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45話 初乗馬

 ラピソルのご飯はまた聞いてみようと考えている間に町役場に着いた。町役場で師匠が平民の魔力持ちに関する書類にサインをしたり、軽く事情を説明したりした。ちなみにラピソルは他の職員さんを驚かせてしまうので、マリーベルのカゴバックの中で大人しくしてもらっている。

 テオくんとアメリーさんはずっと肩身が狭そうだ。


 ……まあしょうがないか。


 今私たちを担当してくれている方はドミニク様ではなく下級貴族の子息だ。この方の師匠に対する態度とテオくんたちに対する態度が全然違う。師匠には謙っているのに、テオくんたちへの対応が簡単に言うと以前のドミニク様のようなのだ。マリーベルはともかく師匠も平民に対して尊大な所があるけど、平民の治療をしていたことから、横暴な人ではないと安心していたのだろう。アメリーさんはそこまで萎縮していなかった。ちなみにどちらかと言うと私とマリーベルへの態度もテオくんたちに近かった。


 ……テオくんとアメリーさんにぎょっとしたあとに、憐れむような視線を向けられて、ちょっと心が痛かった……

 そんな目で見ないでぇ!私、今それなりに幸せだから!


 ということもあったが、師匠が悪の覇者か?と言うくらい、聞いたものの震えが止まらない低い恐ろしい声でその下級貴族に注意したため、私への態度は表面上は改善した。

 ……目がすごい憎らしげだけど。

 

 ドミニク様が対応してくれたらよかったんだけど、ドミニク様はアーシェイヴィルの後処理や町の被害状況の報告を受けたり、城へ報告したりと多忙を極めていた。それでも私たちが館へ帰る時に同行するために、合間を縫って馬を準備してくれたり、食材やテーブルセットを転移の魔術陣で送ってもらうために1か所に集めてくれていたりしている。

 今回は大きな荷物があることと、町役場にこのちょっと失礼な下級貴族がいたから転移の魔術陣で送ってもらえることになったのだ。


 そう思ったらその人のお陰で荷物運ばなくてもよくなるから、ちょっと感謝だ。どんな人でも役に立つんだなぁ。そう思うと私も何かの役に立てているのかもしれない。師匠とマリーベルの役に立ててたらいいなぁ……



 

 私たちが町役場ですることは終わったので、テオくんとアメリーさんを下級貴族に預けて帰ることにした。不安そうなテオくんとアメリーさんにまた会おうと告げ、下級貴族にくれぐれもよろしくと言ったら、鼻で笑われた。本当失礼だなぁとのんびり思っていたら師匠に絶対零度の瞳で睨まれていた。すくみ上がった下級貴族はちゃんと対応すると約束してくれたので、よかった。


 町役場を出て、馬を準備してくれていたドミニク様の元へ向かう。馬は二頭しかおらず、馬車はなかった。


 あれ?私とマリーベルは馬に乗れないんだけど……


「姫様!馬の準備は万全です!さぁどうぞ!」


 嬉しそうにドミニク様が手を差し出した。


 相乗りってことかぁ。ドミニク様と一緒はちょっと心配だけど、馬に乗れるのは嬉しいなぁ!


 私の中のドミニク様の印象は詰めが甘い人だ。貴族なんて後継ぎ問題や派閥争い、領地争いなんかで命を狙われることは珍しくない。上級貴族になればその危険は増す。それなのに簡易結界しか張っていなかったなんてちょっと甘いなと思う。

 そんな失礼なことを考えていたら、師匠に腕を掴まれた。


「いえ、メルは私と共に乗ります。ドミニク様はマリーをお願いします」

「何故だ!」

「今日は監視の視線を感じます。あなたが姫様と仲良く馬に乗っていたら、あちらに潜入していることがバレるでしょう」

「うっ」


 師匠の正論に反論できないドミニク様は大人しくマリーベルを乗せることにした。ドミニク様は不本意そうだし、マリーベルも嫌そうに眉間に皺を寄せている。


 だ、大丈夫かな?


「師匠、馬車の方がいいんじゃないですか?」


 チラッとドミニク様とマリーベルを見てから師匠が首を横に振る。


「いや、いざという時のために馬に乗れた方がいい」

「……襲われた時前提なのが悲しい」

「それに貴族は馬に乗れるのが普通だ」


 そうだった。馬に乗れない貴族は私やマリーベルのように蔑ろにされている人か、貧乏で教師を雇えない人くらいだろう。いざという時とか怖いことは考えないようにして、馬には乗ってみたかったので、ドミニク様とマリーベルには我慢してもらおう。マリーベルも馬に乗れるようになる方がいいだろうし。


 先に馬に乗った師匠に手伝ってもらいながら何とか私も馬に乗った。乗馬用の服は買ってなかったためドレスでの騎乗だ。そのため、前に乗って手綱を持っている師匠の腰あたりの服を握りしめて横座りで馬に乗っている。正直落ちないか心配だ。


「……落ちたらどうしよう」

「結界があるから大丈夫だがしっかり捕まってろ」


 しっかりと言われたので抱きつくようにしがみついたら、師匠の体がビクッと大きく震えた。


「……いや、メル……さっきのでよかったんだが」


 体を少しずらし、師匠を斜め後ろから仰ぎ見ると、片手で顔を覆って項垂れた師匠から細い声が漏れた。


 えっなんか師匠を呆れさせた!?


 急いで謝りながら体勢を戻す。


「……何なんだ、これは」

「?」

 

 師匠が胸の辺りに手を置いて、そう小さく呟いた。私は意味が分からず首を傾げる。

 師匠はゆるく首を左右に振ってから、ドミニク様とマリーベルの方を見た。ドミニク様とマリーベルも準備が整っていることを確認してから「行くぞ」と師匠が言い、馬の腹を足で軽く叩いて走り出した。

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