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37話 マリーベルのドレス

 マリーベルは何故か困惑しているが、ドレスはマリーベルによく似合っていた。スカートが広がりすぎないスレンダーラインで、襟ぐりは広く開いているけど品がある。袖は腕の形が分かる程ピッタリしているが手首の少し上から広がっており、ラッパのような形をしていて下からレースが覗いている。胸部分には銀色の刺繍が施してある。スカートには切れ目があり、そこからレースが見えている。どうやらレースのスカートの上に上半身と同じ布を上に重ねているようだ。上の布にも裾やお腹の辺りに銀色の刺繍がある。


「マリーベル、素敵!とっても綺麗よ!」

「あ、ありがとうございます……ただ私がお願いしたドレスとかなり違うのですが……」

「えっそうなの?」


 それで困惑していたのか。


 マリーベルの言葉にソニアさんが慌てて謝罪する。


「申し訳ございません。息子がどうしてもマリーベル様のドレスを作りたいと申しまして……こちらにマリーベル様がご注文されたドレスもあります」


 そう言ってソニアさんが壁際に行き、ハンガーで吊るされてドレスがたくさん並んでいる中から、一つのドレスを取り出した。マリーベルが今着ているドレスと同じ紺色、同じ形だが豪華さが全然違う。スカートが重なっていないし、刺繍が胸元と裾にあるくらいだ。もちろんこのドレスはこのドレスで素敵だが、どうしてもマリーベルが着ているドレスを見た後だと物足りない。


「……マリーベル、そのドレスにしたら?すごく似合ってるわよ」

「……できればそうしたいですが、お支払いが難しいです」

「それならあの硬貨でお支払いしたらいいじゃない」


 今こそ宰相から貰った硬貨の出番だ、と思い意気揚々と提案するが、マリーベルは渋い顔だ。


「あれは姫様のお金ですよ」

「でも」


 なんとか納得してもらおうと言葉を続けようとしたが、扉をノックされる音に遮られた。


「メル、マリー。何かあったか?」


 扉の外から師匠の声がした。少し遅かったから心配になったのだろう。丁度いい。師匠にも見てもらってこっちの味方になってもらおう。


「大丈夫ですよー見ていただきたいので中に入ってくださーい」

「えっ」


 扉の向こうまで聞こえるように大きな声で言うと、マリーベルが戸惑いの声を上げるが、お構いなしに扉が開く。師匠が部屋の中に入って来る。その後ろにはヴァレリーさんがいて、すぐにマリーベルに目を止めると頬を紅潮させて目を輝かせた。


「マリーベル様とてもとてもお綺麗です!いえ、元からお美しいですが、より美しさが増しました!女神が霞む程の神々しさです!」


 ヴァレリーさんの賛辞に思わず「いや、女神見たことあるわけ?」とツッコミそうだったけど、飲み込んだ私偉い。

 女神より美しいかは知らないが、確かにこのドレスはマリーベルの美しさをよく引き出していると私も思う。

 仏頂面でマリーベルとヴァレリーさんを見ている師匠にも聞いてみる。


「師匠、どうですか?マリーベル、綺麗ですよね」

「ゔ――――ん………………そう、だな……?」


 師匠からなんだか変な声が聞こえたけど、マリーベルがヴァレリーさんの賛辞攻撃にあっている間に支払いの問題を解決しておこう。


「あのドレスはマリーベルが頼んだものではなく、ヴァレリーさんが作ったものだそうです。マリーベルが頼んでいたドレスより、こちらの方が素敵なのでこちらを買いたいのですが、以前宰相からいただいたお金でお支払いしようとしてもマリーベルが頷かないのです。マリーベルを一緒に説得していただけませんか?」


 私が経緯を説明すると、師匠は右手を顎に当てて考える。


「……それなら俺が払おう。日用品ならともかく、ドレスや宝飾品を購入していたらすぐにあの硬貨もなくなるだろう」


 えっドレスとか宝石ってどれだけ高いの……!?私のドレス買ってる場合じゃない!?


 物の値段をあまり知らない私には、あれだけ硬貨があれば、ドレスは余裕で買えると思っていた。甘かった認識に顔を青くさせていると、難しい顔をしていた師匠が表情を和らげる。


「メルのドレスも俺が買うから安心しろ」


 微笑んで頭を撫でてくれるが私は安心できない。


 ようやく師匠に借金しなくてもいいと思っていたのに……!


 悪いと思いつつ、将来放り出される可能性もゼロではない私は、渋々師匠の好意に甘えることにした。


 いつか絶対何らかの形で返すから!!首洗って待っててよね!

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