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8話 魔術講義(属性の確認)

フレデリック様と食事をすることになって、次の日の昼食時。忘れていたことを聞くことにした。


「フレデリック様、簡単な魔術の本はありませんか?」

「この館にはありませんね」

「そうですか……」


 私はがっかりして肩を落とす。隣でマリーベルも小さく落胆しているのがわかる。私はもそもそとベーコンを食べる。ちなみに今日のお昼はパンとベーコンと野菜スープである。あんまりにも私たちの空気が重かったからか、フレデリック様が気を遣って尋ねる。


「……簡単な、とはどのような内容ですか?姫様がいらっしゃるので、門の外に転移魔術陣を置いて、兄に頼めば本を送ってもらえるかもしれません」

「本当ですか!?では基礎の基礎をお願いします!」

「基礎……?まさか本当に魔術を学んでいないのですか!?」


 一瞬訝しげな表情を浮かべた後、目を見張るフレデリック様。そしてマリーベルに視線をやる。


「なぜお前が教えないんだ?」

「私も学ばせてもらえなかったのです」

「なぜだ?」

「私は下級貴族ソルジット家の庶子です。それなのに中級魔術師です。下級魔術師の父には腹立たしかったようで、娘ではなく使用人のような扱いでした」

「それは……」


 フレデリック様は言葉が続かなかったのか、痛ましげに私たちを見た。


 うーん、やっぱり魔術を学んでないって相当可哀想な感じなのね。あれだけツンツンしてたフレデリック様がこんな顔するくらいだもんなあ。


 そんな呑気なことを考えていたら、フレデリック様の水色の瞳が真剣な光を宿して私を見る。


「私が教えましょう。その…………食事のお礼に」

「本当ですか!?ありがとうございます!」


 フレデリック様の後半の言葉は小さかったけど、そんなことはどうでもいい。魔術が学べるということに興奮が隠せない。


 やった、やった、やったー!


 その場で飛び上がりたいくらいに嬉しかったけど、流石に食事中だったので我慢した。


「お前もついでに教えてやる」

「……ありがとうございます」



 4日に1度の休日以外、毎日午後から魔術講義をしてもらうことになった。早速今日から講義が始まった。フレデリック様の作業部屋は狭い上に、物が散乱していたため、食堂で教えてもらうことになった。


「まずは自分の属性から調べましょうか」

「あっ私、下級魔術師ですが全属性です」


 属性が木、火、土、金、水の5つあるということは知っている。大体王族は全属性、上級貴族は4〜全属性、中級貴族は3〜4属性、下級貴族は1〜2属性が多い。○○魔術師というのは魔力量に対して付けられる呼称のため、属性数は関係がない。


「マリーは?」

「わかりません」


 ん?今、フレデリック様、マリーって言った?マリーベルのことだよね?いつの間にそんなに仲良くなったの?いいな、いいな〜!


「フレデリック様!私もメルって呼んでほしいです」

「え?……いえそれは流石に無理です」

「でもフレデリック様は師匠でしょう?だったら弟子ことは呼び捨てで、敬語なしで普通じゃないですか!」

「……師匠?」


 フレデリック様が私の勢いについて行けずにポカンとしている。マリーベルがはぁーっと長めのため息をついて額を押さえていた。


「以前読んだ小説ですね……あの後私のことも師匠と呼ぼうとしてましたもんね……」

「マリーベルは人生の師匠よね」

「私は姫様を弟子だと思っておりませんので、師匠の座はフレデリック様にお譲りいたします」

「いや譲られても……」

「姫様がこうおっしゃっているんですから、いいのではないですか」

「……まあ楽だしいいか」


 マリーベルが投げやりな口調で言うと、フレデリック様も面倒になったのか諦めたようだ。少し緊張しながら、試すような目をしてゆっくりと口を開く。


「……メル」

「はいっ師匠!」


 やったー!私にも師匠ができた!これであの本のように「師匠」と絆を深めて、特別な力が発揮されて魔界から世界を救う……なんて本の読みすぎか。私に特別な力なんてないし、戦争はあっても魔界なんて存在しない。


 フレデリック様……じゃなくて師匠はホッとしたのか詰めていた息を吐いていた。


 ……何だろう。怒ると思ったのかな?


「じゃあメルはいいとして、マリーの属性を調べるか。これに魔力を注いでくれ」


 そう言って師匠は魔術陣が描かれた布を机の上に広げた。円の中に五芒星があり、その先にまた丸があってその中にそれぞれ記号が描かれている。

 マリーベルは真ん中に手を置いて魔力を注ぎ始めた。すると3つの記号が光った。


「ふむ……木、土、金の3属性のようだな」

「師匠!この属性はどういうことに関係するのですか」

「魔術陣は誰でもその魔術の発動に必要な魔力を注げば発動できるが、魔術陣を描くには属性が必要になる。属性にはそれぞれ司どるものがある。例えば【木】は、木そのものもあるが癒しという面も持つ。それはまあまた今度詳しく教えるが……つまり癒しの魔術陣を描こうと思えば【木】の属性が必要になる」


 ほうほう……てことは……


「じゃあ私は全属性なので、全ての魔術陣が描けるということですか?」

「……魔力量が少ないから、高度なものは無理だな」


 そうなんだ。ちょっとがっかり。全属性でも描ける魔術陣が少ないということかぁ……


「私も姫様も魔術ペンを持っていなのですが、どうしたらよろしいですか?」

「魔術ペン?」

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