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49話 テオくんたちの訪問

 加工に使う魔石や研磨の魔道具、保護メガネはそのまま持っていていいと師匠が言ってくれたので、有り難くもらうことにした。マリーベルが加工の練習をしないので、その分の魔石も持って行っていいと言われたけどそれは遠慮しておいた。


 ただでさえ数十個もありそうなのにそんなにいらないよ……どれだけ加工させる気なの?


 そう思ったけど、師匠の嬉しそうな顔を見たら、もっと練習して上手にできたものをプレゼントしたいとも思ったので、マイペースに練習することにした。



 

 そして夏の2の月、5の日。テオくんとアメリーさんが館にやってくる日になった。朝の鐘が鳴ってしばらくすると、通信の魔道具にドミニク様から連絡があった。その連絡を受け、私たち3人と1匹は門へ向かう。

 パールは一緒に来なくても大丈夫なんだけど、1人……というか1匹になると寂しがるので連れていく。私の右肩に乗っているので、ずっしりと重い。


 パールが成長したら、私抱っこできないかも……


 ちょっと心配になりながら門へ行き、結界の許可を出すと師匠が門の外で布の転移の魔術陣を広げて置いた。そしてこちらの準備が整ったことをドミニク様に連絡した。すると転移の魔術陣が光り、テオくんとアメリーさんの姿が現れた。


「姫様、フレデリック様、マリーベル様、おはようございます。本日はお時間をいただき、ありがとうございます」


 テオくんが緊張しながら挨拶をし、アメリーさんは大きな包みを持ってテオくんの少し後ろで頭を下げている。テオくんの服は以前見た、平民の動きやすそうな服ではなく、貴族が着る上質なシャツに刺繍が入ったベスト、ズボンにブーツというカッチリした服装になっており、貴族になったんだなとしみじみと思った。アメリーさんも平民のお金持ちが着そうなオリーブ色の、胸元とスカートの裾にレースがあるシンプルなドレスを着ていた。


 挨拶もそこそこにすぐに館の応接室に案内する。道中でアメリーさんが私の肩にいるパールに助けてくれたお礼を言っていると、テオくんもそれに続いた。パールは嬉しそうに「きゅう!」と鳴いている。微笑ましいやり取りにほっこりする。

 応接室に入ると、窓際の近くの床に置いてあるクッションにパールが走って行った。クッションの上で小さく丸まって日向ぼっこするパールを微笑ましく見ている間に、マリーベルが手早くお茶とお菓子を用意して部屋の隅で待機する。それにテオくんとアメリーさんがものすごく恐縮する。


 ……まあ気持ちはわかるけどね。


 テオくんはともかく、アメリーさんにとってはマリーベルの方が身分が上になる。テオくんも同じ下級貴族とはいえ、つい先日まで平民だったのだ。マリーベルの母が平民だと知らない二人には、身分が上の人に給仕されるというのは、居心地が悪いだろう。


「……マリーベルも座ったら?」

「いいえ。私は侍女ですからお気になさらず」


 まだ二人はマリーベルを気にしていたけど、全く気にしない師匠がテオくんに質問した。


「それで、属性は火だけだったか?」

「いえ、水もありました。火の方が強いそうですが」

「そうだろうな。無意識下で炎が暴走していたからな。下級魔術師か?」

「はい。ロンヴィット男爵位を賜りました」


 次から次へと質問する師匠に必死に答えるテオくん。


「新しい家はもう慣れた?」


 私が聞くと、テオくんもアメリーさんも眉を下げた。


「貴族の方が住むには小さいらしいですが、今までの倍以上の広さにまだ慣れません……」

「使用人がいることにも慣れないですし……」


 いきなり平民から貴族になったらそうだよね。「その内慣れるよ」と励ます。


「先日は助けていただいて本当にありがとうございました。お礼をと思ったのですが何がいいかわからず、ドミニク様に月に1回しか買い物をされないと聞いたため、野菜や果物を持って来ました」


 テオくんがそう言うと、アメリーさんが持っていた大きな包み広げた。中にはレタス、なす、きゅうり、トマト、セロリ、りんご、メロンが入っていた。

 これにはマリーベルが一番目を輝かせていた。お礼を言って受け取る。すぐにマリーベルがそれらを持って部屋から出て行った。食糧庫に持って行ったのだろう。

 レタスやきゅうりは先月の下の頃に収穫していたが、そろそろなくなりそうだったのでありがたい。私個人としてはりんごとメロンを食べるのが非常に楽しみだ。


「本当は宝石とか高価なものを渡すと聞きましたが……支度金をもらっても税収があるわけじゃないから無理をしない方がいいと宰相様に言われて……」


 宰相ありがとう!宝石もらってもつけてく場所ほとんどないけど、野菜や果物だったらみんなで美味しくいただけるよ!


 しょんぼりしているテオくんに「宰相の言う通りだよ」と声をかける。


「新年祭もあるし、そっちに備えた方がいいよ」

「えっ新年祭って何か特別な準備が必要なんですか?」

「説明なかった?」

「冬の1の月、1の日の夕方の鐘から新年を祝う宴が開かれるから必ず参加するようにと言われました」

「まあその通りなんだけど……」


 私はテオくんに10歳以上の国中の貴族がほぼ全て集まるということ、そのためみんな財力やセンスを競うように衣装や装飾品にものすごい力を入れていること、そこで見窄らしい格好をしていると財力やセンス、子供に至っては目をかけられてないことを晒すようなもので、容赦なくこき下ろされることを説明した。

 まあこれは私も最近まで知らなかった。ドレスを作る時に師匠に言われて、「だから私の格好をみんな嗤っていたのか」と納得してしまった。王族から見捨てられていると公表しているようなものだ。だから下級貴族も私に対して尊大なんだろう。

 私の説明にテオくんとアメリーさんの顔色が悪くなってしまった。特にテオくんは真っ青だ。


「ど、どうしよう……僕……貴族街の近くの仕立て屋で普段着を仕立ててもらうのも数を減らしてもらったのに……」


 ……貴族街の近くの仕立て屋ってあれだよね?高い割に仕事がいまいちってとこだよね?


「……ソニアのところで仕立てたらどうだ?」

「ソニアさん?」


 見かねた師匠がソニアさんのお店を紹介した。テオくんとアメリーさんはソニアさんのお店を知らないようだ。今まで古着ばかりで仕立ててもらうことなんてなかったから、その通りを歩いていても素通りしていたようだ。


「ありがとうございます。フレデリック様に教えていただいたお店で仕立てます」


 テオくんがホッとしたようで笑顔を浮かべる。不安が消えたようでよかった。


「……テオは仕事はどうするんだ?」

「……まだ決めていません」


 テオくんは土地を与えられていないため、どうしても何か仕事をしなくてはならない。貴族は大体城や役場で働くか、魔力を使った仕事をする。だが下級魔術師のため大量の魔力を使う仕事はできないだろう。


「……機織り職人はどうだ?」

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