」

「勇気パパと亡くなった絵里ママもらぶらぶだったもんね、分かるー」

「知らんわ!お前らの事じゃ!」

「え!?私既婚者なの!?」

「そんだけ仲が良いって事で…はぁ、もういい、揶揄いがいの無い子」

「えへへ、それ程でも」

「褒めてないわ!」



玉ねぎ入り生姜焼きとポテトサラダの準備をしていると那智がただいまーと言って帰って来た。


「おかえりー遅かったね」

「悪い、部活長引いた。手、洗ってくる」

「あ、今日お兄ちゃん出張で居ないから」


洗面所から物凄い物音がした。思わず見に行く。


「那智大丈夫?」


ひらひらと手を振られた。どうしたんだろ?

とりあえず夕食の続きを作る事にした。




「ねぇ、私と那智って仲良いの?」

「泣かすぞお前」

「ごめんなさい」


生姜焼きを食べながらガチなトーンで言われたので思わず謝った。


「大体お前がバラしたく無いって言うから黙ってやってるんだぞ!?」

「だって私死にたくない」

「お前を好きなヤツだってすげー居るのに。俺がどれだけ牽制してると思って…」

「え!?そんな奇特な人居るんだ!?」

「自分で言うな!そしてそれは俺の事もディスってるからな!?」

「えへへ、私愛されてるー」

「全くだ」

「えへへー!」

「可愛い奴め」


その時私のスマホが鳴った。二人で顔を合わせてため息を吐く。


「出たら?千尋さんだろ?」

「面倒くさい」

「出なかったらあの人帰ってくるぞ。何が何でも」


それも凄く面倒くさいので私は渋々電話に出た。


「はい、千歳です」

『無事か千歳!?』

「私命でも狙われてるの?」

『命と同じくらい大切な物を狙われてる!』

「えー、そっかぁ。大変だなぁ」

『東雲那智はもう帰ったな!?』

「なぅ、生姜焼き中」

『早く食って帰れって言え!』

「お兄ちゃんは私の作ったご飯を咀嚼だけして済ませって言うんだ。ふーん、もう明後日からおにぎりだけで生きていけば?」

『あぁぁぁぁ!違うんだ千歳!千歳のご飯は世界一美味しいぞ!?』

「世界中の料理人に謝って」

『千歳なんかお兄ちゃんに冷たくないか!?』

「お兄ちゃんが那智に態度悪いのがいけない」

『やっぱり東雲那智の野朗許せねぇ!!』

「じゃあ私もお兄ちゃん許さない」

『千歳ー!!』


那智が箸を置いて私の方に手を出した。


「千歳代わって」

「えー…」

「良いから」

「那智が代わるって」

『あぁん!?良い度胸だ!!」

「お兄ちゃん柄悪…」


めちゃくちゃ心配ながら嫌々那智にスマホを渡す。


「那智です」


「え?嫌です。だって今日千歳一人で留守番なんですよ?もし一人でお風呂入ってる間に何かあったらどうするんですか?」


「ほら心配でしょう?俺だって心配です。隣に住んでるからって直ぐ来られる訳じゃないんですよ?」


「その点俺なら責任取ります。いずれにしても千歳はいつか東雲千歳になるので。え?婚姻届に署名しない?逆に良いんですか?千歳の歴史的瞬間に混ざれなくても」

「えー、那智かっこいい!好き!私頑張って良い奥さんになる!」

『しののめなちしね!!』


私にまで聞こえる声でお兄ちゃんが呪詛を吐いた。

思わず本気でスンとなる。


「那智、スピーカーにして」

「はぁ…程々にしろよ?」


那智がスピーカーモードにしてスマホをテーブルの上に置いた。


『大体お前は引っ越して来た時からそうだ!俺の可愛い千歳にベタベタベタベタベタベタ!ガムテープか!!』

「ふーん。お兄ちゃん、私言ったよね?私那智大好きだって。好きだから一緒に居るんだよ?つまり私もガムテープって事になるよね?私人間じゃないんだよね?じゃあお兄ちゃん、あ、すみません、千尋さんの妹なんて立場烏滸がましいので早々に戸籍から離れますので安心して下さいね?」

『すみませんでした!!』

「いえ、良いんですよ?明日には佐々木千歳から東雲千歳になりますね?大丈夫、勇気パパとおばあちゃんが居ますから。署名、したくないんでしたよね?」

『ごめんなざいぃぃぃ!まだおよめにいがないでぇぇぇ!!』

「然るべき時にはちゃんと署名する?」

『じまずぅ、ざぜでぐだざぃぃぃ!』

「だって!良かったね那智!」

「お前時々鬼になるよな」

「えー?那智を傷付ける奴には制裁をだよねー?」

「それは、同感だが。実の兄相手にまぁ容赦無いな」

「那智大好きだもーん!」

『グスン、頼むからお兄ちゃんの聞いてるとこでいちゃつかないで…』

「え?じゃあきっていい?」

『九時前には帰れよな東雲那智!!』

「その後の千歳の安全は?」

『グッ…千歳が寝たらちゃんと施錠して帰れよな!!』

「千尋さん本当千歳に甘いですよね」

『うるせー!当たり前じゃー!可愛い可愛いたった一人の妹じゃ!!』

「分かります、千歳は可愛いですよね。じゃ、そう言う事で言質は取りました。出張頑張って下さいね、お義兄さん」

『あぁ!?誰がお前の兄だ!?』

「出張頑張ってねお兄ちゃん!おやすみなさーい!」

『待って千歳!部屋の鍵はかけてね!?東雲那智を部屋に入れたら駄目だよ!?』

「おやすみなさい!」


ぶち。


もうサイレントモードにしよ。誰がガムテープだ。お前だ。お前の方が粘着質だわ。


「千歳、顔」

「ハッ!生姜焼き冷めた…」

「次に気にするのがそれか」

「だってせっかく那智がリクエストしてくれたのに。美味しく食べて欲しかった…」

「ふーん、可愛い事言うじゃん」


那智がかっこいい顔で笑ってる。やだ照れちゃうな。


「千歳、俺はお前がお風呂に入って、部屋に入って寝たら玄関の鍵を施錠して帰らないといけない」

「えー、律儀」

「約束破ったらあの人それこそ家に上げてくれなくなるだろ。だから」

「だからー?」


なんだいなんだい、正論破だな!でもさでもさ、ちょっとぐらい名残惜しんでくれても良くない?ぶーぶー。


と私がむくれて居たら、那智が椅子から立ち上がって身を乗り出して来た。ちょいちょいと手招きするから私も椅子から立ち上がって身を乗り出した。


「お風呂から上がったらちょっとだけイチャイチャしようぜ」


耳元で甘い声で囁かれて顔が熱くなるのが分かった。


「する」

「よし。んじゃまず世界一美味い生姜焼き食べてからだな」


お兄ちゃんに言われた時と全然違う。


「世界一美味しい?」

「世界一好きな女が作ったご飯だから美味い、かな」

「那智好き」

「そうだろ」

「世界一好き」

「早よ食え。イチャイチャするんだろ?」

「するー!えー!どうする?本当に東雲夫婦になっちゃう?」

「いずれなるけど、どうした?」

「藍ちゃんに言われた。私達そう言われてるらしい」

「え。それ付き合ってるの隠してる意味あるのか?」

「もう無いかもー!那智が私の彼氏だって言いたくなって来ちゃったかもー!」

「なら言えよ。俺ももう隠すのしんどかったし」

「那智私の彼氏!」

「いや、大分前からな」

「私は那智の彼女!」

「千歳は可愛いな」

「那智はかっこいい!」



翌朝



「藍ちゃんおはよー!」

「おは、あれ?お二人さんご一緒?」

「……はよ、笠幡」

「随分眠そうね東雲くん」

「千歳がなかなか寝ないから俺まで寝られなかったんだよ」

「え!?」

「だって寝たら那智帰っちゃうと思ったら勿体なくて……」

「結局ソファーで寝落ちたお前を、部屋に入らないと言う約束を守る為に千尋さんのベッドまで運んだ俺を褒めて良いぞ」

「那智かっこいい!理想の彼氏!でも正直起きたらお兄ちゃんのベッドは微妙だった…」

「ねぇ待って?急展開過ぎて私ついて行けてない」

「え?一緒に行こうよ」

「そうじゃない!え?本当に東雲夫婦だったりしないよね?」

「まだ違うね」

「もう少しかかるな」



「あー…これは荒れるな、男女共に」



佐々木千歳と東雲那智が付き合っていたと言う話は男女共に大きな打撃を与え、その日からしばらく学校はお通夜ムードだった。




「千歳ちゃん、那智くん。ばぁばに早くひ孫見せてね」

「き、気が早いよおばあちゃん…」

「尽力しましょう」

「那智!!」

「ほほほ、仲良しさんだねぇ。楽しみ楽しみ。男の子なら尚のこといいね。ばぁば貢いじゃう」

「おばあちゃん、相変わらず面食いだね」

「おじいちゃんもイケメンでねぇ、そりゃもう激しい争奪戦の上にばぁばは勝ち残ったのよ」

「まぁ千歳がこれだけ可愛いんだからそうでしょうね」

「やだ那智ったら!」

「それでばぁばはいつ婚姻届に署名すれば良いの?」

「千尋さんがどうしても書くって血の涙を流してたので…」

「えー、もうばぁばで良くない?直ぐ書くわよ。印鑑印鑑と…」

「あぁもうまだ、もうちょっと待っておばあちゃん!」



登場人物

佐々木千歳(18)両親は既に居ない。おばあちゃんっ子

東雲那智(18)母は二年前に他界。幼馴染の千歳が可愛くてしょうがない。

佐々木千尋(27)シスコン。でも頑張ってるんだよ。

笠幡藍、千歳の親友。サバサバ系。

東雲勇気、那智の父。単身赴任中。

おばあちゃん、孫とイケメン大好き。千歳と那智の子供を心待ちにしてる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
千歳ちゃんと那智くんの飾らないけれど愛情が伝わるやり取りに最初から最後までニヤニヤが止まりませんでした。ミルクティーとおにぎりの話から始まり那智くんが自然に千歳ちゃんを気遣う姿とお兄さんとの電話での攻…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ