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53話 ごめんなさい……

 テオくんとアメリーさんが落ち着いてから館の案内をすることにした。師匠は仕事をするということで作業部屋へ行った。

 案内の前に、アメリーさんには、マリーベルと同じ紺色のワンピースに白いエプロンのお仕着せに着替えてもらった。

 私は二人を案内しながら、師匠の私室と作業部屋、鍵のかかった部屋は立ち入り禁止と以前師匠に言われたことを伝える。

 館内の案内を終えると、庭も案内した。パールも一緒に連れて行き、土に触れさせてあげる。パールは嬉々として土を掘り、体だけ土に埋もれ、土から顔だけ出ている状態だ。何度見ても奇妙だなと何とも言えない気持ちになるけど、パールはまるでお湯に浸かっているように気持ちよさそうな顔をしている。

 ちなみにパールの首には認識阻害の魔術陣が刻まれた魔石がリボンで括りつけられている。監視からは犬や猫を飼っているように見えるだろうと師匠が言っていた。


 ついでに人参とトマトの収穫も手伝ってもらった。そろそろ昼食の準備の時間になったので、名残惜しそうなパールをタオルで包んで館に戻る。マリーベルとアメリーさんは昼食の準備のために、調理場へ、私とテオくんはパールを洗うために、浴場へ行った。お料理できなかったけど、4人でパールを洗う必要はないので、今回は諦めた。


 パールを洗うためにお湯を出そうと、水の魔道具に手を近づけてハッとする。


「そういえばテオくん、魔力を注げないんだよね?」

「あ……はい」


 テオくんは気まずそうに頷いた。


「あれ?属性の確認とかはどうしたの?」

「水晶玉のような魔道具があって、それに手を当てると無理矢理魔力が引き出されたので、それで調べてもらえました」


 へぇ〜そんなのあるんだ。


「自分の屋敷ではどうしてるの?」

「えっと使用人用の方を利用してます……」

「えっ」


 それは不便だろう。使用人用ということは水は井戸から汲むのだろうし、屋敷の端にあることが多い。


「これ水の魔道具なんだけど、魔力注ぐ練習してみたら?」


 テオくんは「はい」と言いながら緊張した面持ちで水の魔道具に両手を伸ばした。ちなみにこの水の魔道具は他の場所にある水の魔道具と違い、水の魔石の他に火の魔石もついている。両方の魔石に魔力を注ぐとお湯が出る。温度は水と火の魔石の間にあるレバーで調整できる。

 魔石に触りながら、テオくんは私を振り返る。


「あの、何かコツとかありますか?」


 コツ……コツかぁ。最初はどうやってたんだっけ?小さい時から魔道具は使ってたから覚えてないなぁ……


「魔力引き出された時の感覚はわかる?」

「いえ、あまり……一瞬だったので……」

「そっか。うーん……前に魔力が暴走した時、テオくん体が熱くなったって言ってたじゃない?その感覚思い出したら、魔力というものを掴めるかも」

「魔力が暴走した時……」


 むむっと眉間に皺を寄せ、テオくんの顔があの時を思い出そうと真剣だ。私には応援するしかできない。


 頑張れテオくん!一回感覚掴めたら、魔道具に魔力を注ぐのは簡単だと思うよ!


 テオくんの集中を切らさないよう心の中で応援しながら、テオくんをじっと見つめる。体が土まみれのパールも声を出さずに緊張した様子でテオくんを見ていた。テオくんを見ていると、テオくんの姿が揺らいで見えた。


 ……ん?目が疲れてる?……違う!魔力が漏れ始めてるんだ!このままだとまた前みたいに暴走する!!


「テオくん!一旦やめ……」


 私の言葉は最後まで言えなかった。水の魔道具についていた魔石が、いきなり大量の魔力を注がれて耐えきれなかったようで、魔石が破裂した。私は咄嗟に、左手でテオくんを引っ張り、右手で首に下げている結界の魔石を握って魔力を注いだ。目をつむっていたが結界が間に合ったようで、結界に魔石の欠片がバシバシと当たって床に落ちていく音が聞こえた。

 音が止んで静かになってからそろ〜っと目を開けると、飛び散った魔石の欠片と魔石の破裂に耐えれなかった魔道具の残骸が浴場に広がっていた。


 ……うわ〜……大惨事……


「パールもテオくんも怪我はない?」

「きゅ!」

「はっはい……どうしよう……」

「どうしようねぇ……」

 

 テオくんが青い顔で呟いた。私もどうしよう……と現実逃避したい気分に駆られていたら、浴場の扉が勢いよく開いた。


「何があった!?」


 飛び込んできたのは師匠だった。師匠の作業部屋は浴場に近いため、魔石が破裂した音が聞こえたのだろう。師匠は扉を開けるなり、目に入ってきた室内の惨状に固まった。


「ごめんなさい、師匠!私が余計なこと言ったせいで魔道具壊しちゃいました!弁償します」


 私が頭を下げると、テオくんが慌てて「違うんです!」と叫んだ。


「僕が、魔力のコントロールができないのに、魔道具に魔力を注いだからこうなったんです!申し訳ありません!時間がかかるかもしれませんが、僕が弁償します!」

「え、でも私が魔力注いでみたらって言ったんだし、半分ずつにしようか?」

「それは助かりますけど、いいんですか?」

「もちろ……」

「ちょっと待った!弁償どうのこうの言う前に、どうしてこうなったかちゃんと説明しろ」


 詳しい話が聞きたい師匠に睨まれた。師匠に説明しようとした所で廊下からバタバタと騒がしい音がした。


「姫様、大丈夫ですか!?」


 マリーベルとアメリーさんもやって来てしまった。どうやら調理場の真上ではないが、唯ならぬ音が調理場まで聞こえたらしい。料理をしていたら、突然上の方から物が壊れるような音がしたため、料理を中断して慌てて駆けつけてくれたとのことだった。


 ……も、申し訳ない……


 師匠、マリーベル、アメリーさんにどうしてこんなことになってしまったのか説明していく内に、師匠とマリーベルは険しい表情に、アメリーさんは顔色を失っていった。

 アメリーさんは平謝りし、テオくんもそれに続き、師匠は「テオが暴走したらどうするんだ!危ないだろう!」と怒り、マリーベルは「姫様に何かあったらどうするんですか!」と泣き怒るというなんとも混沌とした場になった。

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