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58話 効果てきめん

 話がまとまったようで、師匠がテオくんとアメリーさんへ許可を出し、二人はやっと庭に入れた。


「結局どうなったんですか?」


 途中から話に加わっていなかったので、どうなったのかわからず師匠を見上げる。


「上の頃、中の頃、下の頃に一回……月に三回来てもらうことになった。ミレイナも来れる日はなるべく来るそうだ」

「……そうですか」


 ……なぜ大店の娘直々に来るのだろう?普通部下に任せないの?それともお得意様とかはお店でも偉い人が担当するのかな?というか下女の仕事はいいのかな?


 疑問が次々に湧いてきた。だが王族でありながらも貴族の常識に疎い私には、平民の常識なんてもっとわからない。双方が納得しているのなら、よくわかっていない私が口を出さなくてもいいだろう。下女の仕事に関しては主であるテオくんが決めることだしね。


 準備のいいミレイナちゃんは契約書を用意していた。それの内容確認とサインを、という所で私は待ったをかけた。


「流石にずっと立ちっぱなしで対応するのもどうかと思います。館に入れるのがマズいのでしたら、せめて庭のテーブルセットでお話しましょう」

「……わかった」


 師匠は眉間に皺を寄せて嫌そうにしていたが、渋々ミレイナちゃんと従者を庭に入れるのは許してくれた。私と師匠、ミレイナちゃんが庭の端にある椅子に座り、マリーベルとアメリーさんにはお茶の準備をお願いする。テオくんはおどおどとしながら私と師匠の後ろに立っている。ミレイナちゃんの後ろには従者の老紳士が控えている。パールは少し離れた所で元気に庭を駆けていた。


 ミレイナちゃんが先程師匠とマリーベルと決めた内容を契約書に盛り込み、師匠が確認してサインした。契約書を受け取ったミレイナちゃんは満足げな笑みを浮かべ、従者に渡した。


「用は済んだし、もう帰れ」

「師匠、お茶もまだ出してないのにあんまりです」

「……」


 師匠はブスッとした顔でそっぽを向いた。そんな師匠の様子を気にも止めず、ミレイナちゃんは綺麗な笑顔を浮かべると胸の前で両手を合わせた。


「ちょうどよかったですわ。わたくし、姫様と女同士二人でお話したかったのです」

「え?」

「ダメだ」


 私が答える前に師匠に即却下された。先程の様子からあまり友好的ではない気はするが、ミレイナちゃんが何を話したいのか、気にはなる。


 それにもしかしたら話してみたら、仲良くなれるかもしれないし!


 そう。私はまだミレイナちゃんとお友達になる野望を諦めてはいないのだ。小説でよく見るやつだ。始めは仲の悪い二人が戦ったり、一緒に謎を解いたり、嫌々ながらも共通の目的のために協力して次第に信頼していくという王道のパターン。


 私もそのパターンでお願いします!あっでも戦えないので、それ以外で!


「師匠!私もミレイナちゃんとお話してみたいです」

「メルは最初のミレイナの態度を忘れたのか?二人になったら何をされるかわからないぞ」


 怒っているような表情だが、師匠の水色の瞳には心配の色が浮かんでいる。相変わらず師匠は優しい。そんな師匠を安心させるために私はにっこり笑った。


「大丈夫ですよ。師匠の結界がありますし、流石に二人きりにはなりませんから。マリーベルと従者さんにはその場にいてもらいますし」

「……まあマリーがいれば大丈夫か」


 師匠は考えを巡らせるように遠い目をしながら手を顎に当てて頷く。

 

 私よりマリーベルのが信用されてる!ちょっとショック!


 私がちょっと凹んでいる間にマリーベルとアメリーさんがお茶の準備を整えて戻ってきた。師匠は椅子から立ち上がると手短にマリーベルに話し、アメリーさんとテオくんを連れて館に戻っていった。ミレイナちゃんに「メルに何かしたら商会を潰す」と脅してから。

 流石にミレイナちゃんは顔色を変えて、しばらく俯いていた。その間にマリーベルがお茶を入れてくれた。最初の勢いはどこへやら。ミレイナちゃんは青い顔のまま俯き、微動だにしない。あんまりにも空気が重いため、私も何て声をかけたらいいのかわからず、とりあえずお茶を飲む。


 どうしようこの空気……私がいくら「師匠の言ったことは冗談だよ」って言っても、潰すと決めたら本当にやっちゃうんだろうな、師匠……


 ここまでミレイナちゃんが大人しくなったのだから、これ以上何か言ったりしてきたりすることはないだろう。多分ちゃんと自分の立場を思い出したんだと思う。ここで状況を見極めれないのなら、貴族の前に出るなんて危なっかしくてたまらない。

 きっと本来は貴族に対応できるきちんと教育された子だと思うけど、今日は幼馴染のテオくんがいたから気が緩んだのかな?


 空気の重さから思考の逃避に走っていたら、ポツリとミレイナちゃんが「申し訳ありませんでした……」と掠れた声で囁いた。

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