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3話 小さな問題発生

フレデリック様は、私とマリーベルの私室として使っていい部屋、調理場、浴場、物置、フレデリック様の私室や作業場など必要最低限の場所だけを案内して、さっさと作業部屋に行ってしまった。

 私はマリーベルが私室を整えてくれるのを、食堂で1人お茶を飲みながらゆっくり待っていた。

 ベッドなどの大きな家具は、フレデリック様の前に結界を張っていた方たちのものが残っていたので、それを使わせてもらうことにした。マリーベルは王族が使うには粗末だと言ってたけど。元々私はお母様やお兄様のように豪遊が許されない身だったので、ぱっと見綺麗そうだったのでかまわない。


 これからどうしようかしら?


 城にいる頃も特にやることはなかったため、近くの庭を散歩するか図書室で本を借りて読んでいるか刺繍するかくらいしかなかった。この館にも図書室があればいいなとか、城ではできなかったことができたらいいなとぼんやり今後のことを考えていたらマリーベルが戻ってきた。


「お待たせいたしました。お部屋に移動されますか?」

「……マリーベルのお部屋は整えたの?」

「私は後で済ませます」

「先に整えてきて。それでその後お料理を教えて」


 私のお願いにマリーベルがぎょっとする。


「いけません!」

「でも私は今まで通り暇だけど、マリーベルは仕事が増えるでしょ?手伝えることはしたいわ。お料理なんて城ではできないから、せっかくだからやってみたいし」


 城では料理人や下働きの者がいたから、マリーベルは私の身の回りの世話がお仕事だったけど、この館にはそういった使用人がいない。全てマリーベルが行わなければならない。マリーベルは庶子だったため、私に仕えるまでは実家で下働きをしていたため、仕事が増えてもかまわないと言っていたけど、やっぱり1人だと大変だと思う。

 それに私は暇なのだ。小説を読んでから料理をやってみたかった。せっかくならこの機会に存分にやりたいことをやりたい。


「大丈夫!以前町中の食事処から宮廷料理人になって王子に見初められて結婚するお話を読んだから!想像ならばっちり!」

「お話と現実は別物です」


 マリーベルに冷たくあしらわれた。このままだと許可が下りなさそうだ。あんまり言いたくないけど、真面目な話もしておこう。

 私は表情を改める。マリーベルも私の雰囲気が変わったことに気づいて姿勢を正す。


「マリーベル。私はこれからどうなるかわからないわ。ずっとこの館で生きていくかもしれないし、とんでもない人に嫁がされるかもしれない。ありもしない罪で国外追放されたり、処刑されるかもしれない。生きていくために少しでもできることを増やしたいの」


 さすがに王族という血統因子を持つ私を国外追放するとは思えないけど、読んだ小説の中にそんな話もあったので、一応選択肢に入れてみた。

 鎮痛な表情を浮かべて、少し思考していたマリーベルがため息をついた。


「仕方ないですね。確かにできることが多い方が選択肢は増えますものね」



 マリーベルが自室を整えてから、私たちは調理場に移動した。


「それで何をつくるの?」


 ワクワクしながらマリーベルを見上げる。

 元々そんなに豪奢なドレスではなかったけど、さらに簡素な汚れても大丈夫なドレスに着替え済みだ。完璧である。


「そうですね……スープと…………」


 調理場を見回しながら答えていたマリーベルが、不自然に沈黙する。どうしたのかと、マリーベルの視線の先を辿るとそう広くはない調理場の隅に、レンガが積まれた台があり、さらにその上に別のレンガで作られた魔道具があった。側面に拳大の魔石がついていて、魔術陣が彫られている。レンガを上から覗き込むと側面と同じような魔石が嵌っている。同じ魔道具が横にもう1つ並んでいる。


「これって火の魔道具?」


 私は火の魔道具を見たことがないが、調理場にある魔道具ということは多分そうなのだろう。水の魔道具は流石に私も使うので、知っている。火の魔道具であろう魔道具が置かれているレンガの台から大人3人分くらい離れた場所に、細長い管とその上に色は違うが同じような大きさの魔石に魔術陣が彫られたものがある。これが水の魔道具だ。魔石に掘り込まれた魔術陣に、少量の魔力を注げば水が出てくる。


 ……それにしてもいつもの水の魔道具の魔術陣より複雑な魔術陣ね。


「火の魔道具ですが……」といいながらマリーベルはそれに近づいて行った。そして魔術陣に手を当て、魔力を注ぐ。火がつくのを待っていたが、なかなかつかない。どうしたんだろうと思っていたら、マリーベルが苦い顔をして振り向く。

 

「ここにある魔道具は魔力が大量に必要なため、私たちには使えません」

「え!?」


 普通、生活に使う魔道具というものは少量の魔力で動くようになっている。そうじゃないと日常で使えない。

 それなのに中級魔術師であるマリーベルが使えないと言う。下級魔術師である私なんて言わずもがなだ。


 え。もしかして館の中の魔道具って全部使えない?料理もできないし水も使えないということは生活ができないんだけど……

 ……フレデリック様って上級魔術師数人で張る国の結界と、この館の結界も張ってるんだよね?どれだけ魔力おばけ?

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