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55話 友達

「一緒に食べるなんて……」と恐縮していたアメリーさんを無理矢理席に着かせ、昼食を食べる。パールもテーブルの上で同じものを食べている。本日のメニューはレタスとトマトとチーズのサラダ、トマトソースのパスタ、食後にアップルパイがあるそうだ。サラダとパスタは早速収穫したトマトを使っているのだろう。うちのトマトは大きくて青臭さがなくて甘い。それがチーズの塩気と爽やかなバジルのソースと合わさって美味しい。パスタはニンニクとスパイスがきいたとろみのあるトマトソースとほどよい硬さの麺がしっかり絡んでいる。噛むたびに旨みが広がり、笑顔になる。この後にアップルパイも出てくるとは城にいた頃より食が充実している。

 

 ちなみに先日テオくんたちにもらったメロンは、甘いのに後味がすっきりとしていて上品な香りが余韻として残る大変美味しい一品でした。

 

 私はのんびり味わいながら食べていたが、テオくんとアメリーさんはそれどころではないらしく、おどおどしながら食事していた。特にテオくんは貴族として食事に招かれる可能性もあるので、テーブルマナーや美しく見える姿勢など、マリーベルや師匠から注意されていてちょっと可哀想だった。


 慣れないと大変だよね……頑張れ、テオくん。




 食事が終わると、後片付けをアメリーさんに任せ、早速魔術講義が始まった。テオくんは本を読んでいるため、知識面はなんとかなるだろうということで、実践を中心に学ぶことになった。

 つまり私、マリーベル、テオくんはみんな一緒に魔術陣を描く練習だ。

 マリーベルは上達し過ぎていて、今は上級魔術陣を描いている。私は一応全属性なので、木、火、土、金、水それぞれの初級魔術陣を描ける。そのため、まだ初級魔術陣を描いている。

 私とマリーベルは慣れているので、いつも通り本と紙を広げて勝手に描き始めているが、初めてのテオくんは師匠に説明されながら一生懸命描こうとしている。パールはテーブルの上で私が描く魔術陣を興味深げに見ている。飽きたらその内寝るだろう。

 テオくんの赤と黒が混ざった魔術ペンを見て、思わず「あっ」と声を漏らしてしまった。それに気づいた師匠とテオくんに視線を向けられる。


「どうした、メル?」

「あ、いえ……邪魔してごめんなさい。大したことじゃないんですけど、下級貴族って自分専用の魔術ペンを作るのも大変だって前に聞いていたので、テオくんは自分専用の魔術ペンを作れてよかったなって思って」

「これは支給していただいたんです」

「そうなの?」


 私が知らなかったので、師匠が説明してくれる。


「平民の魔力持ちは、一代貴族になるだろう。急に貴族になるため、それなりに支度金や物資が支給される。その中に屋敷や馬車、魔術ペン、紙、それほど品質はよくはないが魔石などが含まれている。だから自分専用の魔術ペンを買えない貧乏下級貴族から、平民の魔力持ちは特に妬まれるんだ」

「えっ」


 最後の情報は知らなかったようで、テオくんが驚いて師匠を見た。下級貴族からしたら、れっきとした貴族である自分たちを差し置いて、元平民が自分専用の魔術ペンを持っていることは業腹なのだろう。

 涙目のテオくんに師匠は冷たく「諦めろ」と慰めにならないことを言っている。


 ……まあ確かに諦めるしかないけどね。


 家同士の付き合いが優先される貴族間で友人を作るのはまず無理だろう。

 

 いや、テオくんは元平民の貴族なら友達できるかも。えっ私より友達いっぱいできる可能性あるんだ!


 私は一応王族ということで、元平民からすると畏れ多いみたいで話しかけてもすぐに逃げるように去ってしまうのだ。


 ……あ、悲しくなってきた。


 とりあえず唯一の友達を確保しておこう。私は両手でテオくんの魔術ペンを持っていない方の手をぎゅっと握る。


「テオくん!テオくんは私の友達だよね!?他の子と仲良くなっても、貴族初の友達は私ってこと、忘れないでね!」


 テオくんは赤い顔でおろおろして「えっ友達!?」と目を丸くしている。


「えっ友達じゃないの!?」

「そっそんな……僕元平民ですよ。いいんですか?」

「そんなの関係ないよ。私と友達になってくれるなら平民でも魔獣でもいい!」

「きゅう!」


 片手をテオくんの手から離し、拳を握って主張すると、「そうだ」と言うようにパールも後ろ足で立って、短い前足を天井に向かって上げた。テオくんの視線は私とパールとの間を行ったり来たりしていたが、最終的に笑って「僕でよければ」と言ってくれた。


 よかった!やっと初めての人間の友達だ〜!嬉しい!


「…………2人ともさっさと続きを描くように」


 師匠の低い声に私とテオくんはビクッとする。一緒にパールも跳び上がっていた。また師匠の機嫌が悪くなっている。私は急いでテオくんから手を離し、魔術陣を描くことを再開した。

 その日、師匠の機嫌はなかなか直らなかった。

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