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59話 和解

 ミレイナちゃんは小さく謝罪の言葉を口にした後、「身分をわきまえず、姫様に大変失礼な言動を取ってしまい、本当に申し訳ございません」としっかりと頭を下げたので、謝罪を受け入れた。そして何故このような態度を取ってしまったのか恥じるようにボソボソと口にした。


「テオと姫様が思っていた以上に仲が良くて、つい……浅はかなことをいたしました」


 後悔するように身を縮めているミレイナちゃん。


「テオくんと仲良く見えて……?」


 思わぬ言葉に私は目を丸くする。ミレイナちゃんは頬を赤らめ、小さく頷いた。今のミレイナちゃんは初対面の気の強そうな姿はどこへやら、ただの可愛い女の子だった。

 

 なんと……もしかして嫉妬?恋?恋なの?


「あ、あの……ミレイナちゃんはテオくんのことが好きなの?」


 私の言葉にミレイナちゃんはさらに顔を赤くして、小さく「はい……」と答えた。


 わ〜!そうなんだ!幼馴染カップル!いいね!

 あっでもテオくんの気持ちを知らない。テオくんに好きな人が別にいたら応援できないな。でも前にテオくんがミレイナちゃんのこと語ってた様子からだと嫌いではなさそう!


 恋なんて小説の中でしか見たことがないため、興奮してしまう。


 ふいに頭の中でドミニク様が浮かんだ。脳内ドミニク様が「私も姫様に恋をしているのにひどいです!」と叫んでいる。


 ……あ。いやなんかドミニク様のは普通の恋じゃなさそうなんだもん。なんか神聖視しすぎてて怖いんだもん。


 とりあえずこの場にいないドミニク様のことは置いておこう。


「あの……姫様、わたくしとテオがうまく行くように協力していただけませんか?」


 ミレイナちゃんは私を伺うように上目遣いを向けて来た。同性なのにドキッとしてしまった。


 うっ美少女の上目遣い、可愛い……いや、ときめいてる場合じゃなかった。


 私は落ち着くために一口お茶を飲んだ。そして背筋を伸ばして頑張ってキリッとした雰囲気を作る。


「ミレイナちゃん、私にできる範囲でなら協力するわ。でもテオくんにも感情があるのだから、私の権限で命令することはできない。それでもいいかしら?」


 これは言っておかなくては。ミレイナちゃんの「協力」が何を指しているのかわからない。私の「王族」としての権限でテオくんにミレイナちゃんとの結婚を命令させたいのなら、協力はできない。

 ミレイナちゃんは目を丸くしていた。やがて「ふふっ」と小さく笑った。その笑顔は今までのどこか作ったようなものではなく、力が抜けた自然なものに感じた。


「失礼いたしました。もちろん姫様がおっしゃる通り、テオに結婚を命じることをお願いしたいのではございませんわ。それでテオと結婚できたとしても嬉しくはありませんしね。愛は自分の手で勝ち取ってこそ!ですわ」


 わ〜……かっこいい。テオくんが言ってたのはこういうとこかぁ。


 私は思わず小さく拍手していた。


「あれ?じゃあ協力っていらないんじゃない?」

「そこはテオとの二人きりの時間を作ってくださるとか」

「下女として一緒の屋敷に住んでるミレイナちゃんの方が自分で作れそうだけど、わかった」


 私が頷くと、ミレイナちゃんは私の目をじっと見た。先程のような敵意や警戒するような色はなくなっていた。


「協力をお願いしたのは姫様がどのような方か知りたかったからですわ」

「えっ」


 私は何か試されていたのだろうか。警戒がなくなっているので、合格したのだと思いたい。

 

 内心焦っている私とは対照的に、ミレイナちゃんは優雅な仕草でお茶を飲むとふっと息をついた。

 

「私は正直、テオやおばさまの前でだけいい顔をしているのだと思っておりました。……お会いしてその疑いはほぼなくなりましたが、確かめたかったのです。テオよりわたくしを優先しなかった姫様はテオたちが言うように、明るく素直な優しい方なのでしょう」


 何故、それでミレイナちゃんが私を信用してくれたのかわからず、私は首を傾げた。そんな私を見てミレイナちゃんは苦笑した。


「……元平民の一代貴族のテオより、大店で多くの貴族との繋がりがあるわたくしを取り込む方が利があると思う貴族の方々がいらっしゃるのですわ」


 ええ〜……貴族としては正しいのかもしれないけど、友達を秤にかけるようなことを私はしたくないなぁ……


 私が苦い顔をしているのを見て、ミレイナちゃんはクスクスと笑っている。


「姫様は本当に素直な方ですね」

「……ミレイナちゃんは今日、私を見極めに来たんだね」

「そうですね。商談したかったのも本当ですが。テオはともかく、おばさまは先日の下働きの件や亡くなったおじさまの件もありますからね。自分の目で見たかったのです」


 ミレイナちゃんは困った顔で笑い、肩をすくめた。


「えっテオくんのお父さんってひどい人だったの?」

「いいえ。体が弱くて寝込んでいることが多かったですが、穏やかで優しい人でしたよ。ですが育ちが良さそうなのに、家もない、持ち物も少ない、自分のことを話したがらなかったと聞けば、子供心にも訳ありな人だと思いました」


 そ、そうなんだ……


 アメリーさんがちょっと心配になった。


「あの……じゃあミレイナちゃんの中で私は合格?」

「合格なんてわたくしが申し上げるのは烏滸がましいですが……少なくとも傍若無人で予算を食い潰しているという噂のような方ではないと思いました」


 ……それ王妃と殿下だから。


 そう思っても言える訳がないので、綺麗な作り笑いで流す。そして気になっていることを口にする。


「もう一つ違う噂が流れてるのは知ってる?」

「……それは……」


 ミレイナちゃんは目を伏せ、答えにくそうに困ったような悲しそうな顔で口ごもった。私は自分の望みを伝えるため、緊張しながら口を開く。


「知ってるのね。私その噂の通り、王族だけど最低限の教育しか受けてないの。だからさっきはああ言ったけど王族としての権力なんてないに等しい。貴族の伝手もほぼない。商人であるミレイナちゃんには何の得もないけど……私とお友達になってくれる?」


 ミレイナちゃんは信じられないという様子で私を凝視した。テオくんも驚いてたし、王族が平民に友達になって欲しいと言うのはあり得ないことなのだろう。でもそんなの関係ない。私は女の子の友達が欲しいのだ。


 私はミレイナちゃんがなんて答えるのかドキドキしながら視線を逸らさず見つめ返す。無言の時間が私には長く感じた。やがてミレイナちゃんが戸惑いながら私の様子を伺いつつ、そっと口を開いた。


「……わたくし、テオとは違い平民ですわ。それでもよろしいのですか?」


 ミレイナちゃんの言葉に私は笑顔で答える。


「もちろん!」


 ミレイナちゃんは呆然とした表情からゆっくり力の抜けた笑みを浮かべた。そして机の上に手を差し出した。


「わたくしでよろしければ、喜んで」


 やった!


 私が喜んでミレイナちゃんの手を握ろうとした所で、ミレイナちゃんが「あっ」と声を上げたため、びっくりして固まった。手が中途半端な形で止まる。


「恐れながら、一つ訂正させてください」


 私は首を傾げてミレイナちゃんの言葉を待った。


「友達とは得があるからなるのではありませんわ。わたくしは姫様が面白い方だと思い、仲良くなりたいと純粋に思ったからお友達になるのですわ」


 ミレイナちゃんの言葉が胸にじんわりと広がった。嬉しさから頬を紅潮させ、笑み崩れていることが自分でもわかる。私は満面の笑みで今度こそミレイナちゃんの手をしっかり握った。


「よろしくね!」


 やったぁ!初めての女の子の友達だ!


 そこではたと思う。


 ……なんかあっさり友達できた。あれ、テオくんを落とすという共通の目的の中であれこれあって仲良くなるっていうお話のパターンは?あれ?


 ………………


 ……嬉しいからまぁいっか!

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