63話 プレゼントの準備
私の願い虚しくドレスを飾っている煌びやかなものはパールとエメラルドだった。私の意識が飛びそうになっていたからか、着付けながらソニアさんが「もし成長して着られなくなったら、パールやエメラルドを取り外して他のドレスにつけたり、装飾品にアレンジできますよ」と提案してくれた。
こんな豪華なドレスは着たことがない。いつもよりも遥かにふんだんに使われた布のせいなのか宝石の重みなのか、精神的に気後れしてしまっているからか着用したらドレスはなんだか重かった。幅を詰めたり裾を調整したりとソニアさんがせっせと手を動かしている。
私はボーッとしながら周りを眺めていると、装飾品が並んでいるテーブルが目についた。その中の紺色のリボンに目が留まる。
あっあれマリーベルに似合いそう。
「姫様、着心地はいかがですか?」
ソニアさんに声をかけられ、紺色のリボンからソニアさんに視線を移す。
「問題ないわ」
重いのは私の気持ちの問題かもしれないので、黙っておく。流石にいい生地を使っているだけ肌触りはいいのだ。鏡の中の私を見つめる。ドレスの色は黄緑、そこにアクセントで緑と白が入っており綺麗にまとまっている。宰相にいただいた髪飾りともよく合う色味だ。
ソニアさんは「フレデリック様にもご確認いただきましょう」と師匠を呼びに行った。
……師匠が納得しないと作り直しになるだろうしなぁ。マリーベルにも「ちゃんと姫様に似合うか、華やかだけど気品があるか、周囲を感嘆させられるか確認してください」と念押しされてたからなぁ……
師匠を待っている間にさっき気になったリボンを近くで見ることにした。細い紺色のリボンが二重になっており、結び目のところに様々な大きさのパールとダイヤモンドがついていた。
おや……?もしかしてかなりお高い……?
そんなことを思っていたら、師匠を連れたソニアさんが戻ってきた。入室を許可し、入ってきた師匠にドレスのスカート部分を広げて見せながら首を傾げて尋ねる。
「師匠、どうですか?」
師匠はドレスが素晴らしすぎて驚いたのか目を大きく開いたまま固まっていた。
あれ、なんか変なのかな。ドレスが豪華すぎて似合わないのかな。せっかく作ってくれたのにどうしよう……
「あ、あの……フレデリック様、お気に召しませんか……?」
ソニアさんが恐る恐る師匠を窺った。ハッとする師匠。ようやく意識が戻ったようだ。心なしか頬が赤い気がする。固まってたのが恥ずかしかったのかな。
「よくやった、ソニア!」
師匠が珍しく興奮した様子でソニアさんを労った。師匠の合格点に達していたようなので、ドレスはこれになるようだ。
ドレスに負けてるような気がするけどいいのかな。まあお金出してくれた師匠がいいって言ってるならいいか。いつも本当にありがとうございます!
師匠が部屋から出て行って、私はソニアさんに手伝ってもらって着てきた服に着替える。その間に気になっていたリボンのことを聞くことにした。
「ソニアさん、あの紺色のリボンはおいくらかしら?」
「ああ、あれは小金貨1枚と大銀貨3枚ですね」
やっぱりお高かった。いや買えなくはないけど、多分マリーベルが受け取ってくれない気がする。
「あれに似たデザインで小銀貨5枚くらいのものはないかしら」
「そうですね……少々お待ちください」
そう言って部屋を出て行ったソニアさんはほどなくしてトレーを手に戻ってきた。トレーの上には似たデザインの紺色のリボンが5つ乗っていた。
宝石がついていないシンプルな太めのリボン、太めのリボンの縁に銀のラインが入っているリボン、少し細めのシンプルなリボン、二重になっているリボン、結び目に綺麗に削ったガラスがついているリボン。
多様なリボンを前に私はうーんと悩む。
太めのリボンは子供っぽくなるかな。そんなこともないのかな。でもマリーベルには細いリボンのが似合いそう。ガラスがついてるのは綺麗だけど、貴族のマリーベルがつけるなら本物の宝石のほうがいいよね。うーん……あっそうだ。
思いついたことがあったので、シンプルな少し細めのリボンを買うことにした。小銀貨3枚だった。ちょっと安かったかなと思ったけど、これなら普段も気兼ねなく使えそうだしいいだろうと納得させた。
大事なのは気持ちだよね。
それにそこまで品質の悪いものではなさそうだったので、よしとする。あとは私の腕次第だ。
「あとこれに合う糸と、こんな感じの……」
追加で必要なものも購入して、私は満足した。
今後の予定を頭で組み立ててほくそ笑む。喜んでくれるといいなぁ〜!




